第76話 聖痕の願い
「では石板は貰いますね」
静まり返った玄室は、青白く光る壁や床が、ただ居るだけであれば、とても幻想的な雰囲気を作っている。その部屋で、僕は亡霊のジークハルト様から、正式に石板を譲り受ける。
「よい、よい、好きに使え。そうか、そうかぁ、リフィテルちゃんに、ファシミナちゃんか。可愛ゆいのぉ」
やはり
「んで、
「ん?クソ婆婆に騙されたんじゃ。いや、そうでもないか」
亡者のジークハルト様が僕の顔を見た。
「クソ婆婆ってクラウディーヌの婆さんか?」
「そうじゃ。儂らがまだ若かった頃じゃ。儂と、ランスロート、クラウディーヌの3人で旅していた時の事じゃ」
聖女クラウディーヌ様と、剣王ランスロート様。二人共既に他界していたよな……。
「旅をしている途中で、謎の3枚の石板の事を知ってしまった。そんなん知ってしまったら集めたくなるのは仕方なかった事じゃ。若かった儂らはよく分かりもせずに3枚の石板を集めてしまった。
しかし、石板を3枚集め、その謎を解いて儂らは腰を抜かした。禁呪である
当然、聖女であったクラウディーヌが、この3枚の石板を封印すると言い出した。そして、たまたま3つ持っていた『聖痕の願い』を使ったのじゃよ」
「『聖痕の願い』ってなんですか?」
リビアンさんが、ジークハルト様に聞いてくれた。前世の記憶を辿っても知らないアイテムだ。
「聖女狩りは知っておるか?」
「は、はい。大昔に魔王軍が大進行した時に、聖女様や聖女になりそうな女の子を、魔王軍が探し出し殺戮した、酷い話しですよね」
「そうじゃ。その時に小さな教会に追い詰められた数人の
願いを聞き入れた天使は
そんな話しがあったんだ。
「その時のクロスが『聖痕の願い』じゃ。使用者や、願いの程度にもよるが、死後にその願いを叶えてくれる、命を亡くした後に発動する珍しいアイテムじゃ。真面目バカのランスロートは、クラウディーヌの言葉に騙され、儂はご褒美をくれると言うので、その話しに乗っかった訳じゃ」
ご褒美?
「その死後の願いというのが、石板を守る事だったんですね」
「まあ、そうじゃが、正確には『石板を取りに来る者を見極める』じゃがな」
「はい?見極める?初手から最後まで、全力で殺しに来てませんでしたか?」
「それも見極めの一つじゃ。自らの命を天秤にかけてでも
「その点でしたら、リフィテル様が制限を新たに加えて下さったので、禁呪自体のリスクは減りました」
僕はジークハルト様にリフィテル様が施したリザレクションの制限を説明した。
「なるほど、1年に1回、魂が天に昇る前までか。流石はリフィテルちゃんじゃ。そしてレミーナ嬢も覚悟はあると」
「はい」
「その覚悟に少しでも揺らぎがあれば、2枚目の石板は手に入らぬじゃろう」
「それはどういう事ですか?」
ジークハルト様の言葉にレミーナ様が疑問を抱くが、僕には察しがついた。
「レミーナ様。2枚目の石板は聖都の小さな教会、そこの祠に有ります。そして、この話しの流れだと、ガーディアンモンスターである
「クラウディーヌ様!?」
聖女クラウディーヌ様が他界されたのは、そんなに古い話ではない。僕が10歳ぐらいの時だったかな?
クラウディーヌ様が亡くなってから聖女として大天使ミカエラ様に認められた聖教者はいない。先日、レミーナ様が大天使ミカエラ様を降臨させているだけに有力候補だよね。帝都では既に聖女扱いされているし。
ちなみに聖女=教皇ではない。聖都に於いて聖女は神聖視される事は間違いないが、教皇猊下は聖都の王家に連なる聖教者から選ばれる。聖都の王家は神祖コーネリア様の直系血筋だからだ。
「はい。クラウディーヌ様が相手となるとかなり厄介です。
「「「………………」」」
僕の言葉に皆さんが息を飲む。
「
「その防御陣を崩さない限り、石板は手に入らないという事ですね」
「はい、エレナ様」
「それだけではないぞい。あの婆さんのシャイニングスマッシャーは火竜さえも一撃で消し炭にする威力があるんじゃ。生半可な防御魔法など紙と同じじゃ」
「つ、次はルイン様と共に戦えるのですよね!」
災害クラスSS級、討伐レベル70の火竜を一撃で倒すクラウディーヌ様の力を知ってなお、僕と共に戦いに挑む意思を見せるレミーナ様。
「そ、それは……」
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