第11話 羽田の許嫁らしき人と.....?

「そもそも何の為の買い物なんだ」


「.....そ、それは.....特に理由はない.....けど。でも.....その」


「?」


森本はモジモジしながら俺をチラチラ見てくる。

俺は、???、を浮かべながら森本を見る。

するとユウちゃんが、お兄ちゃんの為にお弁当を作りたいんだって!、と言った。


ほあ!?、と思いながら俺は森本を見る。

森本は真っ赤になりながら、ゆ。ユウ!、と黙らせる様に口を塞ぐ。

俺は目をパチクリしながら歩きつつ森本を見る。


「ち、違うから!私そんなつもり無いから!」


「お、おう?」


「私は貴方が碌な物食ってないから心配になっただけだから!」


「それでお前.....俺にご飯を作ってくるのか?それはまた.....」


何か.....女子って本当に意味分からないな。

思いながら俺は苦笑する。

それから森本を見る。


森本は赤面しながらユウちゃんを見る。

俺と目を合わせられない様な感じだ。

そんな事されると誤解するんだけど.....。

思いながら歩く。

すると森本がこんな事を言い出した。


「私の家ってね。貧乏なの」


「.....そりゃまた初耳だな。.....お前の家って貧乏なのか?」


「うん。.....お父さんが持病を抱えているからね」


「.....そうなのか」


持病.....か。

そういやうちの親父も過活動膀胱だっけか。

大変だよな。病気って。

考えながら森本を見てみる。


「でもね。私は.....負けたく無いから」


「.....何に?」


「.....私自身の.....心に。妹を見る事を」


「.....」


そうか。

コイツは.....身も心も強く居たいんだな.....。

何もかもに、である。

俺は森本が握り拳を作るのを見ながら。

溜息を吐いて森本を見た。


「森本。.....まあその。何かあったらウチに来たら良いが」


「え?」


「.....困っている奴は見捨てて置けないんでね。俺の主義で」


「そんな.....悪いよ。ゴメン。こんな話しちゃって」


「いや。.....何つうかお前頑張りすぎだと思うから」


目の下にクマ出来てるしな。

薄化粧はした様だが。

俺は思いながら森本を見つめる。

苦労している証だろう。


「.....本当に優しいね。君は」


「俺は優しいんじゃない。慈善活動をしているだけだ」


「それを優しいって言うんじゃないかな。アハハ」


そんな会話をしながら歩くと。

近所の公園に着いた。

で、見ると.....何故か和装している羽田と。


化粧をしている和装している相当な美少女が居た。

何だありゃ、と思いながら見る。

すると、隠れた方が良さそうだね、と森本が言う。

え?隠れる必要.....あるか確かに。


俺達は直ぐに隠れ込む。

その事にユウちゃんが、何だか探偵みたい、とニコニコした。

俺はその言葉に苦笑しながら観察を続ける。

するとこんな会話が聞こえてきた。

麻里子さん、という羽田の言葉から、だ。


「無理してないですか」


「.....私は何時も通りよ。羽田君」


「.....無理だったら言って下さいね」


「そうね。でも無理とは言っても.....親同士だから」


何の会話か分からなかったが。

途中からピンときた。

もしかして許嫁か何かではないか、と。


俺は何だか少しだけ苛立った。

それは.....羽田に対してだが.....違う。

その単純な怒りでは無い。

別の何かが、と思っていると俺を押さえ込む様にして森本が言葉を発した。


「.....駄目だよ。行かないでね」


「羽田の親は何考えているんだろうな。.....あんな許嫁っぽい.....」


「.....羽田君にも事情があるんだよ。きっと」


「そうだな。しかしその。地主は大変だな。.....その息子も」


「でも今分かったよ。羽田君が何で.....好かれている人に好意を示さないのか。.....こんな事情があったんだね」


森本は苦笑しながら俺を見る。

俺は.....唇を噛んだ。

そして目の前の2人を見つめる。

すると羽田は、お見合いで.....それから結婚。辛いと思いますが.....、と言い出す。

昔から私の意向は完全無視だから気にしないわ、と許嫁っぽい人は言う。


「世の中は不条理ね」


「.....そうですね」


「息抜きに公園に出て来たのは良いけどね。アハハ」


「.....そうですね.....息が詰まります」


俺達はその姿を見つめる。

すると、有難う。羽田君。息抜きが出来たわ、と立ち上がる許嫁っぽい人。

それから公園の出口に歩き出した。


反対側に有る方だ。

そうですか、と羽田は一言だけ答える。

そして去って行った。


俺達はそれを見てから息を音が出るぐらいに思いっきり吐く。

それから俺は森本を見る。

森本は息を止めていたかの様な反応だった。


「綺麗な人だったね」


「.....そうだな。だけど.....状況は良くなさそうだな」


「.....そうだね」


「綺麗な人だった!」


「.....だね。ユウ」


羽田は.....どうなっていくのだろうか。

そして今の状況はどうなっていくのか。

思いながら......俺達は立ち上がる。


それから、じゃあ行こうか、と向いてくる森本。

俺は頷きながら立ち上がる。

そうしてからスーパーに向かい始めた。

全く.....余計なモノを見てしまった気分だな、と思う。

俺は関係無いのに、だ。

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