聖都編
第84話 お菓子騒動勃発
次の目的地は聖国エスティネリアのどこかの教会裏にある祠だ。前世の記憶も曖昧で明確な場所が分かっていない。
そのためフレアさんのメイドチームの皆さんが聖国内を走り回って、それらしい場所を探している。
僕たちは帝都で数日の間、連絡をまっていた。場所が見つかりしだい空間転移で飛んでいく。なんかズルい気もするけど、お姫様や公爵令嬢に侯爵令嬢がいるのだから、矢鱈に歩いて危険な目に合わせるわけにはいかない。
と言うのが当初の計画。今となってはレミーナ様たちに敵う人はそうそういない。
そして聖国の聖都では問題が発生していた。後の世に語られる『お布施もいいけどお菓子もね騒動』である。
騒動の発端は少し前に遡る。皇帝陛下がREDに加入した日のことだ。
その事に関してはとても助かっていたんだけど、その際に余計な一言があったらしい。
聖教ファシミリアの教皇様にお告げをするミカエラ様。僕たちのことは天使の加護を持つ者として話をしたらしい。
そしてもう1つがファシミナ様からの言伝らしく、『お布施もいいけどお菓子もね』ってことらしい。
更には天使たちがミカエラ様の使いとして幾つかの教会に舞い降りたらしい。
そんなこんなで、聖国エスティネリア国内はお菓子騒動真っ盛りとなっていると、メイドさんたちから連絡が入っている。
お布施の代わりにお菓子がお供えされることに、大きな問題は無いように思われた。しかし、そのお菓子のお供え物はファシミナ様のもとには届くことはなかった。
「ファシミナ様はなかなか帰って来ませんね」
今、帝都のお城にはファシミナ様はいない。なかなか戻らないファシミナ様を心配するレミーナ様。因みにリフィテル様も不在だ。
今、天界でも問題が起きている。お菓子の味を知ってしまった天使たちによるストライキが起きているとかで、お菓子をめぐる天界騒動が勃発していた。
……うん。別にそれは本当に本気でどうでもいい事なんだけどね。
「自業自得じゃな。菓子ごときに目が眩みおって」
アビスメティス様……、それ本気で言ってます?
問題の1つとしては、聖神ファシミナ様を祀るファシミリア聖教が、大陸で一番大きな宗教である事だ。
今はまだ聖国内でしか供物としてのお菓子は広まってはいない。これが大陸中の教会に広まれば様々な問題が発生する。
「なあ、アビスメティス様よぉ、そう言うなら菓子食うのやめねえか?」
「そちはアホか?リフィテルもファシミナもいないのじゃ。菓子は全て妾の物じゃ。もっと沢山もってきてよいのじゃぞ」
「いやいや、今後は菓子の需要が増えかねない。小麦粉や砂糖が高騰すれば民たちの生活にも影響するんだ。少しは自重して欲しいんだが」
「ふむ。まぁその時はファシミナから奪えばよいか」
確かにお供え物の為に小麦粉などの需要が増える可能性があるが……。
「陛下、それ以外にも問題があります」
「まあ、そっちの方が問題か」
陛下の言葉にレミーナ様とエレナ様、ラウラ様が頷く。
「ルイン、どういう事?」
「リビアンさん、天界が彼らの身にならないお布施よりもお菓子を所望してきたらどうします?」
「ん? お菓子をお供えすればいいんじゃないのか?」
砂糖はそれなりに高価で売っているお菓子は高い。でも野山の果物なんかからでも、お菓子は作れる。葡萄農家なら干し葡萄でも天使たちは喜んで食べるだろう。
「ではお布施が入らなくなった教会はどうなると思いますか?」
「あっ、お金が入らないと食べるものにも困っちゃうね」
「パンがなければお菓子を食べれば良いのじゃな」
黙ってて下さい、
「彼らもお布施だけが全ての収入ではないのですが、資金が目減りするのは明らかです」
そして問題は、金の亡者のシスターズだ。シスターズは教皇オディリア様に仕える4人のおばちゃんたちだ。
ゲーム内でも、聖都で
「教会が割れるか……」
皇帝陛下もシスターズを知っているのだろう。聖都における聖教の権力は大きく、王家や貴族に対しても強い力を持っている。教皇のオディリア様は王家の血筋だ。
その聖教の中枢に棲まう金の亡者。金を崇める者と、神を崇める者とが道を違えるのは自明の理だ。
「可能性はありますね。教皇様も大変だ」
「他人事だな?」
「え!? ええ、今回は聖都に行く用事も有りませんし」
陛下はモブキャラの僕に何を期待しているのだろうか?
「事の発端はお前たちにないか?」
「確かに僕はアビスメティス様にお菓子をあげましたけど、これは神様が招いた事ですよね? 神様の事は専門家の聖教会にお任せしましょう」
陛下がジト目で僕を見るけど、教会の問題に首を突っ込めるはずがない。
そんな時にフレアさんがメイドさんからの連絡を受けて、通信機で話をしている。普段は通信の時は席を外して会話をしているフレアさんが、陛下やレミーナ様がいるこの場で話をしているのは珍しい。
「ルイン様、エスティネリアの東側にある町に向かったシンシアから、救援の連絡です」
救援と言う言葉に緊張が走る。
「シンシアのいる町付近でスタンビートが発生したようです」
シンシアさんたちメイドさんもREDの仲間だ。僕たちはシンシアさんの持つ通信機の位置情報をもとに、空間転移で救援に向かった。
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