第23話 優子、藤也の家に泊まる

『ゴメンね。やっぱり考えたけど家の事をする。.....優子と一緒なのは気に食わないけど.....まあ仕方が無いよね』


「そうか。じゃあ俺と鈴木で行って来る感じだな。お前も気を付けてな」


『あれ?心配してくれるんだ。嬉しいね』


「違う。お疲れ様とだけ言っているだけだ」


いきなり森本から電話が掛かってきたと思ったらそういう結果か。

俺は、ふむ、と納得しながら電話をする。

それから俺は苦笑しながら、じゃあ電話切るぞ、と言った。

森本は、うん。じゃあまた明日ね、と言ってくる。

俺は、そうだな、と言いながら電話を切る。


「.....やれやれ」


「お兄ちゃん。電話は誰からだったの?」


「ああ。森本だよ」


「そうなんだ。森本さんなんだね」


「ああ」


目の前の聖羅はというと。

相当に楽しそうだった。

楽しそうに準備をしている。


何故かといえば来週の3連休に羽田の配慮で旅行が決まったから、である。

俺は苦笑いを浮かべながら見ていると。

インターフォンが鳴った。

あ?もう午後8時だぞ。

宅配便じゃ無いだろうし誰だよ。


思いながら玄関を開けると.....そこに何故か鈴木が。

何やってんだこのあざとい後輩は。

俺を見ながらモジモジしている。

何?また告白でもされんの俺?、と思いながら鈴木を見ると。

意を決して顔を上げてこう言われた。


「1週間だけ泊めて下さい」


「は?アンタばかぁ?」


エ◯ァがまた出ちまったじゃねーか。

つーかこの馬鹿野郎は何を言っているのだ。

俺は眉を顰めながら目をパチクリする。

すると鈴木はマジに困惑したような感じで震える。


私だってこんな形で.....、と言う。

何がどうなっているんだ。

いやちょっと待って1週間?馬鹿なの?

何考えてんのよ。


「鈴木。どうしたんだ」


「お父様が恋人同士ならって言って.....締め出してしまって.....家から私を」


「嘘だろお前」


「嘘で先輩の家に来ると思います?友達の家に泊まろうと思ったんですけど.....お父様が知り合いが監視をしていると言って脅してきまして.....」


「.....マジかお前.....」


ガッデムゥ!

俺は思いながら額に手を添える。

すると、それに私も満更では無いですから、と赤くなる。


その姿に俺は赤面した。

それからそっぽを見る。

あざといとかじゃなくて本心の様だ。

でもいや.....年頃の女の子を自宅の外に泊めるとか無いわ。

無いわー。


「先輩。生活費とかは振り込まれるそうなので.....泊めてくれませんか」


「それでお前は大荷物を抱えているんだな」


「そうですね。先輩ならきっとこの可愛い私を受け入れてくれると思いました」


「帰れ」


「冗談ですって」


折角、可哀想だなって思ったのに全く。

俺は苦笑しながら居ると背後から、お兄ちゃん何やってんの?、と声がして聖羅が目を丸くした。

そして、もしかしてウチに泊まるんですか?、と目を思いっきり輝かせる。

コイツ。

そうだねぇ、と言いながら鈴木は笑みを浮かべた。


「聖羅ちゃんと一緒.....うふふ」


「お前は何を企んでいるんだ」


「何も企んでないです.....うふふ」


「お前は大概だしな」


俺は顔を引き攣らせながら鈴木を受け入れる。

そして母親と父親にも説明したが。

まあ先方が良いなら、と了承してしまった。


マジかコイツ、と思いながら顔をまた引き攣らせたが。

もうこうなっちまったらしょうがない。

まさかこんな事になるとは.....。



『アッハッハ。まさかそんな事になっているとはな。君も幸運だな』


「お前楽しんでる?絶対に」


『.....いや。君がそんな目に遭っているとは思わなくてね。すまない』


電話が掛かってきた。

それは羽田からであるが。

旅行の件に関しての電話だった。

俺は苦笑いで目の前に吊り下がっているカレンダーを見る。

この野郎.....楽しんでやがるな。


『でも正直有難い。それはチャンスだ』


「何がチャンスだよ。お前ふざけんな」


『.....いや。実はね。俺の婚約者の候補に上がっていたんだ。優子の件が。だから.....君には色々と見守って欲しいんだ』


「!」


『それは君にしか出来ない事だ。俺は仲間の内心を見守る才能なんて無いからな』


「.....そうか」


俺は目の前のトイレットペーパーの山を見ながら。

盛大に溜息を吐きつつ、全くな、と呟きながら電話を切って俺は立ち上がる。

それからドアを開けると。


目の前に花魁が立っていた。

何言ってんのかって?言葉通りの意味だ。

胸が見えそうで見えない。

よく見るとコスプレした鈴木である。

何やってんの?


「どうですか?先輩。似合いますか?」


「恥ずかしく無いのかお前は」


「色々と見えている訳じゃないですから」


「.....」


何?女子ってそんな感じで良いの?

って言うか何やってんのマジに。

俺は思いながら鈴木に唖然としながら聞いてみる。

お前何故に花魁の姿をしているんだ、と。

するとウインクした。


「先輩の家で1週間お世話になりますからね。先輩が私に飽きが来ない様にしないとと思いまして。それに彼氏ですから」


「.....」


「もー。先輩何か言って下さい」


「.....いや。何をか言わんや」


この姿に感想でも言えと?

そもそも、と思っていると。

奥から包帯ぐるぐるのミイラがやって来た.....うわ!?何だコイツは!!!!?

と思ったのだが.....よく見れば聖羅だった。

いやいやわざわざ何してんだ。


「コスプレグッズを借りたの。お兄ちゃん」


「借りるってか幾つ持ってんだよお前は。コスプレ用品をよ」


「先輩ってかなりのキモオタじゃないですか。年下好きの。だからそんな系統の物を集めたんですよぉ♪」


「殺す。日本全国のオタクに謝れ貴様よ。そんな事がオタクの鑑と思うな」


怒る俺。

マジ卍だわ.....って死語かこれは。

しかしコイツと1週間か。

気が重いしどうしたら良いのだろうか。

俺は考えながら肩を落とした。

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