第77話 女のコ達の決意

「つ、次はルイン様と共に戦えるのですよね!」

「そ、それは……」


 レミーナ様の言葉に僕は即答できなかった。ジークハルト様との戦闘は先手を取れる僕と、戦闘センスの塊であるシャルルがいたから、なんとか対応できた。


 きっと、クラウディーヌ様との戦闘もハイレベルな戦闘になる。一歩間違えれば、誰かが死ぬ事だって有りうるんだ。そんなのを僕は望んでいない。


「ルイン君は、私たちを足手まといだと思っていますね」


 エレナ様の口調と目つきが少し怖い。


「……………」

「やっぱり、ルインはあたし達を足手まといと思っているんだぁ」


 リビアンさんも少し怒ってる?


「いや、だって、一つ間違えれば誰かが死ぬ危険があるんだよ」

「ルイン君は、待っている私たちの事を考えた事はありますか?」


 美人のカトレア様に睨まれたのは久しぶりだ。


「……すみません。でもですね、災害クラスSS級ともなれば、火竜や貴族級吸血鬼ノーブルヴァンパイアレベルですし、SSS級ともなれば雷竜やリッチィクラスです!そこに高貴な方々を連れて行くわけには……」

「ルイン様!!!」

「は、はい!」


 レミーナ様が荒々しい声を上げた。


「分かりました。ルイン様は私たちが頼りないから連れて行かないという訳ですね!」

「え、いや、そこまでは……」

「リフィテル様!私にもご指南いだけないでしょうか!」

「えっ!?」


 レミーナ様がまさかのリフィテル様へ修行を懇願した。いやいや、それはヤバいですよレミーナ様!


 スティック状の焼き菓子を食べていたリフィテル様。ポリポリと齧りながらレミーナ様を見た。


「オレがかぁ?ん〜、めんどい!」

「そ、そこを何とかお願いします!」

「ん〜〜〜、やっぱめんどい」


 ヤル気の欠片も見せないリフィテル様を見て、僕は安堵した。あの修行は何がヤバいって言えば精神だ。


 手足が吹っ飛ぶは、体は真っ二つになるは、その都度襲われる死ぬ程の激痛。ファシミナ様とシャルルがいなかったら、僕は精神崩壊していた筈だ。


「なら、ボクが手伝ってあげるよ。レミーナにはこの間の借りがあるからね」

「ファシミナ様!ありがとうございます!」


 まさかまさかのファシミナ様の申し出。リフィテル様ほど攻撃的ではないが、あの時僕の修行の時も黄金に輝く大剣カラドボルグを振り回していた。残念ながらアビスメティス様には一太刀さえ掠りもしなかったけど。


「私もお願いします」


 エレナ様がファシミナ様に頭を下げると、カトレア様、リビアンさんと次から次へと皆さんが頭を下げて、ファシミナ様に懇願した。


「構わないよ。一人も千人もあまり変わらないし」


 ああ、まあ、そうだよね……。十翼位の智天使ケルビム様から見たら、僕らは塵以下だろうからね。


「ファシミナ様、コイツも面倒見てくれねえか」

「別に構わないけど」


 そう言った皇帝陛下にファシミナ様はあっさりと快諾した。しかし急に話しが出たラウレンティア様は戸惑っている。


「お父様、私は……」

「こんなチャンスはめったにどころか、この先、絶対ぜってえに無い。それに皇帝言った勅命したよな、ルインを落とせ添い遂げろと。この機を逃せば、お前はルインの傍らには居られなくなる。覚悟を決めろラウレンティア」


 大帝国の皇帝陛下の言葉は重い。

 

「俺も偉大な男を沢山見てきた。しかしだ、ルインは別、いや別格だ。スケールがデケえとか、ナニがデケえとかそんなんじゃねえ」


 つまり僕はスケールが小さくて、ナニも小さいと?


「ルインという漢がいる。その存在自体がデケえんだ。見て分かるだろ、この若さでこんだけの美女をはべらせてんだ。今から並んだって何年後にヤレるんだか分かりゃしねえ」


 はい?何の話し?アレアレ?なぜ皆さん赤い顔してるの?ソラさんやミラさんまでもが、何故かモジモジとしていたよ?


「お父様、そういう事ですか……」


 ラウレンティア様がそう言うと僕の方を見てニコリと微笑み、レミーナ様たちの方を見ては頭を下げた。


「皇帝陛下、その勅命謹んでお受けいたします」

「精進してこいよ、ラウラ!」

「はい」


「話は纏まったようじゃな。どれ、儂も行くとしようかの」


 亡霊のジークハルト様が何故か行く気まんまんだよ?


「テメェが行ってどうすんだよ、クソ爺ィ!」


 皇帝陛下がついて行こうとした、亡霊のジークハルト様の長い後ろ髪を掴んだ。


「離せ小僧!儂もファシミナちゃんとウッフむはむはしたいのじゃぁぁぁ」


キミ変態は連れてかないよ」


 あっさりと断るファシミナ様。


「なんでじゃぁぁぁ!解せぬ!」


(((解せぬじゃねえよ!さっさと成仏しやがれクソ変態!!!)))


 そして、ファシミナ様と女性陣の皆さんは、修行の為に異空間へと姿を消し、お城の地下にある静かな玄室には、僕と皇帝陛下、そして亡霊のジークハルト様が残った。


 ……………アレ?


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