第39話 拠点
ミストーレの街近郊に設営された野営地を出たのが、予定より少し遅れて9時を回っていた。女性陣の寝坊ってのもあるが、レミーナ様が軍団の各部隊の隊長さんや兵士さん達にお言葉をかけていたためだ。
僕たちが馬に乗って軍団を離れる時は沢山の人達が大きく手を振ってくれていた。
エレナ様達は事後処理で暫くは王都には戻れないだろう。実のところ、レミーナ様とリビアンさんは軍団を今日出立して、王都に着くのは5日後にならなければならない。
そして、国王陛下が崩御するのが、今日を入れて3日後だ。つまり、国王崩御の2日後にレミーナ様が、崩御の知らせを受けたエレナ様が早くても5日後に王都に着く流れになる。
しかし僕とレミーナ様、リビアンさんは既に公爵様の館へと、空間転移魔法で帰り着いていた。
♢♢♢
「お疲れルイン。レミーナもリビアンもエレナを助けてくれて感謝するよ」
僕は空間転移先の座標を、公爵様の館の一部屋、応接室にしてテレポートをしてきた。この場所は公爵夫人と話し合っていたので、人払いが出来ている。僕はともかくとして、レミーナ様の姿を見られるのは不味い。
「別荘の方は準備が出来ているよ。あたしとルインが先に行って、後からルインが迎えに来るから、暫くここで待っていな」
「はい。心得ていますわ叔母様」
公爵夫人には僕たちの活動拠点を用意して貰っていた。これから僕たちが行う活動は、見つかれば死刑にさえ成り得る大罪だ。人目に着くと色々と不味いんだよね。
「夕方にはカトレアも来る。通信機も幾つか拵えてあるみたいだよ」
「流石はカトレア様だ」
カトレア様が着くる試作型の通信機は2個でワンセットの糸電話仕様で、1人としか通信機出来ない。僕がレミーナ様とエレナ様とに通信機で話しがしたいなら、レミーナ様用に1セット、エレナ様用に1セットを持っていないといけない。今朝エレナ様に渡した通信機は、現在はカトレア様が持っている通信機と繋がっている。
通信機の数が揃えば亜空間を固定座標にして、オープン回線での全員通話は可能な筈だから、そこら辺は追々カトレア様と煮詰めていこう。
この理論は僕の作るマジックバッグを応用したものだ。僕は現在2個のマジックバッグを持っている。1つは学生カバン、もう1つはリュックサックだ。更に何処でもコンタクト出来る亜空間収納があるが、それら3つの亜空間座標は同じ場所になっている。
つまり学生カバンで入れた物を、リュックサックから取り出し可能ってことだ。これは世に出回っている古代魔法文明のマジックバッグでは出来ない仕様だろう!エッヘン!
てな訳で僕も今回の作戦や今後の活動に向けて、マジックバッグ的な物を量産しないといけない。僕は異空間収納が使えるから、マジックバッグが無くても困らないけれど、レミーナ様達はそうもいかないからね。
♢♢♢
「へえ、湖の見える別荘ですか」
「中々に良い景観じゃな」
僕とアビスメティス様は、フォンチェスター先生と共に、公爵家の馬車に半日揺られ、王都の郊外にある湖の別荘地に来ていた。一度来てしまえば、座標特定出来るので、後は空間転移で行ったり来たり出来る。
公爵家の別荘は建物周辺の土地も広く押さえてあるため、他の人の別荘は見当たらない。
「ふっふ~ん、我が家自慢の別荘だからね。ドワーフの職人に頼んで地下数千メートルからの温泉も湧き出ているんだ。後でみんなで入るといいさ」
「温泉ですか!凄い!是非ともお願いします!」
ん?みんなで?えっ!?
「先生、流石にみんなでは不味いですよ!みんなが来る前に僕1人で入ります」
「妾も一緒に入るぞ」
はい?アビスメティス様も?あれ?10歳以下の子との混浴はオッケーなんだっけ?
「ネッ、お兄ちゃん♡」
兄弟なら更にヨシ?いやいや!ノーだ!前世の僕に騙されるな僕!見るだけでもアウトだ馬鹿野郎ッ!!!
「メティスちゃんはレミーナ様達とお願いします」
「チッ」
♢♢♢
「この別荘にいる使用人は信頼のおける者達で口も堅い。安心して接してくれ」
「それは助かります」
「紹介して行う。メイド長のフレアだ」
「よろしくお願いいたします。ルイン様、メティス様」
フレアさんはザ・メイドって感じの綺麗なお姉さんだ。
「この館にはフレア含めて5人のメイドがいるが、コイツらは何でも出来るから、まあ大丈夫だろう」
「はい。お食事の手配から、掃除、洗濯、夜のお伽までご遠慮なくお申し付け下さい」
夜のお伽は大丈夫ですよ!
「それと魔物が出てもオーガ程度なら難なく撃退してくれるさ」
しかもバトルメイドさん達でした。
「魔物が出たら、直ぐにお声かけ下さい」
「フレア、ルインとエレナ、それにリビアンはお前たちより強いから、他のヤツらを守ってやってくれ」
「えっ!?エレナ様は分かりますが、ルイン様もお強いのですか?」
「ルインは桁違いだよ。先日も地竜やら、ドラゴンゾンビやらを単独撃破してきたらしいってさ」
「……………素敵(ペロリ)」
あれ?何やら悪寒が……。風邪かな?うん!温泉にでも浸かって今日は少しゆっくりしよう!そうしよう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます