第8話:取材本番(2)
前回までのあらすじ!
ハヤセは
そのデートプラン ダサいを となえた。
ジンノは
めのまえが まっくらに なった!
以上、以下本文!
♦♦♦♦
「じゃあ、まずはここね。」
そういって彼女が連れてきたのは俺は入ったことのないタイプのおしゃれそうな服屋だった。やっぱり早瀬みたいな女子はこういうところによく来るのだろうか。まあ、俺は横目で通り過ぎることしかできない感じの店だ。
「ここか…」
「どーせアンタはこういうお店入るどころか、横目で通り過ぎた事しかないんでしょ?」
「何だお前、エスパーかよ。」
「?よく分かんないけど、とりあえず入るわよ。」
足をすくませる俺を他所に自動ドアが開き彼女はずいずいと入っていく。俺も仕方なしに店へ足を踏み入れる。
「ええと…男性用の服は、っと…」
「いらっしゃいませー。今日はどうされました?」
「あ、男性用の服ってどこにありますか?」
「あー、それならこちらです。」
あのー店員さん、こっち見て”あ~”って顔するのやめてください。流石に俺もこの格好はどうかと思ってますよ!あと早瀬、お前までそんな目で見るな、完全にそれ爬虫類見る目だから。
しかしそこは店員さんもプロ。笑顔を崩さず、メンズコーナーへと誘導してくれる。
「どんなのが似合いそうですかね…」
「いま流行りのでしたら、こういうのとかですかね~。」
「あ!それ良いですね!でも似合うかな…。」
「大丈夫ですよ、すらっとしてますし!」
「そうですかねぇ?」
「後これとかどうですか?あんまり人を選ばないタイプの服だと思いますよ。」
「確かに~これ良いですね~」
俺そっちのけでガールズトークが始まる。あ、このベルトかっこいいな、こっちのハンカチもかわいいし。流石、オシャレなのは外装だけじゃないんだな…。
「じゃあ神野!これとこれ、後、これも着てみて?」
「え、ちょ、これ全部?」
「うん、これ全部。」
早瀬と店員さんの好機と期待のまなざしに気圧され、俺は言われるがまま早瀬からかごを受け取り、そのまま試着室に入る。
~~5分後~~
「とりあえず渡されたの着てみたけど」
「「おお~」」
「…二人してなんなんですかそのリアクション。」
「いやぁ、意外と似合うなーと思って…」
「そうですね…想像してたよりも素材が良いですね…」
「あの、じっくり見られると恥ずかしいんですけど。」
女性二人にまじまじと見つめられ、こっちが気恥ずかしくなってくる。しかしそんな俺を他所に女性陣はごそごそと陳列棚を漁り始める。ちょっと何してんすか、二人とも
「じゃあ、後これも着てみて?」
「いや、俺さっき渡された分まだ残ってんだけど」
「いいからいいから」
そういって早瀬はさらに服を渡そうとしてくる。店員さんも満足げにしている、いやアンタは止めなさいよ。何後ろで腕組してんだ、微笑ましいものを見る目をする前に何とかしろ!
そんな心からの懇願むなしく俺は試着室に押し込まれ、カーテンも勢いよく締まっていくのであった。
~~15分後~~
「とりあえず渡された分は着てみたぞ…」
「お客様それ絶対、似合いますよ!」
「ええ?そうですか~?」
彼女が手に取っているのは細かいチェックのワンピース。確かに彼女の雰囲気によく合っている。
「そうですよ!試着してみます?」
「うーん、個人的にはすごく好きなデザインなんですけど、ちょっと予算が…」
「あー、それなら!こういう服はどうですか?さっきの服の色違いなんですけど、こっちはセール品になってますよ!」
「成程成程…。予算があればこっち買いたいんだけどなー」
「どっちもよくお似合いですよ!絶対彼氏さんも喜んでくださいますって!」
「い、いや、別にアイツは彼氏とかじゃないですよ!」
「え~そうなんですか?ずいぶん仲がいいように見えますけど。」
————こいつら…
「あの…」
俺もとうとうしびれを切らして声をかける。するとハッとしたように二人がこちらを振り向きいそいそと近づいてくる。おい、今完全に俺のこと忘れてただろ。
「別に忘れてなんかないわよ、全然…ホントよ?」
だからエスパーかよ。
~~n分後~~
「まだ…やるかい…?」
長時間に及ぶファッションショーにより、俺こと着せ替え人形は完全に疲弊し、花〇薫みたくなっていた。
「うーん、思ったより似合うからついつい張り切っちゃったわ。」
「いや、途中明らか変な服あったぞ。」
パンクスーツや甚平を着て俺はショッピングモールの中を歩きたいとは思わない。
「私兄弟とかいないからこういうの初めてで、つい盛り上がっちゃった、えへへ。」
「えへへって…」
「まあでもそろそろ時間も時間よねー。私もおなか空いてきちゃった。」
「そうそう、これ以上いても店員さんの迷惑になるだけだし、どれか買っていこうぜ。」
「そうね、選ぶとしたら、こっちかこっちね。あんたはどっちがいいと思う?」
「そうだな…」
正直、彼女の選んだ服はどれもセンスがあり、自分一人では選べなかったようなものばかりだ。ぶっちゃけ予算的には問題ない、のだが…。
「じゃあ、こっちにするかな。」
「うん、私もそっちの方がいいと思う!じゃあこれ、そのままタグ切ってもらってもいいですか?」
「はい、承知しました。」
「あ、それと————」
♦♦♦♦
長時間にわたる服屋での買い物の後、俺と早瀬は昼食を済ませ、ショッピングモール内をぶらついていた。
「いやー、にしても飯も旨かったし、いい買い物も出来たしでホント良かったよ。」
「そうね!…だけど、良かったの?この服結構高かったのに。」
そういって彼女がのぞき込む紙袋の中には先ほど彼女が見ていたチェックのワンピースが入っている。
「おう!これでも俺印税作家だぜ?服一着くらい余裕だよ。まあ今回はいろいろと迷惑かけたし、迷惑料ってことで。」
ぶっちゃけ印税稼いでたのも何年か前なのでまあまあ痛めの出費だったというのはここだけの話。
「そっか…嬉しい。」
「喜んでくれて何より。まだ時間ありそうだけど、これからどうするんだ?」
「そうね…じゃあベタだけど映画でも見に行きましょうか。」
「おお、映画か…」
でもたしかあのメモにはベタなのはやめろって書いてたよな…。
「何度も言うようだけど、あのメモ嘘っぱちだからね。王道は王道であるからして王道なの、分かる?」
「はい、心に刻んどきます…。」
「大体あんなメモ誰に渡されたのよ。まあ、あんなメモ頭から信じるほうもおかしいと思うけど、小学生じゃないんだから…」
ええ、それに関してはぐうの音も出ないっすね…。
そんなことを言いながら結局俺達は映画を見て、その後カフェに寄り、そのまま解散した。……べ、別にイベントとかが特になかったから省いたわけじゃないんだから!
……あ、シリーズ物の洋画の最新作を見ました。そこは恋愛映画じゃねぇのか寄って突っ込まないでください。俺も早瀬も取材のこと忘れて趣味第一のチョイスをしてました。
そうして、俺たちの初取材は無事(?)終了したのであった。
~~~~数時間前~~~~
「ねえ、ホントにこんなことするの?」
「そりゃそうでしょ!だって神野君、デートするのよ!?何かあったら大変じゃない!」
「私たちがいるのが一番その『何か』にあたると思うんだけど…」
「あっ、動いた!尾行するわよ。付いてきなさい、久坂部さん!」
「ちょっと!月元ちゃん、やっぱり尾行はヤバいと思うんだけど!」
——————――――――――――――———次回、取材準備(裏)
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