短編 ブライト家の編み物
クリスマスパーティーの2時間前。私は日本から来た翔に、ブライト家で編んだ手袋や帽子などを見せた。
「ブライト家では好きになった人に、コキンメフクロウを描いた手袋や帽子を編んで渡すんだ。お父さんもお母さんに、手袋を渡した後結婚したって言ってたの」
お父さんが編んだベージュの手袋を持って来て翔に見せると、「おぉ」と笑みを見せた。心拍数が上がり、マリアンさんが淹れた紅茶を飲むと気持ちが落ち着いた。
翔は知識がたくさんあって賢い。帽子を編んでいたお母さんも、嬉しそうにマリアンさんやジャックさんたちと話していた。
豪雨や強風で窓が割れたり、ドアが通りまで飛んでいくこともある。87歳のおばあちゃんに編み物を教わり、手袋や靴下を作っている。
「おばあちゃんが作った帽子。梅の花びらが描かれてる」「日本が好きなんだな」
翔が嬉しそうに帽子を手に取った時、おばあちゃんが「ベティ、翔。窓の修理に行くよ」と言いコートを着る。
割れた窓をテープで補強し、通りの清掃にも参加する。バーでビールを5杯飲むと踊りだしてしまうイギリス人男性、ドゥランクさんもいた。
「こんにちは、ドゥランクさん」「ベティ!お母さんは元気?」「ええ」「翔です。はじめまして」ドゥランクさんは翔と握手をし、ビールジョッキが描かれた名刺を渡した。
教会で讃美歌を歌い終えブライト家に戻ると、寄付品の手袋やブーツが届けられていた。クラーク家に入るとお父さんがクリスマスツリーを用意しながらジャックさんと一緒に七面鳥を焼き、イチゴのケーキを皿に乗せる。
「マリアンさんのケーキはおいしいね」「うん」翔は七面鳥をかじりながら「編み物を教えてもらえませんか?」とおばあちゃんに聞く。「いいよ」「ありがとうございます」
かぎ針で編み終えたジンジャーマンの手袋を見て、おばあちゃんが驚く。「ベティ。クリスマスプレゼントだ」翔から手袋を渡され、涙が出て来た。「ありがとう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます