第46話 フレアさんの実力!?
ゴーン……ゴーン……
夕方の王都には国王様崩御を伝える悲報の鐘が鳴っていた。
「最低です!最低です!最低最悪です!」
授業が終わった放課後、フォンチェスター先生の研究室に集まっていた僕たち。教室では静かにしていたカトレア様が憤りを爆発させていた。
「あたしも話は聞いたよ。最低なバカ王子だと思っていたが、ここまでバカだとは思わなかったよ」
既にアーベルト様の話は学院内に知れ渡り、フォンチェスター先生も憤慨している。
そのアーベルト様は20人ちかい騎士の人達に囲まれて帰っていった。国王様がお亡くなりになった今、第1王子から、より多くの刺客が送り込まれてくる事を、流石のアーベルト様でも理解しているみたいだ。
「まあ、あのバカや、実力の見合わない野望好きのルークを王位につけない為にルイン、頼んだぞ」
「はい」
「たくっ、エナメラがさっさと死んじまったからこうなったのか、生きてても変わらなかったのか……」
エナメラ様とは亡くなられた第1王妃様の名前だ。
「いや、生きてりゃサリーナだけは助けられた筈だ……」
第1王女のサリーナ様は、第1王子の駒として使われ、ガスバルト帝国の第3皇子の元に嫁いでいる。
帝国の第3皇子は醜い容姿と異常な性格から帝国内の貴族はおろか、帝国と懇意になりたい友好国からも、嫁ぐ者はいなかった。
第3皇子はサリーナ様を含め、4度の婚姻を結んでいる。1人目と2人目の妻になった方は行方不明となり、3度目の妻となった女性は、偶々掃除のため部屋に訪れたメイドが、妻であったであろう肉を、第3皇子が咀嚼している現場を見てしまった。
そしてその異常性が明るみに出たために、誰も嫁ぐことは無くなったのだが、それを第1王子のルーク様は機宜と捉え、サリーナ様を嫁がせてしまったのだ。
ルーク様は嫁ぐ際のサリーナ様に「あの豚は愛する女性を食するらしい。だから愛されなければいいのですよ。簡単なことです。姉様ならばやれますよ」と軽く言って送り出したらしい。
「サリーナ様ですか?」
「ゲス皇子に嫁いだ、サリーナの消息が分からなくなったと、間者からの報告があったらしい」
大きく目を見開くだけに留まった僕に対して、カトレア様はお腹から込み上げるものを押さえきれずに嘔吐してしまった。つまりはそういう結末を迎えてしまったのだろう。
「そんなのは分かりきっていた事だ。自分の姉でさえ、自らの、それも取るに足らない野望とやらに、手駒として生贄に出す野郎だ。
アイツが国王になったら、エレナもレミーナも何をさせられるか分かったもんじゃない」
「僕たちの計画に失敗は許されませんね」
「ああ、そうだ」
国王様も草葉の陰で見守っている筈だ。
「スターシアからの連絡はまだ来ないかい?」
「まだアレから数時間ですからお忙しいことと思いますが」
レミーナ様のお母様である第2王妃のスターシア様には試作型の通信機を持たせている。相方は勿論僕が持っているが、連絡はまだ来ない。
早いとこ宮殿に行きたいところなんだけど、流石に今は向こうもバタバタしているから仕方がない。
「しかし、あの生真面目なスターシアがRED同盟に入るとはね~」
「スターシア様曰く、公爵夫人の勝手にはさせない的なことを仰ってましたよ」
「ちっ、あの腹黒女め」
「「は、腹黒ぉ!?」」
レミーナ様のお母様はお妃然とされた立派な方だった。どっかの腐食公爵夫人とは比べようもない。
「アイツは昔から計算高くてね、裏で影に隠れてネチネチやるのが好きなんだよ」
どうやら公爵夫人と王妃様は結構な友人関係のようだけど、突っ込んで聞くのは怖い気がする。うん!これ以上聞くのはやめておこう!
「僕らも別荘に戻りましょうか」
「そうだね。フレア達が夕食を用意している筈だから、ルインは食べちゃった方がいいわね」
「では、帰ります」
僕は手を出して、カトレア様とフォンチェスター先生が手を取る。
「テレポート」
♢♢♢
別荘に帰ってみると夕食はまだ出来ていなかった。原因はレミーナ様、リビアンさん、そしてアビスメティス様たちによる妨害工作、もとい料理のお手伝いだった。
「ル、ルイン様、もう帰って来たのですか」
綺麗な金色の髪にケチャップや白い粉を付けまくっているレミーナ様……。
「ルイン、お帰り~。マヤちゃんに料理を教わったんだけどな~」
エプロンに幾何学模様の染みを付けているリビアンさん。マヤちゃんは幼女ですよね!幼女に教わっているんですか…。
「クッキー作りは奥が深いのう。数千年の時を生きた妾をもってしても手子摺るとは」
顔が小麦粉やらバターやらで、可愛い顔が汚れているアビスメティス様。あなた、数千年間何してたんですか?
「はい、皆さんタイムアップです。後は私たちでやりますので、お風呂で汚れを落としてきてください」
パンパンと手を叩いて、妨害工作の終了を告げるフレアさん。
「妾は今日もルインと入るのじゃ」
やめてください。また、皆さんに怒られます。
「ルイン様、本日はこんな事もあろうかと、水着をご用意いたしました」
何処からともなく、フレアさんは小さなスク水を取り出した。胸にはマジックで『メティスちゃん』と書かれている……。
「ようやったフレアよ!褒めてつかわすのじゃ」
笑顔のアビスメティス様を、もの欲しそうな目で見るレミーナ様……。まさか!?
「ご安心ください皆様。こんな事もあろうかと、皆様の分もご用意して有ります」
「「「おおおおおおおおお!」」」
何それ?まあ水着混浴なら有りなのかな?
♢♢♢
などと思っていた頃も有りました!
別荘の岩風呂に可愛いい水着で入る美少女たち。うん、まあ、とても目に優しいので、これはヨシとしよう。
「時にフレアさんよ。何故に僕の水着は無いのかな?」
大きなメロンがはみ出している水着を着ているフレアさん。胸の谷間に目がいってしまうのは、置いといて。
「ご安心くださいルイン様。TPOは弁えております」
「タオル1枚じゃ、安心出来ないんですけど!」
「そこは皆様も弁えておりますので、多少元気になられても問題ありません」
「いやいや、問題でしょ!」
「では私が鎮めさせて頂きます(ペロリ)」
「け、結構です!間に合ってます!」
僕は慌てて湯舟に潜った。薄く濁った温泉で見えたりはしないだろう。フレアさん恐し!
♢♢♢
岩風呂の淵に沿って歩き、レミーナ様の隣に腰を下ろした。
「大丈夫ですか、レミーナ様」
「……はい。皆さんが私に元気をくれるので」
ニコッと微笑むレミーナ様。国王様がお亡くなりになり、心寂しいはずなのに、笑顔で笑いかけてくれる。この笑顔を守る為に僕は……。
「レミーナ様のために、今日の計画は必ず成功させます!」
「はい、ルイン様!」
僕たち2人は見つめあって微笑んだ。
僕はあの日、レミーナ様に約束をした。レミーナ様の、そしてこの国の未来を守ると。
さあ!この
「あ、あの……ルイン様……」
「はい?」
「む、胸をそんなに見られると、恥ずかしいのですが……」
僕はレミーナ様の胸の谷間を見つめながら気合いを入れていたみたいだよ!?
「す、すみません……バフッ!?」
目をそらして横を向いた先には巨大メロンが待ち構えていて、見事に挟まった。
「ホガ、モゴモゴ、ムニュ」
「やはりルイン様には私の介抱で解放致しましょうか(ペロリ)」
「モゴモゴ、ブはぁ!だ、大丈夫です、フレアさん!」
何とか巨大メロンから、脱出できた。
「こらあ、フレア!お前のは凶器なんだから、取り扱い注意だ!」
岩風呂の縁に立つ公爵夫人。エレナ様のお母様だけにビキニ姿も非常に美しい。
「なるほど、ルインは大きいのが好きなようじゃな」
「ルイン!大きい小さいなんて、小っちゃい男の言うことだよ!ね、メティスちゃん!」
「ふむ、確かにリビアンは小さいのお」
「め、メティスちゃんよりはあ、大きいよ!」
「ほほう、小娘、妾と競おうてか。図に乗る出ないわ小娘え!妾は脱いだら凄いのじゃあああ!!!」
そしてピカーッと光ったアビスメティス様……。おい!
そこには湯面に浮かぶ、十二翼の美女神バージョンのアビスメティス様がいた。
薄い衣のような物でポイントは隠されているが、それは至高の造形であった。
「アワワワワ、まじで熾天使……。メ、メティスちゃん……パねえ~」
「…………勝った」
「…………負けた」
流石の腐女子先生も、本物の熾天使っていうか、魔神様を見てビビっている。うん、ある意味真面な反応だ。
フレアさん?リビアンさん?熾天使様相手に勝った、負けたって何を…………!?
「た、確かにフレアさんの勝ちだ……」
それ程にフレアさんのメロンは大きかった。
……そして、リビアンさんが湖に向かって吼えた。
「メーテルさぁ~ん!みんながいぢめるよおおお~~~」
……そう言われると、メーテルさんは小さかったか?
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