第7話:取材本番(1)
前回までのあらすじ:デートプランに悩んでいたら恋愛百戦錬磨の月元がいいデートコースについて教えてくれた!さすが月元、マジ天使!
以上、以下本文!
♦♦♦♦
活気のあふれる店内。週末という事もあって家族連れやカップルで店内はあふれている。俺が集合場所としたのは、地元ショッピングモールの中であった。
俺は集合場所にたどり着くと、俺は袖をまくり時計を確認する。
「時間は…言われたとおりだな。」
俺はごそごそとズボンのポケットを漁り、一枚のメモを取り出す。
ええと…月元の教えは、っと…
”集合場所には、時間ギリギリに到着する事!集合時間はデートの優位性を決定づける。相手より遅く行くことでその後のデートの主導権を握ろう!”
(了解です!師匠!)
集合場所のベンチに向かうと、既に早瀬が座っていた。白いカーディガンに水色のスカートと爽やかな装い、髪も軽くカールがかかっており、ぶっちゃけかなり可愛い。こちらから声をかけようかと思っていたら、向こうが先に気づいた。
「遅い!女の子をどんだけ待たせる気よ。」
早瀬もギリギリに来たんじゃないのか?
「そんなに待ってたのか?」
「もうざっと4,50分…ってそんなのどうでもいいのよ!!私がいつ来ても私の勝手でしょ!」
悪い!?といった感じのテンションで詰め寄ってくる早瀬。そして俺の姿を頭のてっぺんからつま先までじっくり眺める。
「な、なんだよ。」
「…ぶっちゃけ、ナシよりの、ナシ…だけど…」
なんだか葛藤しているような様子。ちなみに俺の格好は師匠直伝の漢字Tシャツかつシャツインスタイルだ。ちなみに漢字は「音速」、修学旅行先で購入した逸品だ。
「この際集合時間ギリギリになったことも許す、漢字Tシャツも許す、アンタに今回のデートプランは任せたからね…でも…」
「でも、なんだ?」
「とりあえず、シャツは出せ…!」
「え?いやだって」
これがデートスタイルなんだろ?
「御託は良いから、早く出せ…」
「お、おう。」
彼女のあまりの剣幕に気圧され俺は急いでシャツを出す。
「ふぅ、ふぅ、落ち着け、私…。これは試験だから、私のデートじゃないから。……よし、続けよう。」
彼女は呼吸を整え、俺の方を向き、ぺかーっとした笑顔を浮かべる。
「じゃあ、行こっか。」
「お、おう…。」
そして俺たちのデートは始まった。
「今日はどこに行くの?」
「ああ、そうだな。まずは…」
俺はこっそりと後ろを見て、メモを確認する。
”デートスポットに水族館とか映画館とかはダメ!安牌に走っていると思われるよ!せっかくのデートなんだから趣味全開で行って自分の事を知ってもらおう!”
自分の趣味全開で行けばいいんだから…ここは!
「まずはメイト!その後昼めし食って、カドショ行って、最後にゲーセンでも行くか。」
それを聞き早瀬の足が一瞬止まる。
「ごめん…なんか聞き間違えた気がするから、もう一回言ってくれない?」
「うん?ア〇メイト行って、昼めし食って、カドショ行って、その後ゲーセンだな。大丈夫か?」
「うん、全然大丈夫じゃないけどこの際大丈夫…。うん、逆に、逆にね?こういうのもアリかもしれないからね。うん、無問題無問題。」
何やらぶつぶつ言っている様子、今日は会ってからなんだかずっとこんな調子だ。
「じゃあ、まずはメイトの方行くか。」
♦♦♦♦
「それではグッズ販売の方を始めさせていただきたいと思います。整理券を受け取りこちらの列の方にならんでいってくださーい。あ、そちら方、列の最後尾は反対側になりますー!」
メイトに入ると、ちょうどイベントの開始時刻だったようで、店内の人口密度はかなりのものだった。グッズなどが大量に置かれているのだろうが、それの詳細すらわからないほど人が集まっており、それだけでこの作品の人気さが
「ねえ、流石に私この中に入っていくのは嫌なんだけど…」
「おお、ちょうどいい時間だったな。」
「え」
唖然とする早瀬をよそに、俺はどんどん進んでいく。
「ちょ、ちょっと置いてかないでよ…!ああもう、折角セットしたのに…!」
そして無事に列に並び、グッズの陳列棚に目を向ける。
「さあ、お前もなんか好きなの選んでいいぞ?」
「好きなの選んでいいぞって言われても…!?」
嫌々俺についてきていた彼女はそのラインナップを見て目を見張る。
「これ…モノ恋の!?」
「おう、気づいてなかったのか?」
そう、俺と早瀬が来たのはモノ恋のグッズ展。調べていたら丁度よくイベントをやっていたのでせっかくなので連れてきたのだ。
「最近ハマってるって言ってたからな。」
「あ!碓氷君のキーホルダー!こっちは瑞果ちゃんの下敷き!6巻の特装版私買い損なたのよね~、この際買っとこうかな…。」
大興奮のようだった。
「地元ショッピングモール内のイベントだし、大したことないかと思ってたけど案外大規模だな…。」
店内中央には最新刊が大量に並び、大きなパネルまで並べられてある。早瀬もうまく人ごみを分けつつ次から次へとグッズを手に取るのであった。
イベントもじっくり堪能したようで、新刊やグッズなど購入し、両手に袋を持ちつつホクホク顔で俺達はアニメイ〇を出た。
「意外と楽しかったな、グッズの種類も豊富だったし。」
「そうね!…そう、ね。うん。楽しかったかどうかでいったら、楽しかったわね…。」
はじめこそ楽しそうにしていたものの、段々テンションが下がっていく早瀬。
「なんだ、楽しくなかったのか?」
「いや、楽しかったは楽しかったけど、なんていうか…これでデートって言われて満足している自分がいるっていうのが、複雑な気分…」
なんだかよく分からないことを言う早瀬。
俺は時計を確認する。うーん、12時ちょっと前か…
「どうするの?時間的にはそろそろお昼ごはん?」
彼女の言葉により俺は完全にテンポを崩される。ええとメモには…あれ?メモどこ行った?俺は焦りながらポケットをごそごそと漁るも見つからない。
「探してるのはこれ?」
そう言う早瀬の手に握られてるのは…あのメモだった。
「お、お前なんでそれを…」
「さっきあんたが会計してるときに床に落ちてたのよ。なーんかずっとチラチラ見てると思ったら、これね?」
「中身は読んだのか?」
「ん~?今読んでるとこよ?」
俺がうなだれている間に彼女はメモを開いており目を通していた。マズイっ!俺の子の完璧なデートプランが———
「……ねぇ」
「は、はいっ!」
思わず上ずった声になってしまう。
「一応聞くけど、これ、自分で考えたものじゃないわよね。」
「ええと、とある人からアドバイスしてもらった、最強デートプランです…。」
はぁと大きなため息を一つ。
「あんた、その人にからかわれてるわよ?」
「いやいや、そんな訳ないだろ…さ、さすがにそんな言葉には騙されないぞ?」
なぜか声が震えてしまう。
「あのね、これ誰の入れ知恵か知らないけど、—————」
そして早瀬は革新的な一言を告げる。
「そのデートプラン、超ダサいわよ。」
「……」
「そもそも、時間ギリギリに行って主導権を握るって何よ?こっちはいつ来るか気が気じゃなかったし、行こうとしてる場所も全然こっちの事考えたラインナップじゃない!それに———って、何でうずくまってるの?」
と、そこで彼女は言葉を止める。
「だって…女子の好きなものなんて全然知らないし、デート何てやったことすらないし、月元のアドバイスだから絶対大丈夫だと思って…。」
「あーもうごめんごめん!全部任せた私が悪かったから!」
「うん、うん…俺、悪くないよね。」
「いや、そんなことは無い。」
あくまでもシビアな早瀬妃花ちゃんであった…。
「よし、じゃあ取材続けますかー。」
「え?続けるの?この流れで?」
早瀬は不思議そうに俺の方を向く。
「当然。せっかく来たんだし、まだお昼よ?」
そして彼女はにやりと妖しく笑うのであった。
「ここからは、私がデートのお手本ってものを見せてあげる」
「お、おう…よろしく頼む…。」
そこで彼女は少し考えるような表情になる。
「そうね、じゃあまずは…」
「どうするんだ?とりあえずご飯か?」
「————いや、服屋ね。流石に漢字Tシャツは無い。」
「あ、さいですか…。」
俺たちのデートは、今やっと始まるようだった、
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