第9話:取材準備(裏)-1

 前回までのあらすじ?


 ……そんなのあるわけないじゃない、何?期待してたの?


 以上、以下本文。 …これでいいんだっけ?



 ♦♦♦♦



 ————正直、絶対大丈夫だと思ってた。他の人にはあの話なんて聞かれていないと思っていたし、あの場にいた人間には私の話のおかしさ何て気づけるはずないと思っていた。確かに私は自分で言うのもなんだが、クラスでもかなり目立つタイプだ。だけどあの時は細心の注意を払っていたし、当の本人は私の言うことを微塵も疑っていない様子であった。


 だから、だから——————!



「完璧だと思ったのにぃーーーーーー!」

「いや、ガッバガバだったと思うわよ。」



 まさか、その場にいた人間くさかべともりにバレるだなんて、想定もしていなかったわけで…。


「あ、ジュース無くなっちゃった。」

「私も丁度新しいの都合かと思ってたところだから、注いでこようか?」

「いいの?」

「うん、別に大した手間じゃないし。」


 —————こんな風に久坂部さんバレた相手とファミレスでドリンクバーを飲みながら放課後を過ごすことになるとは、微塵も思っていなかったのであった。





(————でも、あの時はもうどうしようもなかったわよ。)


 事の発端は、あの日———神野君にデートプランについて聞かれた日だった。







 ♦♦♦♦



 確かその時の私は上機嫌だった。

「それじゃあHR終わるぞー。寄り道せずに帰れよー。」



 担任の男性教師の野太い声を聴くやいなや、皆思い思いの方向へと帰っていく。一方私は手では自分の帰る準備をしながらも、目線はとある男の子の方をじっと見つめていた。



(「うんうん、神野君も私からアドバイスを聞いてから嬉しそうにしてる。この調子だったら問題なさそうね。」)


 が成功し、私は満足な気持ちになっていた。


 そう、あの時私がしたものはアドバイスなんかでは無論ない、そこまで私も恋愛を知らない女だと思われたら困る。だったらなぜ私がこんな事をしたかというと…。


(神野君に彼女なんてできちゃだめだもの!)


 そう、ここでは事情は省かせてもらうが、私としては彼に彼女が出来てしまうのは非常に困る案件であった。

(「でもまさか神野君にデートの申し込みをする相手…誰かしら?」)


 まあ、だから私はたとえ相手がだれであろうと、彼のデートを失敗させなくてはならない。正直あの久坂部とか言うが彼の傍にいる事すらギリ許せない私にとっては、少々手間だが仕方がない。


「でもこのプランは完璧…、彼が今更この件を他の人にしゃべるとは思えないし…」


「プランって何の話?」

「!?!?」

 私が第三者の介入を感じ顔を上げるとそこには、


「…羽虫?」

「え、何、虫付いてる?どこどこ?」

 見えない虫を探して民族舞踊みたいな動きをする久坂部灯がいた。


「冗談冗談、虫なんて付いてないよ。ちょっとからかってみただーけ。」

 あっぶねないわねー、タイミングよくいるからつい口滑らしちゃった。

「ふーん、そう言うならそうなんだろうけど…。」

「で、何か用??久坂部さんの席こっちじゃないわよね。」

「うん、あのさ…」

 彼女が私に話しかけてくるなんて珍しい、まだ未提出のプリントでもあったかしら。


「何でジンジンにあんな嘘ついたの?」

「!?」

 私は驚きながらも神野君の方向を見る、マズイ!まだ下校しそうにはない…!


「な、何の話かしら~。私は嘘のデートアドバイスなんて付いてないけど~?」


「私、デートプランの話とは言ってないけど。」

「……」

「いや、ジンジンはなんか信じてたみたいだけど、流石にあれは無いでぐむっ」


 ……やばいヤバイyabaiYABAI!バレたバレたバレたバレた!私はほとんど反射的に彼女の口をふさぎ思考を巡らせる。


「むぐぅー!むぐぅー!」

 この時私の脳裏にはいくつかの選択肢が浮かんでいた。


 ①:騙す


「久坂部さん知らないの?今の高校生のデートのトレンドはこうなんだよ?」

「え?そうだったの!?流石月元さん!最先端なんだね!」

「そう!だからあの通りにすればどんな女の子もイチコロ…」

「————いや、それは流石に嘘。」


 —————いや、あの内容(7話参照)でこれは無理がある、NG


 ②:無視して立ち去る。


「……」(荷物を取りそのまま教室を出る)

「ちょっと、無視しないでよ!」

「……」

「…あのさジンジン、さっきの月元さんの話なんだけどさ、」

「スト―ップ!!!!」


 —————ハイリスク・ローリターン過ぎる、NG


 ③:責任転嫁


「だって、だって…久坂部さんがあんなこと言うから…!」

「え?私なんか言った?」

「私は、神野君をあんな形で騙すなんて、したくなかったのに…!(チラッチラッ)」

「月元さん、そんな辛い思いまでして…私マジで記憶にないけど。」

「そうなの!だから私には何の落ち度もなくて…!」

「いや、そうはならんやろ。」


 ———————これに騙されるなら初めから私の話なんて疑ってないでしょ、論外。


 こうなったら、仕方がない。


「第四の選択肢、バイツァ・〇スト…!」

「何?私爆破されんの?あと3か4かはっきりさせなよ。」

 意外とノリのいい彼女。と、いけないいけない。パニックで思考がめちゃくちゃになってた。まあいいわ、ここはシンプルイズベスト。単純に説得してんバラさないでいてもらうか…。あ、でも他の人に聞かれちゃいけないわよね…。


 私は彼女の耳元で囁く、顔を寄せると体をこわばらせる久坂部さん。

「あのね、」

「ひっ…!」

「私、この話がばらされちゃうと、とーっても困っちゃうの。」


 ビクッとする久坂部さん、何を緊張してるのかしら。


「あのね…ちょっとお話があるから、場所を変えない?」

「ひゃっ、ひゃい!」

 本当にリアクションが面白い子だ、まあその面白い子に今回はバレてしまったわけであるが。

「ありがとう…いい子ね…。」

 私が話し終えると、彼女はへなへなとその場に座りこんだ。


「じゃあ、この後駅前のファミレスでいい?」

「う、うん…大丈夫…。」

 ガラガラという音を立てて私は、いや、私たちは教室を出ていった。もう教室には誰もおらず、この珍しい取り合わせを目撃する人はいなかった。




 私の「神野君デート失敗作戦」は、第二フェーズに突入したのであった。













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