第11話:取材、その後
前回までのあらすじ!
取材を早瀬に手伝ってもらい、なんだかんだ普通のデートってものが出来た、気がする…
知識が増えるよ、やったねジンちゃん!
以上、以下本文!
服屋、映画、そしてランチ…先日の早瀬とのデート形式の取材を経て、俺は男として、そしてラノベ作家としても一回り成長出来た気がしていた。女性のエスコートを完璧に行い(あくまで当社比)、デートを全てそつなくこなす(あくまで当社比)俺の姿を見て彼女、早瀬妃花の俺への好感度も爆上がりしたことであろう。(あく以下略)
そんな男の中の男、Man of Man 、神野夕の学校での姿は…!
「いやー、えへへ…」
取材の余韻に完全の浸りまくっていた。
「何だこいつ、キショ&ウザ……。もはや何かに例えるのすら躊躇われるほどキショウザい…」
久坂部がもはや反応する事すら放棄している。
「いやさー?週末の、デート?ああ、デートって言っても、新作ラノベのデートシーンの取材なんだけどさー?」
「うん、知ってる。」
「それがさ?最初は俺の完璧な下調べと月元のアドバイスのおかげで、上手いこと行ってさ?」(メ〇ト編参照。)
「うん、知ってる。」
「でも、途中でトラブルが発生しちゃってさ?」
「うん、知ってる。」
「だけど、そこから俺が完璧なプラン変更をして、午後もパーフェクトなデートをすることが出来たってわけよ。」
「いや、それは嘘。ジンジン服も映画も全部早瀬ちゃん任せだったろ。」
「ん?何でお前が映画の事とか知ってるんだ?」
思わず口に手をやる灯。早瀬にでも聞いたのか?でもあの二人そんなに仲がいいイメージないけどな…。
「ま、まあそれは良いじゃん!とにかくデートが成功したならホント、おめでとうだよ。」
しかしそう話す彼女の目線は明後日の方向を向いており、どこか上の空な様子。目線の先には……月元?ああ、そういえば月元にお礼言ってなかったな。
「そうだな、月元にもお礼言わないとな…」
「ま、待って!」
「なんだよ、灯。」
「ええと、あの……、そう!月元さんには、私からお礼言っておくから!」
「いや、こういうのは俺本人が言わなきゃ意味ないだろ、常識的に考えて。」
「…さっきまでデロンデロンだった奴に常識を語られるたぁ、私も随分と落ちたもんだねぇ」
「何だお前、退役した熟練の老兵かよ」
「ふっふっふっ、まああの”大戦”を知らない世代が出てきたっていうのは、寧ろ喜ばしい事なんだろうけどね…。寂しいもんだねぇ。」
「何の話してんんだよ、こっから急にバトル物に転向しそうな伏線を張るな。」
訳の分からないことを言う灯を放置し、俺はちょうど席で一人になっている月元の方へ向かう。早瀬との取材経験のバフの恩恵か、なんだか普通に話しかけられる気がしていたのはここだけの話。
「あのさ、月元。」
「…」
「おーい、、月元ー?」
「……あんのアマぁ」
無反応。うつむいて何かぶつぶつ言っているようだがその内容までは聞き取れない。なんだかヤクザみたいな声が聞こえた気がするが恐らく気のせいであろう。
「つ、月元?」
「うん?」
「ひっ」
今めちゃくちゃ怖い顔してた気がするけど…、気のせいだろう。俺が知っている月元はそんなこと言わない。
すると彼女は俺の事に気づいたのか、ぱっと笑顔を浮かべる。
「ああ、ひゅうが…じゃなくて、神野君。どうかした?」
「いや、別に大したことじゃないんだけど…」
「水臭いなー、スパッと教えてよー。」
「デートのアドバイス、教えてくれてありがとな。」
デート、という単語を聞き彼女はビクッと体をこわばらせる。
「べ、べつに私は大したアドバイスは、してないよー?」
「いやいや、お前のおかげで無事にデートも成功できたよ。」
「そっかー。あれで、成功したんだー。」
反応はしてくれるが、目からハイライトが失われていく月元
「そうそう。ちょっと失敗したところもあったんだけど、やっぱダメなところを見せたから、寧ろ距離が縮まったっていうか…まあ本当に、月元のおかげだよ!」
俺は、心からの思いを月元に伝える。
「私のせいで、距離が縮まったんだねー。そっかーーー、逆効果だったかー。早瀬さんと、進展しちゃったかーーーー。」
一緒に喜んでくれるかと思いきや、テンションが低い、というかむしろ段々と下がっている様子。というかなぜ早瀬の事を知っているのだろう、灯に聞いたのか?
「月元のおかげで今回は成功したと言っても過言じゃない!ほんっと、月元様様だよ!」
「くぅ、くぅ…」
何やら不穏な言葉を発する月元。
「くぅ?」
「くぅーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!」
子犬のような叫びをあげながら月元は教室を飛び出した。
「ええ……」
クラスメートの誰もが困惑し沈黙する中、とある生徒の声が響く。
「今、神野君が月元さん泣かせた?」
「うんうん、なんか神野君が月元さんを犬みたいにしてた!」
「違う、誤解だ!俺はそんなことしてない!」
「でも犯人は全員そういうよね…」
誰も俺の言うことを信じてもらえない中、俺の方につかつかと近づいてくる人影がひとつ。
「ジンジン…」
「灯…。」
そうだ、灯なら、灯ならこの誤解を解いてくれるかもしれない!
「俺、月元を傷つけるつもり…」
指を一本たて俺の口元に近づけ、彼女は「静かにしろ」のジェスチャーを取った。
おお!やっぱり持つべきものは友だぜ!
「—————口数の多い男は、レディーに嫌われるぜ?。」
「がっかりだよ久坂部さん。」
何の役にも立たない友だった。
「はあ、まあこのまま放っておけばクラスも沈静化するか……」
お礼一つ言うにもいろいろと障害満載であった…
「え!?月元さんって神野君の犬なの!?」
「お前わざと誤解を生む言い方してるだろ!!」
役に立たないどころかいちいち面倒ごとを増やしてくる友人であった。
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