第5話 喧嘩とご破産と帰宅と森本と?

何故こうなったのだ。

俺は考えながら目の前で相当に上手く歌う遠野を見つめる。

何故こんなにも歌がうまいのだコイツは.....。


逆に俺はクソ音痴なんだが。

思いながら、どうしたものか、と見ていると、ねえねえ、と森本が聞いてきた。

何だよオイ.....ってかそんなに近付くな。

良い香りがするんだが!

勘弁してくれ!


「何歌うの?」


「俺が知ってるのはアニソンしか無いんだが。どうするんだ。しかも音痴だぞ俺は。更にどうするんだ」


「問題無いけどアニソン.....か。うーん。アニソンかー。だとするならザンテ?」


「ザンテ?ザッハトルテ的な?お前何だそれは」


「何それ?ザッ.....?えっと。分からない?.....残酷◯天◯のテーゼだよ?」


「いや。こっちこそ意味が分からない。何故省略したんだ」


「省略形は格好良いかもってね」


人に伝える日本語OKかな?

まるで、り、とかの略称みたく言うな。

了解、の略称だよな?確か。

全くどいつもコイツも.....リア充ってのは.....。

考えながら見ると、ホイ!じゃあ次はながっちの番な!、とマイクを渡してくる遠山のアホ。


いやちょっと待て。

何だ、ながっち、って.....。

勝手にあだ名を付けるな、と思いながらマイクをおずおずと受け取る。

それから盛大に溜息を吐いた。


周りの奴らがみんな期待しながら俺を見ている。

まあ一部を除いて、だ。

歌わなくちゃいけないんかこれ。

恥をかくんだが、ってか歌う必要あるかオイ?

俺は何でこんな目に遭っているのだ?


「あ。長門。丁度良いしデュエットしようよ。音痴同士で」


「何でだよ.....」


「良いから良いから!」


嫌だ、と言うが。

森本は胸を押し付ける様にしてマイクを持つ。

それから歌おうとした時。


遅くなった、と羽田が入って来た。

助かったぞ羽田。

お前が初めて役に立った。

思いながら注目を羽田に向ける様に仕向ける。


「あ。もしかして長門君の番かな。歌ってくれるのかな」


「お前が歌ってくれ。俺はマジに音痴なんだ」


「心配するな。俺も音痴だぞ。歌おう」 


俺の存在要らないよね?それ。

思いつつ額に手を添えながら俺は盛大に再び溜息を吐く。

するとじゃあ枯れ草先輩の代わりに私が歌います、と言ってくる。


枯れ草っておまwww

舐めんなクソガキ。

そう怒りつつ考えながらも助かった、と思いマイクを渡して台から立ち去る。


「じゃあ一緒に歌おう」


だがこれが悪かった。

何が悪かったかというと。

火が点いたのだ嫉妬心に、だ。


立ち上がるボブヘアーの女。

それからマイクを奪い合う感じになる1年の2人の女ども。

本気で怒っている。


「私に言ったんだから!」


「私が羽田先輩の前で歌うの!」


その騒ぎに、止めろって、と騒ぎを収めようと周りが騒ぎながら揉みくちゃになる。

その際に羽田が仲裁に入りバランスを崩した。

そして頭をカラオケ台に打つける。

それから頭から血を流した。


「大丈夫か!?光!」


「あ、ああ大丈夫だよ。有難う。優」


イテテ、と言いながら立ち上がる羽田。

オイオイ大丈夫か、と思ったが。

羽田は俺達を見て、すまない。今日は帰る、と言って帰って行った。


あらら〜。

苦笑して思いながら1年坊主達を見ると1年坊主達は青ざめていた。

自業自得なこったな。


「.....あ。まあ。その。お開きにしようか」


「そだな」


睨み合う2人。

祭りの様な雰囲気は一瞬にして打ち壊しのご破産になってしまい。

いや、俺は良いんだけどご破産になっても。

考えながらそのままカラオケ屋から帰宅する事になった。

全員を集合させて、であるが。


全く。何の時間だったんだ?、と思いながら、であるが。

相談会もご破産かよ。

マジに時間の無駄だった。



帰って来ると妹が早速とやって来た。

お兄ちゃんお帰り、と。

長門聖羅(ながとせいら)。

15歳で中3。

可愛い感じのフリルの服を好む。

長い黒髪に童顔な感じの美少女であるが。


聖羅は直ぐに何処に行ってたの?、と首を傾けて聞いてきた。

その言葉に俺は、まあ野暮用だ、と答える。

聖羅は、あ。そうなんだ、とニコッとして見せた。


俺は、ああ、と答える。

それから宿題は終わったか、と聞くと。

聖羅は頷きながら、終わった、と答えた。

俺は笑みながら、俺も勉強しなきゃな、と聖羅の頭をナデナデする。

聖羅は、だね、と柔和になる。


「宿題も大変だよね。高校生は」


「まあな。大変っちゃ大変だがそこそこだな」


「そうなんだ」


クスクスと笑う聖羅。

全く本当に癒される感じだ。

ああようやっとボッチの日々が戻って来たわ。

思いながら宿題をしようと聖羅に声を掛けた時だ。

いきなりインターフォンが鳴り響いた。


俺達は?を浮かべ玄関を開けると。

何故か目の前に森本が赤くなって立っているではないか。

そうか。森本が.....って何で!?!?!

意味が全く分からない!


俺は何も見てない感じでゆっくり落ち着かせながら玄関ドアを閉めた。

鍵を掛ける。

妹は?を浮かべるがまあ後で幻覚だとせつめ.....

しようと思ったのだが。

怒りの猛烈なノックが響いてきた。


「何で閉めるの!ねぇ!開けてよ!?」


「あーあー。何も聞こえない。丁度電波受信中」 


「嘘吐かないでよ!?」


「ワレワレハウチュウジンダ。シニタクナケレバスグニキタクセヨ」


あくまでそんな感じで貫くのかな!?、と慌てて言ってくる森本。

涙声で、開けてよ!お願い!、とも。

いやいや頼むぜ。お願いだからお帰り下さいな、と素直に心で祈ったのだが。

どうもそういう事にはなりそうにない。

目の前の不安そうな顔の聖羅が居るから。


その顔をチラ見して確認してから。

額に手を添えながら玄関ドアを開ける。

それしか無さそうだし。


目の前にはさっきより距離を詰めた涙目の森本が言いながら立っていた。

俺を睨んでいる。

何しに来やがったんだこのアホ女。


せっかく1人だったのに。

いや割と本気で、であるが。

しかも何処で住所を知ったのだ.....良い加減にしてくれ。

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