第12話 遠野の考えとセールと.....?

本格的に何かが狂っている気がする。

何が狂っているのかは定かじゃないが.....まあそうだな。

羽田の事を見てそう思ってしまったのだと思う。

あの羽田が本当にこれまでに見た事無い様な顔をしていたしな。

考えながら.....スーパーにて食材を見る。


全くな.....何故俺がこんな事を、と思うが。

すると森本が、お礼で.....その。セール品で申し訳無いけどその。何か買う?、と聞いてきた。

いやお前さん。

何か買うって何をだよ。

お前んちは貧乏なんだろうが?


「お前.....半分出すよ。その食材」


「え?いや。そんなの付き合ってもらっているのはこっちなのに」


「いやいや。俺の弁当の食材なんだろ。出すに決まっているだろ。良い加減にしろ。お前の家は貧乏なのに」


「そう?.....じゃ、じゃあお願い」


するとテトテトという感じでやって来たユウちゃんが笑顔でこう言った。

何だか夫婦だね!、と。

オイ、と思いながらユウちゃんに、そんな事無いぞ、と言うが。

森本は赤くなりながら、もう!ユウちゃん駄目!、と満更でもない顔をした。

何だコイツは?何故に満更でも無いのだ。


「は、早く持って来て!買いたいもの!」


「お菓子」


「じゃあ買うから!早く!」


そんな慌てる森本を見ながら。

俺は?を浮かべる。

そうしていると、おや?、と声がした。

背後を見ると遠野が。

俺は、おう.....、と思いながら遠野を見る。


「やあやあ奇遇じゃないかね。長っちくん」


「お前に長っちと呼ばれる気はない。じゃあな」


「そんな事言わないでくれ!?しかももう去るの!?」


「当たり前だろ。余計な付き合いはしたくないんだ」


そんな会話をしていると、やれやれ、と遠野は苦笑する。

それから次に真剣な顔をした。

俺は?を浮かべて遠野を見てみる。

どうしたのだ、と思いながら。


「まあ冗談は置いて。その。光の件に関して.....相談があるんだけど」


「何をだ。俺への相談費は高いぞ」


「それはしっかりお礼して出すよ。まあそれは良いんだけど.....最近、光の動きがおかしくてね。.....何か知らないかな」


「.....」


知っている様な顔だね、と俺に向いてくる遠野。

だったら何か?話した方が良いか?、と聞くと遠野は顎に手を添える。

君の顔を見るなり.....まあ深刻だね。結構、と言ってくる。

俺は、だな。深刻だぞ、と言う。


「.....そうか。その顔は何か見たんだね」


「.....さっき羽田を見たばっかだ。碌な事じゃない。話したいけど.....お前に話しても良いのか分からないから話せない」


「有難う。そう言ってくれる君はまあそれなりには信頼出来る」


「そうか。そりゃ結構」


ああそうだ。実はね。雪子とデート中でね、と言ってくる遠野。

全く興味が無いがそうなのか。

思いながら、それで何故にスーパーに来たんだ、と言う。

デート中でスーパーって無いだろ。

怪しいなコイツ。


「もしかして後を付けて来たな?お前」


「さあ。どっちかな」


「俺達なら何か知っていると思ったんだろ?羽田の事を」


「俺はそんな事しないぞ。まあ至って至極、真面目だからな」


嘘を吐くな。

コイツは信頼しようにもし切れない部分があるからな。

俺は考えながら遠野を見る。

何か色々と怪しいんだよなコイツ。

考えながら見つめていると両手を上げる。


「すまない。本当は君達を見て追跡して来たんだ」


「もしかしてだけどそれだけじゃ無いだろ。俺の家が近所だから何か知っていると思ったんだろ。お前は何もかもを見透かしている様な感じに見えるしな。俺が言える立場じゃ無いけど」


「そうだね。でも長っちが居て嬉しいのは事実だからね」


「まあそれもどうかな。お前の性格だ。あくまでお前は俺を利用しているだけかもしれないしな」


「それは何を根拠に?」


「俺がボッチで利用し易いからな。リア充から見れば。だから想像した」


うーん。かなりそれは被害妄想じゃないかな、と言ってくる遠野。

俺は、どうだか、と言いながら鼻で笑う。

リア充ってのはみんなそうだからな。

森本が偶然接し易いだけで信頼はしてない。

心から、だ。


「すまないが遠野。俺はお前を一ミクロンも信頼してない」


「.....そうか。それは残念な言葉だ」


「そして俺はリア充を心からは信頼出来ない」


「うーん。それはまた残念な言葉だよ。長っち」


いやいや分かるだろそれぐらい。

俺は言いながらジト目で遠野を見る。

遠野は苦笑いを浮かべながら。

真剣な顔で俺に向く。


「まあそうかも知れないね。でもこれだけは知っておいてほしい。僕は君の事を他の非リア充として見てないんだ。今のところは。君は何か違うからね。信頼しろって言っているんじゃ無いけど俺は信頼したい。君を」


「そうか」


「君はきっと僕達にとっては希望だと思う。今のところは」


「いや。意味が分からん。俺が希望ってデカすぎんだろ。ってか今の所っておま」


今の所は付け加えないといけないからね、と言う遠野の携帯に電話が掛かってくる。

そして遠野が苦笑して手を広げた。

雪子が待っているから帰るよ、と言いながら歩き出す。

俺はその姿に、もう付いて来る真似をするな、と言った。

遠野は、配慮するよ、と言いながらニコッとして去って行く。


と同時に、あれ?今遠野くんが居なかった?、と森本が来た。

俺は、さあな、と言いながら肩を竦める。

それから、で?何をしてたんだ、と聞いてみる。

森本は、うん。えっとね。セール品を見てた、と笑みを浮かべる。


「.そうか。そいつはまた結構なこったな」


「お兄ちゃんもせーる見てたの?」


「そうだな。まあ一応だけどな」


まさか遠野が来ているとは言えないだろう。

それも追って来る様にこの場所に、だ。

俺は苦笑いを浮かべながら隠す様にしつつ。

そのままレジに向かった。

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