第6話 森本の素性と長門の家にやって来た1年坊主と

森本が家に来たんだが。

いやちょっと待て。

マジに何しに来たんだコイツは。

目の前の森本は申し訳無い感じの顔をしている。

俺はその顔を見ながら額に手を添えて頬杖を突く。


それにお前さん。

何処で俺の住所の情報知ったんだ.....。

巫山戯るなって感じだが。

思いながら森本を見る。


「勝手に付いて来たの。御免なさい.....」


「.....勝手に後ろを付いて来るなよ.....ってか何の用事だよ本気で」


「今日の事。謝りに来たの。.....つまんなかったよね」


俺はその言葉に見開いて森本を見つめる。

森本は深刻な顔をしている。

お。おう?、と思いながら俺は目を丸くする。


コイツからそんな言葉が出るとは。

考えながらも.....俺は顎に手を添えて言う。

真剣な顔で、であるが。


「お前は大丈夫なのか」


「.....何がかな?」


「いや。お前らの友情とかお前とか」


「.....私達の友情?.....それは気にしなくて良いよ。多分大丈夫。それに私の事は.....気にしなくて良いよ」


「.....何でだ?」


私ね.....実はリア充とは言っても.....元は非リアだったの。

だから貴方の気持ちってよく分かるよ。

彼ら彼女の前では偉そうな態度取っているけどね、と苦笑しながら森本は静かに俺を見てくる。

驚愕だな。

こんな姿をしておいてそれは.....衝撃だわ。


「.....高校に入ってのイメチェンってか」


「そうだね。高校に入ってのイメチェン的な感じだよ。アハハ」


「.....そうか。.....まあ無理はすんなよ。よく分からんが」


「.....君はアハハ。.....本当に優しいね」


私を助けてくれただけあるね、と言ってくる森本。

俺は、それはもう良いって、と言うが。

それ?それで済む問題じゃないよ。私にとっては.....心から嬉しいんだもの、と胸に手を添えながら俺をニコッとしながら見てくる。

え?何これ?キュンってしてしまったんだけど.....。


「.....と、とにかく俺にとってはどうでも良い話だ。それは」


「そうなの?.....じゃあ私にとってはどうでも良くないね」


そんな会話をしていると。

家事などの仕事をしていた聖羅が俺達の元にやって来て向いてくる。

ニコニコしながら、だ。

何か勘違いしてないかコイツ。


「お兄ちゃんの彼女さんですよね」


「.....聖羅。お前どっか行って下さい」


「か、か、かか、彼女!!!!?違うよ!!!!?」


いやちょっと待て。

何でお前は動揺しているのだ。

思いながら真っ赤になっている森本を首を傾げて見る。

動揺し過ぎだろ.....。


「所でそれを言いにこの場所に来たのか?嫌だったろ?」


「.....嫌じゃないよ。だって私は.....」


そこまで言い掛けてハッとして真っ赤になる森本。

俺は、???、を浮かべながら見ていたが。

という事だから!帰る!、と言い出した!

え?お茶淹れている途中なのにか?

まるで嵐みたいだな。


「.....帰るなら帰ってもらっても良いが.....」


「ゴメンね!!!!!」


「.....いや淹れたものを飲まずにマジに帰るのかよ.....」


いやいや.....。

何しに来たんだよマジに。

嵐か何かかな?


思いつつ見つめてそのまま玄関を開けて去って行った。

勢い良く見送る事も出来ず、だ。

マジかアイツは。

.....スマホを忘れていきやがったんだが。


「スマホを置いていくなよ.....」


「.....あ、アハハ。ねえ。お兄ちゃん届けてあげたら?間に合うんじゃない?」


「え?それって本気で言ってる?何でそんな少女漫画的な事をしないと.....」


「良いから!お兄ちゃん追うの!言い訳十分!」


その。

かなり怒った様な口調になる聖羅。

何で俺がこんな事を.....。

思いながら盛大に溜息を吐いて玄関を開ける。

すると家の前で足が止まってしまった。


何故かといえば家の前で何故か森本が居たから。

俺はそのまま門の側に隠れてしまった。

それも何故かと言えば。

目の前に居る女のせいだ。


「.....何しに来たの?.....貴方」


「私は.....森本先輩に用事があったんです。.....そしたらこの場所に来たんです。.....此処はあの腐った雑草先輩の家ですか?」


「.....そうだけど。腐った雑草って言わないで」


いやあの。

うちの前で喧嘩するな。

そして雑草言うな。

確かにモブだけどな!

痴話喧嘩に聞こえたらどうすんだよ。


色々とツッコミを入れたいんだがどうなっているのだこれ。

何であの栗毛色の1年坊主が居るんだ。

追って来たという話だが.....うん。

ややこしいな、と思いながら俺は見つめる。


「.....ちょうど良いです。.....先輩に用事があるんですが」


「それはどっちの先輩?」


「雑草先輩の方です」


いきなり何言ってんの?

俺お前と話す義理ないよ?

困惑しながら.....俺は顔を引き攣らせていると。

森本がこんな言葉を発した。

何をといえばこんな言葉である。


「何言ってるの?貴方.....。そもそも私達の絆を壊そうとした感じもあるよね?反省が先だよね。.....それにこの人は私の知り合いだし。何かあったら困る」


マジかアイツ。

本格的に何言ってやがるんだ、と思ったが。

その言葉には何か籠っているものがあった気がした。

俺は?を浮かべながら様子を見る。


「.....そうですか。.....雑草先輩は何だか私の相談に問答無用で乗ってくれそうだったので。残念です。また機会があったら伺います」


「うん。.....でも貴方は危険が伴うからあまり会わないで」


「.....先輩酷いですね。.....まあ良いですけど。じゃあ行きます」


言いながら歩いて去って行く栗毛色の1年坊主。

名前忘れたわってか。

思いながら見ていると。

こんな事を森本が溜息混じりで言ってきた。


「何しているの?長門」


「.....何だお前気が付いていたのか」


「気が付いているに決まっているでしょ」


「ほら。スマホ。忘れていたぞ」


「.....あ。そうだったんだ。.....ゴメンね」


そんな誤りの中。

俺は、その、と一言だが言い掛けると。

森本は明るい顔で、アドレス交換しようよ!、と言い出してきた。

はぁ!?何でだ!?、と思いながら唖然とする。


「馬鹿か?教える訳無いだろ」


「じゃあ妹ちゃんに虐められたって叫ぼうかな」


「オイ馬鹿やめろ。ああもう.....分かったよ!!!!!」


何でこんなヤツとアドレスなんぞ。

思いながらだったが交換する。

その森本の顔は.....凄く嬉しそうな顔をしていた。

ニコッとしながら赤くなりつつ、だ。

何故にこんな顔しているのか全く分からんが。


「お前も大変だな」


「.....まあね。.....お友達のグループって出来ていたらそれなりにマイナスってのもあるでしょ」


「そんなもんかね.....友達居ないし分からないんだが?」


「そんなもんだよ。アハハ」


「.....そうでやんすか。.....でもまあ知ったこっちゃないな。.....あとはお前らさんだけでやってくれ」


その言葉に目をパチクリする森本。

それから、何言っているの?私言ったよね。話し掛けるって。巻き添えにするって、と言ってくる。

いやマジに初耳だぞこの野郎.....。

何で俺を巻き添えにするんだよ.....。


「.....君は他の人とは違う魅力があるから。必要な存在」


「意味が分からん.....」


「ふふ。だから.....見逃さないよ?」


「.....いや。だから俺はボッチが良いって言ってんだろ.....お前」


ボッチ舐めんなよ。

俺は独りが好きなんだっつーの。

何でこんなに巻き添えになるのだ俺は。


それからお花畑過ぎるだろコイツの頭の中。

俺みたいなインシデントが入って良い訳が無いだろう。

思いながら.....裏切った友人の事を思い出しながら。

そのまま溜息を吐いた。

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