第51話 一瞬の勝負
「貴様はリフィテル!」
「んだぁ!てめえ……ええエエ!?」
裸の僕に馬乗りで跨がる、真っ赤な髪に、真っ赤なゴスロリドレスの美幼女熾天使リフィテル様。
僕が裸だからなのか、美幼女が馬乗りに跨がっているからなのか、はたまたその両方のせいなのか、僕の心臓はドギマギしていた。
「お姉様ぁぁぁ!」
「むぎゃっ」
僕の顔を容赦なく踏み付けて、アビスメティス様の元へ走っていくリフィテル様。
お姉様?
「お姉様ぁぁぁ!」
「むぎゃっ」
アビスメティス様の胸に飛び込んだリフィテル様は、アビスメティス様がいつの間にか持っていた扇子ではたき落とされた。
「誰がお姉様じゃ!俺たち脳筋族の妹など持った覚えなどないわ!」
「そ、そんなぁ、リフィテルは三千六百二十七年八か月十三日と二十一時間四十三分三十九秒の時を、お姉様にまた会える日を信じて、この時を心待ちにしていましたのに!」
細かい!そして長い!人間だったら400回は人生が終わってますね。
「知らんわ!それに妾の兄妹はルインだけじゃ!ネッ、お兄ちゃん♡」
「お……お兄ちゃん……だと」
ギロリッ!
ヒッ!?
悪鬼の様な形相で僕を睨み付けるリフィテル様。
「貴様ァァァッ!貴様がオレの兄貴だなんて、オレは絶対に認めないからなッ!」
はい?僕もゴスロリ幼女を妹にした記憶は有りませんが?
「ならば勝負じゃな。しかし人族と天使では余りにも格が違い過ぎるか」
そりゃそうだ 二翼位の
そしてレベルの最大が100なんだから、それ以上の翼位の天使は、人知の及ばぬ存在ってことになる。
「そ、そうですよ!熾天使のリフィテル様に敵う筈ないじゃないですか!」
「ふむ。人族は六翼位より上を熾天使と呼ぶが、それは勘違いじゃな。
安心せい。リフィテルは六翼位の天使、
いや、アビスメティス様と格が違くても、僕とも格が違いますよね?
「お姉様のお頼みならば仕方ありませんね。
オラァ!そこのパンゼロォ!オレに指一本でも触ればパンゼロの勝ちにしてやるよ!
オレがパンゼロの首を刈ればオレの勝ちだ!行くぞ!」
確かに僕が指一本触れるだけならば、勝利条件が温いように聞こえるけど、僕の負け条件が僕の首ってリスクMAXですよね?
「ルイン!力を使うのじゃ!一瞬で決めよ!」
相手は、熾天使改め
なんてモノは僕には使えない。ならば!
リフィテル様の姿が消える。空間転移だ!
「時空視!」
時魔法の時空視は未来を見る魔法だ。時空魔法初級編の僕では僅かな先しか見えないけど、それで十分。
「此処だァ!テレポート!」
空間転移で僕の姿が消えた直後に、僕がいた場所に
「何ィィィ!」
「終わりですよ」
僕の背後に跳んできたリフィテル様の背後に、僕は跳躍した。そして肩をポンと叩く。いや、叩いたつもりが、人差し指だけが、何故だか伸びてた。
「ひはまあァ!」
リフィテル様の柔らかく可愛いほっぺたに僕の人差し指が刺さっちゃた。
「うむ!流石は妾のお兄ちゃん♡じゃ!見事じゃったぞルイン!」
「アビスメティス様のアドバイスのお陰です」
あの時、背後を取られても、不可視の壁が守ってくれると信じて、空間障壁を使おうとしていた。
しかし、相手は六翼位の
そこにアビスメティス様の『一瞬』のアドバイスだ。背後に来るリフィテル様を振り向きざまのカウンターなどという、かっこいい事が出来ないならば、未来観測が最良の一手だった。
「オ、オレが……負けた?パンゼロの人間に……」
は~い!そこはパンゼロ関係ないと思いま~す!
「素直に負けを認めるのじゃリフィテル。ルインをホレ、お兄ちゃん♡と呼ぶがよい」
「クッ……」
えっ!?『クッ』ってまさかのクッ殺!?
『クッ……クッ……クソ兄貴ィ!パンゼロ変態ロリコン色魔のクソ兄貴ィ!このオレが妹になってやるから覚悟しなァ!」
パンゼロは認めるけど、変態ロリコン色魔って、何で僕の前世を知ってるの!?って僕の前世は変態ロリコン色魔かい!!!
「へ、へ、へ……っクション!」
夏とはいえ、夜の湖畔に吹く風は少し肌寒い。パンゼロは流石に厳しい。
「さて、今までの事は全てお湯に流すとしようかの」
パンと手を打ち合わせたアビスメティス様。その瞬間、僕たちは空間転移をして、ドボ~ンと岩風呂の温泉に落ちた。
「わっぷ。いきなり過ぎますよアビスメティス様ぁ」
「お兄ちゃん♡が風邪を引かぬよう、妹としてのサービスじゃ」
「サービスって…………」
僕はもともとが裸で、アビスメティス様はあの一瞬で、スク水に空間換装していて、リフィテル様は赤いゴスロリドレスは……着ていなくて…………。あっ、鼻血でそう。
「ぎゃあああああ!変態ロリコン色魔の最低ゲス兄貴ィィィ!何見てんだァ!殺すぞ!ゴラア!」
サービスありしゃす!
アビスメティス様!!!
(by 前世の記憶)
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