第6話:取材準備

 前回までのあらすじ


 前回を読んでください、以上…。あ、以下本文…。




「はあ………」

「どうしたのジンジン。いっつも原稿作業中はスライムみたいな顔してるのに、今日は死んだスライムみたいな顔してるぞ。」

 灯が優しいような優しくないような声掛けをしてくれる。ていうかなんだ、死にかけのスライムって、なんか変わるのかよ。

 そう思うが俺はメンタルにかかる負荷が大きすぎて何も返事できなくなっていた。」


「・・・ — — — ・・・」

「モールス信号でSOSとかあんた意外と元気でしょ。」

 多彩な知識を持つ友人だった。


「ほーら、とりあえずこの灯さんに相談してみそ?」

「・・・・・」

「タップ5回はアイシテルのサインじゃないんだよ。伝わんらないよ普通そのネタ。」

 いや、伝わってるお前も何歳だよ。tう


「もうマジ無理…授業全部寝よ…」

「メンヘラのふりして授業さぼろうとするな、バレバレなんだよ。」

「くっそ、いい目をしている…」

「何だその返し、スナイパーでも育ててるのかよ。」

「あれ?神野君なんかトラブってるの?」

「ああ、いろいろとあってな…」


 ん?今誰の声がした?明らかな第三者の介入を感じる…。そこで俺が顔を上げると。


「わっ、びっくりした。」

 俺の眼前には突如俺が振り返って驚く月元がいた、って…


「って、月元!?」

「はーい、月元円ですよー。」

 そこには俺に向かって手を振る月元がいた。

「ここは…天国…?」

 俺、そんなに善行積めてたのか…。意外と何とかなるもんだな。


「いや、全然現実だから。あとジンジンは良くて畜生道だから。」

 聞きなれた彼女の声で意識を取り戻す。

「ああ、なんだ灯か…」

「何でそんながっかりそうなトーンなの?月元さんの時と大違いなんだけど!?」

「いや、それは…はは…。」

「気まずそうに笑うな!」

「うん、まあ、元気出せって!男は星の数ほどいるんだからさ?」

「何で私がフラれたみたいになってんの!?あとその慰める男友達みたいなものなに!?」

 やはりこの女、ツッコミの切れがいい。とかなんとか灯と軽快なトークをしていると



「ふふっ、ふふふっ、あっはははは!」

 突如笑いが響き渡る。

「あーあ、おかしい。君たちほんとに仲がいいね。」

 それはほかでもないここにいる第三者。月元の笑いだった。

「あ、つ、月元!悪い。」

「いいのいいの。なんだか神野君がいつも以上に悩んでそうだったから、心配になっちゃって…。」

 俺の違和感を感じ取るとは…何だこの子、天使か?


「…今のあんたきもいぞ、マジで。」

 最早ジンジンとすら呼んでくれなくなった灯。その目には光がなかった。慌てて話を戻す。


「あ、悪いなそんな心配してもらっちゃって…」

 この言い方もなんとも陰キャっぽく、我ながらに悲しくなってくる。



「ううん、なんか揉め事だったら、私で良ければ相談に乗るよ?」

「うーん、流石の月元と言えどこの話は…」

 と、そこで今まで回っていなかった反動だろうか、急激に頭が回り始める。




 ~~恐らく俺同様、彼女(彼氏)いない歴=年齢の久坂部灯氏(16)に相談したところでどうせ「う~ん?カドショとかメイト連れてってもらえれば私は嬉しいけどね?」とか言ってきそうだ。


 だが相手はあの月元だ。今までに告白もデートも何度となくこなしているだろう。それならどうだ?そう月元なら、月元円氏ならば!同じ女子として早瀬が、ひいては読者が満足できるデートコースをアドバイスしてくれるのではないか!?


 だがここはあくまで冷静な俺。ここでもしもデート取材に行くと言ってしまうと諸々不味いかもしれないのでここはあくまで友達の話としておこう…。(この間1秒)~~



「あのさあ、これは俺の友達の話なんだがな?」

「いや、ジンジン友達いないじゃん。」

 出端をくじかれたが、俺はめげない。

「その友達が、仮にAとすると。」

「とある少女Bにデートを申し込まれたんだ。」

 正確には取材だがこの辺を丁寧に説明するとぼろが出そうだから省略しておこう。


「へえ…デート、か…」

 意外と食いつきのいい月元、だが何故か先ほどまでとは雰囲気が打って変わって暗そうだ。


「だけど、A君はBさんにデートプランについて全部丸投げされちまったんだよ。」

「……自分から誘っておいて丸投げなんて、ずいぶんひどいんだね。」


「そ、そう、そうなんだよ!それでな、AはBの申し出は正直嬉しかったんだけど、それでもA君は誰かとデートした経験なんかないからデートプランなんて思いつかないし、八方ふさがりで完全に『万策尽きたー!』って感じなんだよ。」

「へえ、意外と嬉しかったんだ。神野君。」

 ?なんだかよく分からないところに目をつけてくる月元。


「…ま、まあそうだな。それでさ、月元はデートなんて慣れっこだろ?だからちょっとこう…いいデートコースとか教えてくれないかな?頼む!俺を助けると思って!」

「最早A君の設定どっか行っちゃったよ…。」



 だが、これに対して何やら深く考えている様子の月元。

「……うん、いいよ。私がイケてるデートコース教えてあげる。」

「ホントか!?マジで助かるよ~。」

「ううん、そのA君のためだもん、私が力になってあげるよ。」

「あ、あ~そうそうA君ね。そう!A君のために。」

 見ず知らずのA君のために親身になってくれるなんて月元は優しいな~。



「じゃあ、A君にはデートするように伝えてね?」

「おう!もちろんだぜ」


「じゃあ、まず待ち合わせの時の格好なんだけど…」


 そういってデートプランを語ってくれる月元









「何あの子、目が笑ってない…」



 ———————月元の違和感に気づいていたのは、灯だけだった。


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