第68話 マナの正体

「リフィテル様が言うように、空間は何処にもあります。しかし僕の仮説では空間は昔からあった訳ではありません」

「宇宙誕生説じゃな」

「宇宙?」

「何それぇ!ボク、そこから聞きたぁい」


 僕は以前にアビスメティス様に話した『時の始まり』をリフィテル様、ファシミナ様、シャルルに話をした。


「お兄さんはマクドゥルフの血族かぁ。成る程ねぇ」

「はぁ、『時の始まり』とか考えたこともなかったな」


 僕の話を聞いたファシミナ様は、何やら納得の様子だった。


「それでは空間についての話をしますね。いま話をしたように、空間と時間はビッグバンで作られました。つまりは空間も時間もビッグバンのエネルギーで構成されていると仮定します。


 宇宙には大きく分けて三つの要素があります。一つは世界を作っている物質アーエール、生き物や植物、空気や石ころもこのアーエールの分類に入ります」


 アビスメティス様とファシミナ様はフムフムと聞いているが、リフィテル様は既にハテナ顔になっている。


「二つ目が第五元素エーテル。何もない空間にも存在する物質ではないかと思われます」


「はぁ?何も無い空間にある物質っておかしいだろ!?」

「分かりにくくてすみません。『空間』は在って、『物質アーエールが無い』状態でも存在する物質です」

「よ、余計に分からなくなってきた」


 リフィテル様が頭を捻り始めると、「ほれ、こういう事じゃ」と、アビスメティス様が透明なキューブを作った。


「この中にはルインの言うところの物質アーエールは入っておらん。しかし光を通しておる。何も無ければ中は闇、若しくはキューブさえも維持出来んじゃろう」


 百聞は一見に如かず。リフィテル様もキューブをチョンチョンと突っついて確認している。


「そして妾の魔法は、この何も無いキューブの中で使うことが出来た。つまりは物質アーエール以外のモノが魔法の源マナの正体で在るという事じゃな」


「はい。そして三つ目の要素が聖煌神気アイテールです。


 宇宙での3要素は物質アーエールが5%、第五元素エーテル27%、聖煌神気アイテールが68%の割合で存在していて、この聖煌神気アイテール魔法の源マナ、いえ魂さえも構成しているエネルギーではないかと……っていうのが僕の仮説です」


「流石じゃな、お兄ちゃん♡。中々に良い仮説じゃ」


 十二翼位のアビスメティス様に褒められちゃったよ!


「す、凄いよお兄さん!ボクはお兄さんの魔法理論を信じるよ!」


 聖神様のお墨付きを貰ってしまった!


「わたしニヌルタ様からマスターに鞍替えします!わたし、本当は理論派のあるじが好みなんです!」


 シャルルや、それは止めてくれる!ニヌルタ様に殺されます!


「オレにもマナが理解出来たぞ!成る程なぁ、聖煌神気かぁ~。オレもクソ兄貴を認め……ぐわぁぁぁっ!」


 リフィテル様が両肩を抱き締めて苦しみ始めた。


「あぁぁぁぁぁぁ!」


 ファシミナ様も天を仰ぐようにして、苦しみ始める。


「な、何が!だ、大丈夫ですか、リフィテル様、ファシミナ様!」

「ほぉう、これは面白いものが見れるわい」

「ま、まさか……そんな事が!?」


 アビスメティス様は慌てるでもなく、笑みさえ溢して、苦しむリフィテル様とファシミナ様を見ている。


「「ぐわぁぁぁぁぁっ!」」


 二人の天使様が光り輝くと美幼女から美女女神へと姿を変え、背中に六枚の白い翼が顕現した。


 リフィテル様の長い真紅の髪が、翼の羽ばたきにあおられ扇に広がる。初めて見るリフィテル様の美女女神姿はスレンダーながらにとても美しく輝いていた。


 同じように翼を広げたファシミナ様も、エメラルドグリーンの長い髪が、宝石のように煌めき、フレアさんにも匹敵する豊潤な胸に目を奪われる。


「「イっくぅぅぅぅぅぅぅッ!!!」」


 絶叫をあげる美女女神様。以前、野営会の夜に、メリッサ様とニーチェ様も似たような声をあげていたのをふと思いだした。


「ほっほう!座天使スローンズを飛び越して智天使ケルビムに成りおった」


 二人の女神様は足に二対、腕にも二対の白い翼が現れた。合わせて十枚の翼……凄い………。


「し、神化しんかなんて、わたし初めて見ました……」


 神器であるシャルルさえも、目の前で起きている神秘的な現象に驚いている。


「神化って何ですか?」

「天使としての格が上がると翼位が上がり、新たな翼が生えるのじゃ。

 神化なぞ、千年に一度有るか無いかの事象じゃ。しかも二人同時に二翼位も上がるなど、一万年前の神魔大戦の頃を除けば、初かもしれんな。

 それだけ、ルインの仮説が真の理に近く、それを受け入れた二人の神の器が智天使ケルビム級にまで急速に広がったのじゃろう」

「はあ」


 輝いていた光りが終息した。十枚の翼を持った二人の美女女神は、妖艶な微笑みを浮かべながらも、虚ろな眼差しは、何処か遠い空を見ているかのようだった。


「どうじゃな、智天使ケルビムになった気分は」

「オレが、」

「ボクが、」

「「智天使ケルビム!?」」


 二人は自分の腕や足首にある翼を見て驚いている。


「マジかよ………」

「神化なんて二千年ぶりなのに……二翼位も上がるなんて……」


「兄貴ィィィィィ!!!」

「お兄ぃぃぃさぁぁぁん!!!」


 二人の美女女神が僕に飛びついてきた。リフィテル様はまな板だから気にならないが、ファシミナ様のド級メロンはあまりにも爆弾すぎだ!グハッ!


「サンキュー、クソ兄貴ィィィ!」

「ありがとう、お兄さぁぁぁん!」


 そして二人の美女女神が僕の頬にキスをしてくれた!まさに天使のキッス!!!


「さぁてぇぇ、余興はこれぐらいでよかろう」

 

 あれ?何故かアビスメティス様のお顔が引きつっているよ?


「ルイン、特訓の再開じゃ。序でにリフィテルとファシミナも昇級祝いに、一つ指南してやろうかの」


 指をぱきポキと鳴らしている姿は、人に何かを教える雰囲気があるようにはとても見えないのは気のせいだろうか。だって、何故か背後に怒りの般若様はが見えているのだから!!!


「「「ひえぇぇぇぇぇぇぇ」」」



□□□


(作者より)

 30万PV突破しました(*^^*)

 ありがとうございます(^-^)/


 さて、第68話は物語の雰囲気の都合で、バリオン(物質)、ダークマター(暗黒物質)、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)が本来の文字と異なります。

 天使様達が使う言葉で、暗黒エネルギーとかちょっとイメージ的に合わなかったのでご了承下さい。


物語上での言葉


物質バリオン物質アーエール


暗黒物質ダークマター第五元素エーテル


暗黒エネルギーダークエネルギー聖煌神気アイテール


アーエール、エーテル、アイテールはWikipediaから引用しました。同資料ではエーテル=アイテールとなっていますが、本編ではアイテールを上位にしました。理由はエーテルが物質である説があるためです。ただし、今の宇宙論ではエーテルは在りません=よって、この作品はフィクションです!ご容赦!某○ップを狙えもエーテル宇宙論全開だったし………。https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%AB_(%E7%A5%9E%E5%AD%A6)


聖煌神気は花咲の造語です。


引き続き本作品をよろしくお願いしますm(__)m

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