第14話 羽田の思いと鈴木の思いと長門の思い

「雑草先輩♪」


「.....何しているんだ。あざとい後輩」


「誰があざとい後輩ですか?あざとくないです」


「いや。お前はあざとい。.....お前以外何があるんだこの呼び方」


家に帰って来ると。

何故か家の中にあざとい後輩。

つまり鈴木の野郎が居た。


何しているんだ。

それにこんな遅い時間(午後6時)なんだが。

何しに来たのだコイツは。

思いながらジト目で見ていると。


「やだなー。深い意味はないですよん?♡」


「おう。聖羅。何故家に上げたんだコイツを」


「え?お兄ちゃんの大切な彼女さんだよね?」


「.....全く違う。.....お前。森本の存在を知っているだろ。まるで違うからな。何か勘違いしている」


というか本格的に何しに来たのだコイツは。

思いながら鈴木を見ていると。

鈴木は少しだけ悲しげに俺に向いた。

それは本気で悲しそうに、だ。

何だってんだ?


「.....羽田先輩って彼女さん居るんですかね」


「.....!」


「.....ちょっと見ちゃったので。.....羽田先輩の家にお菓子持って行った時ですけど」


「あー.....」


面倒臭い事になったな。

俺は額に手を添えながら.....俺を見てくる鈴木を見た。

そして素直に言う。

見てしまったものは仕方が無い、と思いながら。

遠野の場合はちょっとアレだったけど。


「.....彼女じゃない。許嫁だ。多分」


「.....え.....」


「.....恐らくアイツの家の事だ。次の地主にでもなってほしいんだろ。羽田に」


悲しげな顔で俯く鈴木。

それから唇を噛んでいる様な感じに見えた。

俺はその姿を見ながら溜息を吐く。


お前には羽田は遠過ぎる、と声を掛けようとしたが。

俺は口を閉じた。

流石に残酷過ぎるか、と思いながら。

その代わりの言葉を掛ける。


「羽田は多分、強制的か何かで家を守る為に動いているんじゃないのか?お前の単純な告白とかは絶対に受けないと思うぞ」


「.....私は.....どうしたら良いですか」


「.....どうしたら良いですかってお前。何も無いだろ。どうしようも無い。そもそも家庭事情に踏み込めないだろ」


「ですかね.....」


「いや。そうだろ。.....これで踏み込んだりしたら多分.....火に油を注ぐ感じになるぞ」


鈴木は涙を浮かべながら椅子に腰掛ける。

何で俺はこんな恋愛模様に巻き添えになっているのか。

そして羽田の件で悩まなくてはならないのか。

面倒臭いこったな。

思いながら.....俺は鈴木を見る。


「私.....羽田先輩に助けられたんです。.....困っている時に」


「.....それで好きになったのか」


「.....はい。.....それからずっとこの人の傍に居たいと動いていました」


「ふむ」


「.....でも叶わない夢だったんですね」


いやそれはかなり大袈裟だと思うのだが。

でも.....まあ確かに夢物語かもな、と思いながら。

俺はお茶を飲みに行く。

これ以上は何も出来ないしな、と思いながら。

そしてお茶を飲む。


「お兄ちゃん。何とかしてあげれない?」


「.....いや。俺の友人ですら無いので.....というかそんな事を置いておいても何とも出来ない。俺にどうしろと。大きな家庭事情だぞ」


「だよね.....」


「.....正直言って方法は無いからな」


思いながら.....悩んでいる鈴木を見る。

俺はその姿を見ながら盛大に溜息を吐いた。

一か八かになるが。


聞いてみるって手もある。

電話して羽田に聞く。

俺が聞いたなら答える可能性がある。

極秘裏に知っているのは俺だけだしな。


「.....鈴木。ちょっと待ってくれるか」


「.....え?」


「.....ちょっとトイレ行く」


「.....え?あ、はい。雑草先輩のそんな汚い事を報告しなくて良いですよ?」


汚い事www

殺すぞハゲが、と思ったが。

そのまま俺はトイレにスマホを持って向かう。

そして羽田に電話を掛ける。


ここなら悟られないだろうしな。

と思っていると電話が掛かってしまった。

仕方がなく掛けたのだが。


『はい。羽田です。どうしたんだい。何かアイデアが浮かんだのかい』


「.....羽田。正直言っていいか。お前に許嫁っぽい奴が居ないか?みんな察してきているぞ色々と」


『.....もしかして見たのかい?麻里子さんの姿を』


「.....いいえと言えば嘘になる。見た」


『そうか。.....まあ君になら話しても良いかもな。.....彼女は確かに俺の許嫁だ。察している通りな』


そうか、と言いながら俺は目の前に吊り下げられているカレンダーを見る。

それから、彼女が居るから告白を断るんだな?、と言う。

すると羽田は頷く様にして言葉を発してくる。

その通りだ、と言いながら。


『だから俺は誰とも付き合えない』


「.....そうか。一言だけ言って良いか」


『.....何だい?』


「お前はそれで良いのか。本当に」


『良いとか良くないとか。そんな問題じゃない。家庭を崩壊させるつもりはないからな。だから結婚しなくてはいけない』


「お前の意思は.....良いのかそれで」


『.....そうだな。.....正直、結婚相手の彼女を思うと可哀想だな。.....だけどこれ以上どうしようも無いからな。俺は子供だ。だから親の方針に従うしかないから』


面倒な家庭だな。

考えながら否定に手を添える。

そして唇を舐めながら居ると.....。

君に迷惑ばかりだな、と言ってくる。

俺は?を浮かべる。


『この事も何もかも。君に迷惑ばかりだ。謝る』


「.....謝ってもらっても困るんですが。今に始まった事じゃない」


『ハハハ。確かにな。ところで何を聞きたいのかな。何か要件はそれ以外にあるんじゃないのか』


「.....鈴木がお前の事で泣いていた」


『.....そうか。.....すまない。何も出来ない』


「そうか」


俺は何も言えなかった。

それから電話は、切るからな、と言う事で切れる。

そのまま俺は天井を見上げる。


面倒臭、と思いながら。

俺がこんな事をする必要は無いのだが。

だがアイツの目を放って置けない感じでもある。

何かそれにモヤモヤする。

ああもう.....面倒臭い.....面倒だ!


「.....ったく.....」


便座から立ち上がってから。

そのまま俺はトイレのドアを開けてリビングに戻ると。

何か.....女子が1名増えていた。


それも見知らぬ女子生徒。

何だコイツ.....、と思いながら聖羅と鈴木を見る。

誰だよコイツ?、と思いながら容姿を見る。


容姿はかなりの。

いや相当な美少女である。

銀髪で.....黒白の目をしており。

そしてかんざしがまるで紙を纏める様に髪の毛に刺さっている。

あまり似合わない和装姿。

また聖羅の奴.....、と思いながら聖羅に話す。


「鈴木の友人にせよ勝手に家に入れるなよ」


「お兄ちゃん。違うよ?この人.....羽田さんの幼馴染さんだって」


「.....は.....?」


「羽田さんの初恋の人なんだって!.....きゃー!」


悶える聖羅。

よく見たら鈴木が目をジト目にしている。

俺は、お前の名前は、と聞いてみる。

するとこう答えた。


「初めまして。私。冨永爽(とみながそう)と申します。貴方のお話は伺っております。相談があって来ました」


言いつつ和装姿の女子は頭を下げる。

俺は、そうか、とダジャレの様に思いながら額に手を添える。

また厄介事が増えたな、と思いつつ、であるが。

本当に面倒臭い事になってきた。


羽田って.....アイツって.....何なのマジに?

美少女に恋をしたりされなかったり。

殺したい気分なんやが.....。

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