第52話 流石はルイン

「しかしなあ、クソ兄貴は少しおかしいぞ!人族が、どうひっくり返っても、天使に勝てるわけ無いんだよ。どんなカラクリだよ」


 お風呂を色々な意味で無事に出た僕たちは別荘のリビングで、フレアさんが入れてくれた紅茶を飲んでいた。


 フレアさんは突然押しかけたリフィテル様について、何かを聞くわけでもなく、いつも通りに接してくれている。流石は出きるメイドさんだ。


「リフィテルの敗因は99%の油断と1%のルインの実力じゃ」

「お、お姉様!あたくしは油断などしていませんでしたわ!」

「阿呆か?ルインをただのパンゼロと侮っていた、それが全てじゃ」

「………は、はい、すみません。それで!クソ兄貴は何したんだよ!」


「えっと、少し先の未来を見て、リフィテル様が背後から僕の首を狩りに来るのが分かったので、鎌を振った瞬間に、空間転移でリフィテル様の背後に跳んだだけです」


「はぁ~?未来を見たぁ?馬鹿言ってんじゃねえよ。オレにだって見えねえし……」


 リフィテル様はチラッと隣に座るアビスメティス様を見た。


「無論、妾にも見えぬ。有り得ぬことが起きた。それがルインの1%の勝機となった訳じゃ。リフィテルよ、我らがお兄ちゃん♡は封印されし魔法、時空魔法の使い手なのじゃよ」

「じ、時空魔法だとォ!三千年前にカナンテラス様が封印した筈だ!有り得ない!」


「だから言うたであろう。有り得ぬことが起きたと。故に脳筋の貴様では想像すらできぬは当然のことじゃ」

「そ、それはつまり、あたくしがパンゼロに気を取られ過ぎていたという事ですね」

「うむ。ルインの勝機はパンゼロにあったという事じゃな」


 パンゼロの勝利。近くにお巡りさんがいなくて良かった!


♢♢♢


「……さ、流石はルインだな」


 国葬式の翌日、レミーナ様たちよりも先にフォンチェスター先生が別荘に帰ってきた。


「あたしらが留守の間に、新しい幼女を別荘に連れ込むとは!」


 開口一番で、赤い髪に赤いゴスロリドレスのリフィテル様を見て、あんぐりと大口を開けて驚くフォンチェスター先生。


「ルイン!!!」

「は、はい」

「お前という奴は!」


 怒られる!腐っているとはいえ、学院の先生だ。見た目的には年端もいかないリフィテル様を、僕が別荘に連れ込んだことに、憤りを感じても仕方がない。


「いい趣味してんな~!赤髪っに、深紅のゴスロリドレス!先生も萌えるぞ!」


 ……萌えんでいいです……。


「フレア!メティスちゃんにも、ドレスを!」


 アビスメティス様は白のブラウスに、黒のフレアースカートの出で立ちで、十分に可愛い。


「はい、奥様。こんなことも有ろうかと、既にご用意してあります」


 先ほどまでティーポットを持っていたはずのフレアさんは、いつの間にか漆黒のゴスロリドレスを手にしていた。


「如何でしょうか、アビスメティス様」


 フレアさんがアビスメティス様に片膝を立てて、ドレスを差し出す。


「ほう、妾の着物かえ。空間換装」


 漆黒のゴスロリドレスは、フレアさんの手から消え、一瞬にしてアビスメティス様がお召しになっていた。


「どうじゃなルインよ。妾は可愛いかえ?」


 空間換装か。この魔法を僕が覚えられたら、パンゼロ事件の再発防止になるな。いや………あれが出来るかな?カトレア様が戻ってきたら相談してみよう。


スパコーン!


「クソ兄貴ィ!お姉様が可愛いかって聞いてんだよ!可愛いねって速攻答えろや!ボケぇ!」


 リフィテル様がスリッパで僕の頭をはたいた。あれ?なんだっけ?


 見れば目に涙を溜めてウルウルと泣き出しそうなアビスメティス様がいた……。


「えっと、あ~、その、めちゃくちゃ可愛いです!

 流石はアビスメティス様!まるで漆黒のダイヤモンドみたいです!

 いや~リアル天使な美幼女が僕の妹だなんて、僕は幸せだな~」

「そうか!妾は可愛いか!」


 ニコニコと笑いながら、ドレスのスカートを詰まんでクルクルと回るアビスメティス様。いや、ほんまに可愛いです!


♢♢♢


「あっ!ルインがまた幼女を連れてきたのか!」


 王都からレミーナ様、エレナ様、カトレア様、リビアンさんを空間転移で別荘までの送迎をしたら、フォンチェスター先生よろしくリビアンさんが、僕を幼女誘拐犯であるかのような疑惑の目で見ている。他の皆さんの視線も冷めた視線なのは、きっと気のせいだろう。


「え、え~と、皆さんに紹介します。死を司る主天使キュリオスのリフィテル様です」

「「「主天使キュリオス?」」」


 そう、人族は主天使を知らない。六翼位より上は熾天使とされているからだ。


「はい。六翼位の位みたいです」

「ルイン様?六翼位からは熾天使セラフィム様とされています。聖典にも、六翼の熾天使ファシミナ様が降臨し、神祖コーネリア様に神の奇跡の力を授けるお話があります」

「なるほどな。そいつが間違いの始まりっぽいな」


 フォンチェスター先生は何やら得心がいったようだ。


「聖教会が崇める神は大神カナンテラスと、聖天使ファシミナ、大天使ミカエラの三神だ。

 聖教会が崇める天使の翼位は最高位である必要があるとか何とかで、六翼位の天使引っくるめて十二熾天使として教えを広めたっぽいな」

「では聖天使ファシミナ様は熾天使セラフィム様ではなく、主天使キュリオス様という事ですか?」


「あ~、違えぞ。ファシミナは力天使デュナメイスだ。人族的に言やあ、生を司る神が力天使デュナメイスで、死を司る神がオレら主天使キュリオスって事だな

 しっかし、そのコーネリアとか言う奴は、お姉様とオレらを同列にするたあ、ふてえ野郎だな。そいつの魂を見つけたら説教部屋確定だな」


 伝説の神祖コーネリアの魂に腹を立てるリフィテル様なんどけど、何故かレミーナ様を見つけたら、にんまりと笑った。


「なんだよ、目の前にいんじゃん」

「はいっ?私ですか?」

「へえ~。綺麗な魂の色してんじゃん。神祖と王家の魂が融合したのか……。まっ!説教部屋確定だけどな!」

「えっ!?私がですか!?」

「いっちょ、モンでやるか!」

「ヒッ!」


 脳筋主天使のリフィテル様は、逃げるレミーナ様の首根っこを捕まえると、空間転移で消えてしまったよ?


 前世の魂のせいで説教されてしまうレミーナ様……。

 前世の記憶のせいで変態ロリコン色魔呼ばわりされた僕……。


 前世の行いって……恐しッ!!!



□□□□□□□□□□□□□


脱線エピソードが続いてしまいました。すみません~(。>ω<。)


次話から本筋に復帰予定です。


引き続きモブ転をよろしくお願いします(*^^*)

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