第48話 怪盗RED参上!
「ルイン、兄さんを復活させるだけでは、計画が失敗する可能性がある」
あれは、僕たちがデュラハン討伐に向かう前のことだった。公爵家で夕食をご馳走になっていた時のこと、公爵様がそう告げられた。
「叔父様、それはどういう意味ですか?」
「政治は国王だけでは成り立っていない」
皆が頷く。それぐらいの事は僕たち学院生でも理解している。
「国王が崩御した後に何が起こるかな?」
「王位継承戦ですか?」
「それも有るね。他には?」
「新国王が決まりますね」
と、レミーナ様。
「新政権も出来ます」
と、カトレア様。
「他には?」
「えっと、えっと、お祭り!」
と、無理くりに答えたリビアンさん。
「そうだね。それと国王陛下の国葬も行われるよ」
「「「あ、そ、そうでした…」」」
ふふふと、優しく笑う公爵様。
「それらの事には、ある重要な物が必要なんだが、分かるかね?」
う~ん、なんだろう?国王様と答えたいが、国葬式では当然ながら国王様はいないから、国王様は違う。
「ルインは分かっていると思ったけどね」
「僕がですか?」
「前に、王家に必要なものを聞いたときのことを思いだしてごらん」
あっ!?
「「
僕とカトレア様の声がハモった。
「漸く正解だ。大きな
国葬式は王妃と司教のサインでも執り行えるが、正式な公文書ではないため、国王復活の時にひっくり返すことは可能だ。
しかし、新国王の戴冠式や、新政権発足の書類に
アホの第2王子ならともかく、狡猾な第1王子相手ならまず無理だろうね」
なるほど合点がいった。
「つまり、僕たちは
僕の言葉にみんなが頷いた。
♢♢♢
法務局を囲む暗い塀の外に僕は宮殿から跳んできた。
建物の中を索敵魔法で調べると、公爵様が言ったように、保管されている部屋には2人の警備兵がいるし、要所にも警備兵がいる。
「さて、如何したものかな」
幾つか手段はあるけど、今回は僕が悪者なので、警備兵の人を傷つけたくはない。
「テレポート」
♢♢♢
警備兵とはいえ、四六時中緊張して警備をしている訳ではない。その部屋に僕が跳んできたことに、椅子に腰掛けている警備兵の2人は気がついていない。
扉を開けて入った訳でもないし、まして
「空間障壁」
警備兵2人が座っているデスクや椅子ごと、空間障壁魔法による不可視の壁で囲い込む。
「誰だキサマぁ!」
「怪しい奴め!」
黒装束忍者衣装の僕に気がついた警備兵は椅子から立ち上がり抜刀した。
「「ウオオオッ!」」
2人して僕に向かってくるが、
ゴン!
2人して不可視の壁に激突した。少しは怪我をしたかもしれないけれど、許して下さいね。
「さて、
この部屋には大層ご立派な金庫が置かれている。多分難解な施錠魔法がかけられているのだろうけれど……。
「空間開口」
空間歪曲魔法の簡単な応用魔法の空間開口。歪んだ空間を広げるだけで、壁などに穴を開けられる。もちろん魔法を解除すれば、傷一つない壁に戻る。
僕は穴に手を入れて
ドンッドンッと空間障壁の見えない壁を叩く警備兵2人。
「キサマあ!それが何か分かっているのかァ!」
「もちろん知ってます、
そう言って、僕は胸に手を入れ、更に異空間収納に
「キサマ何者だ!」
げっ!?それくる!腐女子先生からは、何者かと問われた時の余計なアドバイスを貰っている。
「か…怪盗だ!」
「怪盗REDだと!?」
「絶対にキサマを捕らえてやるからなァ!」
「それでは、僕はこれで失礼します」
僕はやらせのスクロールを胸からだして、「テレポート」と読み上げながら、空間転移魔法で別荘へと帰った。
国王陛下のご遺体誘拐事件及び、国璽窃盗事件の犯人である怪盗REDの名は、宮殿内と司法局内で騒がれたが、事件を明るみに出さない当局の判断により、市中の人々が怪盗REDの名を知るに至らず、無駄に怪盗REDの名で騒ぎを起こそうとした腐女子先生のくだらない野望はここに潰えたのである。
めでたし、めでたし。
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