第22話 旅行のお誘い『改変』

「やあ」


「.....羽田?」


そんなユナと親父さんと一緒に食事をしたりしてから。

歩道を歩いて帰っていると目の前に羽田が現れた。

その顔は笑みを浮かべて柔和になっている。

それから、君には何時も助けられているな、と言ってくる。

木々を見ながら、だ。


「.....何がだ?」


「例えば優子の件とか。聞いたよ。君は優子の彼氏になったんだな」


「そうだな。でも仮の恋人だ。知ってるだろ?」


「.....あの家も相当に複雑だからな。君には本当に助けられてばかりだな」


言いながら笑みを浮かべる羽田。

相変わらずのいけ好かない爽やかな笑みだ。

俺は苦笑しながらその姿を見る。

そして空を見上げていると。


「君に前にお礼をするって言ったよな。それが今かもしれない。.....もし良かったら僕達と友達にでもならないか。君が嫌じゃなかったから」


「.....それはお断りだな。俺はあくまで孤独が好きなんだ」


「ハハハ。まあそう言うとは思ったけどね。だから俺は別のお礼も用意したよ。君達の家族で旅行に行ってもらおうかなって思って。全部俺が手配するから。これも嫌じゃなかったら、だけどね」


「ああ。それだったら行ってみるか。今度3連休あるしな」


「そうか。受けてくれるか。.....それですまないけど優子も連れて行ってやってくれないか。彼女は.....その。羽を伸ばした方が良いと思うしな」


「.....」


鈴木を連れて行けるのか。

それは分からないが.....まあそう言うなら。

俺は考えながら居ると。

背後から声がした。

私ももし良かったらだけど行って良い?、と言いながら。


「お前。森本!?」


「.....お父さんと話してだけど。私も一緒に行きたい」


「ユナ。.....君も一緒に行きたいのか?」


「だって私は長門が好きだし」


「お前!?この場所で言うな!?」


目を丸くしていた羽田。

だけどその言葉に、そうか、と言いながら笑みを浮かべる。

コイツ、と思いながら森本を見る。

赤くなる俺。

その中で羽田は、愛されているな、と柔和になった。


「君は愛も俺より勝るんだな」


「あのな.....俺はそういうつもりはねぇって」


「ハハハ。何にせよ.....行くのは君達の家族と優子とユナで良いかな。チケットは用意するよ」


「でも私はお父さんの許可が得られないと駄目だから。そこら辺はもしかしたら駄目って事も有り得るから.....なるだけ早めに返事するね」


「ああ。宜しくね。ユナ」


何を話を勝手に進めてんのお前ら。

俺は額に手を添えながら2人を見る。

2人は俺を見ながら笑みを浮かべている。

本当に勝手にな。

俺は苦笑しながら見る。


「うちも許可とか確認しないといけないから。鈴木もそうだろうしな」


「そうだな。もし駄目ならお礼は変更するから」


「いやもう良いよ。そこまでしなくて」


「でも俺が満足しないからな。ハハハ」


羽田は笑みを浮かべながら俺を見てくる。

それから相変わらずのイケメンスマイルを俺に向けた。

コイツという奴は全く。

と思いながら、そういえばお前は何の用事だよ。森本、と聞く。

すると森本は目を丸くして、あ。そうそう。忘れ物だよ、と渡してきた。


「あれ?スマホとか忘れていたのか。すまん」


「そうだね。だから届けに来たらそんな話になっていたから。だから参戦したわけ」


「いや。参戦ってお前な」


「私は長門が好きだから」


「もうええって!そんなはっきり言うな!?」


いや。

はっきり言うよ。だって私は長門が好きだから。

アピールしていくつもりだしね、と森本は笑顔を見せた。


俺はその姿に真っ赤に赤面する。

この野郎、と思いながら。

すると羽田が俺に向いてきた。


「君は俺達には無くてはならない存在だったって事だな」


「あのな.....俺を胡椒とかスパイスの様に言うな。俺はあくまでそんなつもりも無く巻き込まれていっているんだぞ」


「そうは言えど君は俺達や周りを助けてくれている。.....それはもう自覚しても良いんじゃ無いかな」


「.....」


そんなつもりは無いんだが。

俺は盛大に溜息を吐きながら見ていると。

羽田は、まあこんな場所でずっと話していても意味無いしな。そろそろお開きにしようか。俺は君にそれを伝えに来ただけだったから、と言いつつ。

少しだけ顔を曇らせて、時間も無いしな、と苦笑する。

ああ家の事情か。


「時間が制限されているからね。すまない」


「.....いや。お前も大変だなって思っただけだ」


「じゃあ私も戻るね」


俺にウインクをして去って行く森本。

その姿に俺は苦笑しながら羽田を見ると。

羽田は何だか嬉しそうな姿をしていた。

それから、ユナは良い子だ、と言ってくる。

君なら任せられるよ、とも話す。


「まあ選択出来るのは1人だけなのが問題だが」


「.....俺は別に誰とも愛を育むつもりは無いしな」


「そうかな。.....でもそれも面白いかもな」


「.....何がや.....」


言葉通りの意味さ、と言いながら羽田はクスクスと笑う。

それから羽田は手を上げてから、じゃあ、と去って行く。

俺はそれを言葉と目線だけで見送りながら。

ふむ、と顎に手を添えた。

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