過去との対話と長門が向かうべき方向

第30話 アンタはまた人の世界を壊すの?

「優子とは上手くいっているかい」


「そうだな。まあそれなりには」


放課後の教室。

俺は羽田が話をしたいという事でみんなには帰ってもらい。

そして羽田と2人きりで話をしていた。

羽田は柔和な顔と共に。

申し訳無さそうな顔をしていた。


「色々とすまない。君には」


「お前が謝ってもどうしようも無いだろ。つーかお前が謝るな」


「.....まあそうだね。謝ってもどうしようも無い事だけどね。.....ただ単に君という存在を失うのをカバーしたり恐れているだけかもな」


「お前は変わらずだな」


「そうだな。俺は優しすぎるんだろうな」


「.....そうだとは思う。お前は極端に恐れているな。全てを」


羽田は苦笑する。

仲間同士の絆とかそういうのを失うのが怖い。

コイツも俺の様な人格。

それは分かっているけどな。

似た者同士だな俺達は、って思う。


「もしかして何だが.....これだけ関わり合いが凄い君は昔はリア充だったんじゃないのかい?ただの思い過ごしかもしれないけど」


「.....それはまあ.....想像に任せるが。お前の様な上位のリア充とかじゃねーぞ。明らかにお前はその人格でそのクラスに居るのは異常だわ」


「まあそうだな。でも周りが俺を押し上げていった感じではあるぞ。こういう優しい性格だから。でも中身は成長してないのかもな本当に」


「お前が?嘘だろ」


「いや。俺も周りが居なかったら非リアだぞきっと」


羽田は苦笑しながら俺を見てきて。

外の野球部を見ながら、さて、と言った。

それから、俺は帰る。今日は部活が無いから、と言う。

そして俺に改めて向いてきた。

君の事が心配だったけど。今の所は大丈夫そうだな、と笑みを浮かべる。


「それは見た目だけだけどな。中身は無事じゃない」


「.....雪子が怖かったんだな」


「お前な。当たり前だろ。軟禁だぞふざけんな」


「ああ。分かってる。でも一応、君の上部だけでも大丈夫だと思ってな」


「.....ハァ.....」


俺は盛大に溜息を吐きながらそのまま羽田を見送る。

そうして俺も、とっとと、と思いながら帰宅していると。

目の前に鈴木が立っている事に気が付いた。


鈴木は俺を見て笑顔を浮かべる。

そして思いっきり手を振ってきた.....いや。

先帰れって言ったんだが。


「お前さん。何故に居る。先に帰れってあれ程」


「だって先輩とイチャイチャしたかったんですもん」


「ふざけんな」


「いや?ふざけてないですよ。それに帰宅する場所は同じでしょう」


「まあそうだけどな。でも恥ずかしいんだよお前と帰るの」


あらあら?そう言ってくれるのは有難いですねぇ、とニヤニヤしながら言ってくる鈴木さん。

このクソッタレ女。


俺は額に手を添えながら見る。

すると、御免なさい。揶揄いすぎました、と笑みを浮かべた。

そして真剣な顔になる。

ねえ先輩、と聞いてくる。


「何だ」


「先輩の過去。先輩ってリア充だったんですか?」


「.....何でお前は羽田と同じ様な事を言ってくるんだ」


「え?羽田先輩も?」


「そうだな。全く同じ事を聞いていた。何故そう思う」


「中島先輩に全く動揺しない点です。そしてリア充の扱いを慣れ過ぎです」


そんな馬鹿な。

俺は苦笑いを浮かべて顔を引き攣らせる。

そんな訳あるか。

俺は一気に否定しながら鈴木をジト目で見る。

それから、俺は恐れているぞ。中島の事。怖いぞアイツ、と言う。


「にしてはリア充の女帝にそんなに動揺しないですよね。先輩」


「いや。動揺しているからな?何を言っているんだお前は」


「そうですか?」


「お前さん。俺を何だと思ってるの?人間じゃない怪物と捉えてない?俺だって恐れる物体はあるんだぞ」


「あらぁ。中島先輩を物体扱いですか」


「物体だろ現に」


俺は苦笑いを浮かべながら鈴木を見る。

鈴木はクスクスと笑いながら、そうかもですね。怒りの装置みたいな、と言う。

そして笑顔を浮かべた。


元気を取り戻した様だなコイツも。

俺は考えながら空を見る。

リア充、か。


『アンタの事嫌いなんだけどマジに』


「.....懐かしいもんだな」


「え?何がですか?」


「何でもない。嫌な事をちょっと思い出した」


そうですか?、と言ってくる鈴木。

俺は、そうだ。人間だしな、と答えた。

それから歩き出す俺達。

すると鈴木が俺の手を握ってきた。

何しているんですかね?


「お前」


「先輩は好きな人ですから」


「関係あるか!手を握るな!?」


「先輩。私ですが.....紅茶が飲みたいです」


「ほほう。それで」


「帰りに近所のおひさまカフェに行きましょう」


近所のおひさまカフェって出来たばっかのリア充の聖地だろ。

馬鹿なのかコイツは。

行く訳ないだろ。

嫌だからな絶対に。


「大丈夫ですよ。先輩が好きですから」


「行かないからな!!!!!」


「うーん。先輩は子供ですか?」


「何でも良いだろ。俺は行きたくない」


俺は非リアだ。

絶対に行かないし行きたくない。

そもそも馬鹿にされる。

考えながら俺はそのまま逃走するが。

楽しそうな鈴木にそのまま捕まる。


「パイセン。諦めましょう」


「お前な.....都合の良い時だけパイセン使うな」


「え?そんな事ないですよぉ♪」


「いや。絶対に計画的.....ってコラァ!!!!!」


そんな感じで慌てていると。

オレンジ色の夕日の目の前の人影。

それがこう言ってきた。

長門?、と言いながら、だ。

その言葉に俺達は顔を向けると。


「お前は.....」


そこに.....山部遥(やまべはるか)が居た。

セーラー服の姿の女。

俺を見ながら馬鹿にした様な目線を向ける。


茶髪。

そして何も変わってない嘲笑う顔。

美少女ながらブチ切れそうな顔である。

思いっきり眉を顰める俺。

そして無視して歩き出した。


「せ、先輩?」


「行くぞ。鈴木」


「.....え?あ、はい」


鈴木は、???、を浮かべながら俺を見てくる。

そして歩き出した。

するとこんな声がしてくる。


いや無視ならそれでも良いけどさ。長門、アンタはまた人の世界を壊すの?、と。

俺は足が止まってしまう。

因縁の相手に。

友人だった女に.....。

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