第79話 女の子達の特訓 2
※78話タイトルを女の子達の特訓1に変更しました。
□□□
(カトレア)
「魔力ブースターはちゃんと発動しているのに、ファシミナ様に効かないのは、まだ熱量が足りないって事よね。
ここの魔法陣を無限ループにして……。エネルギーはE = mc2でしたね。光速の二乗ですか……まあいいか、この方程式を術式に組み込んで、更に火力を上げて……。
えっとこっちのエネルギーはマイナス加速させて、えっとこっちは……」
私が作った魔道具はファシミナ様には全く通用しませんでした。それでもルイン君からは幾つかヒントを貰っていたので、チューニングしながら魔道具を使いました。
ルイン君から以前に聞いた絶対破壊魔法陣。これならファシミナ様にも通用するかもしれません。
「出来ましたぁぁぁぁぁ!
皆さん、ファシミナ様をこちらの魔法陣に誘導して下さい!」
皆さんが魔法陣の位置を確認すると、フレアさんとラウレンティア様が決死の覚悟で、ファシミナ様に斬りかかります。
ソラさんとミラさんも魔法を放って、ファシミナ様を誘導します。
今、ですね。私はポーチからクッキーを3枚出して、魔法陣の中に投げ込むと、ファシミナ様が一瞬にして魔法陣の中のクッキーを小さな口で3枚キャッチしました。
「魔法陣起動ッ!」
魔法陣の中を火炎魔法と氷結魔法が無限加速ループにより莫大なエネルギーを蓄え、同質量、同エネルギー量を持つ正と負のエネルギーを、同時かつ同座標に撃つ事で、対消滅を発生させます。
2つのプラズマ化した火炎弾と氷結弾。気がついたファシミナ様が魔法陣から空中へと離脱しました。
「ああ、避けられた……」
的を失ってしまったプラズマ化した光る弾は打つかり合い、ファシミナ様という質量を失った事で等価質量のバランスを失い対消滅は失敗しま………あれ?
世界が真っ白な光に包まれた?……あれ?
私たち全員が空間ごと消えて行きました?……あれ?
…………
………………
……………………
気がつけば真っ白な世界に、私は、いえ、私たちはいました。そして私の前には、頭に1対の翼、背中に3対の翼、腕と脚にも1対の翼を持つ黒く長い髪の美しい女神様が、腰に手を当てて、怒った顔をしています……。
「アビスメティス様……」
怒った顔のアビスメティス様が一同の顔を見渡します。
「全員おるようじゃな」
「ここ、
「ボクたちも死んだの?」
「死ぬ一歩手前じゃったと言うのが正解じゃな。ギリギリで封殺出来ておらんかったら空間ごと消えておった。一万年ぶりに全力をだしたわ」
「ふへ!?アビスメティス様が全力ぅ!」
「うむ、
皆さん、私を怯えた目で見ないで下さい!!!事故なんですよぉぉぉ!
「カトレア、今の魔法陣は空間消滅魔法じゃな」
「は、はい。ルイン君は絶対破壊魔法と言っていました」
「……やはりルインか。あの
アビスメティス様の美しいお顔に青筋が立っているのは気のせいでしょうか。
「この魔法は余りにも危険な魔法じゃ。我ら天使、いや大神カナンテラスさえも消滅しかねない可能性があるのじゃ。妾が未来永劫に渡り、そちの魔法に関する知識と共に封印する。良いなカトレア」
「は、はい!」
ルイン君……私にあまり危ない魔法を教えないで下さいね。
「代わりに新しい魔法を妾が授けよう」
アビスメティス様より賜った魔法はグラビティドライブ。重力魔法も、使い手が極めて少ない
「しこうして、先程の妾たちの魂の消失は、カナンテラスも
クッ、クッ、クッと笑うアビスメティス様はもう怒ってはいないようでした。そして私たちは、元いた異空間へと戻りました。
(エレナ)
「プロテクションフィールド!」
レミーナがファシミナ様の霊剣フツノミタマの斬撃を弾きます。始めた頃は通用しなかった防御魔法が、今は確実にファシミナ様の強撃を弾いていました。
退いたファシミナ様にソラとミラの魔法が飛び、ファシミナ様の着地点に着弾しました。この訓練で格段に魔法精度と戦況予測が向上しているのが分かります。
ホンの僅かな間を稼いだ隙にフレアとラウレンティア様が詰め寄りました。ラウレンティア様の剣は空を切りましたが、その一振りの剣速は鋭く、人であれば躱せる者などホンの一握りでしょう。フレアの剣は弾かれましたが、三方からノーラ、メーテル、リビアンがファシミナ様に襲いかかります。
防戦一方だった3人でしたが、バトルハイのゾーンに入ることにより、無駄な動きなく、洗練された剣の運び、高められた集中力により、ファシミナ様の一撃で全滅することは無くなっています。
「グラビティドライブ!」
アビスメティス様から賜った重力魔法を使うカトレアさん。精度がまだ足りなく、ノーラたちも巻き込み、過重力地場を展開してしまいましたが、ファシミナ様の動きが鈍ります。
「フィジカルエンチャント!」
そして私は全身強化と、体感加速を同時発動させることが出来る様になりました。
カトレアさんの過重力地場を見極め、その外から連続の突きを繰り出します。
私の剣速も神速には遥かに届きませんが、ファシミナ様のお墨付きで、
雷速の連続突きを過重力地場の中でも尽く躱すファシミナ様。しかし、ついに、私の、いえ、私達の攻撃が僅かにファシミナ様のエメラルドグリーンの髪の毛を、一房にも満たないホンの数本ですが、宙にふわりと舞うのが見えました!
「あ、当たった……」
「やった……」
「やりましたわ!」
「流石はエレナ様だ!」
「「「やっっったぁぁぁぁぁ!!!」」」
当たったというよりも、僅かに髪の毛に触れただけです。でも、始めた当初は動きも見えず、ただ斬り殺されていた私たちです。
ファシミナ様の動きが少し見えてきて、少し反応出来る様になって、少し抗える様になって、その間に何度も死の恐怖と戦い、震える足で立ち上がり、震える手で剣を握りしめ、漸く全員の力を合わせてホンの少しだけ掠ることが出来ました。騎士団の訓練で掠っただけで喜ぶ者は誰もいません。でも、今は………。
レミーナが、カトレアさんが、リビアン、ノーラ、メーテル、ソラ、ミラ、フレアさん、そしてラウレンティア様も私に抱きついて来ました。
「あ〜あ、ボクの髪が切れちゃったよ」
そう、ぼやくファシミナ様ですが、お顔は優しく笑っています。
「じゃあ、そろそろ帰ろ…」
「そろそろ妾たちの出番じゃな。準備運動も終わったようじゃしの」
…………はい?
「なに、リフィテルもファシミナも、
「し、し、しかしですね………」
「えっ、オレも!?」
「ボ、ボクは少し疲れたから、欠席でいいかなぁ〜」
「では参るぞ」
「「「キャアぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」
本当の地獄の特訓は、今から始まりました……………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます