第38話 RED同盟の決意

「ルインは1人で抱える癖、絶対良くないよ!」

「ルイン君、私たちはルイン君にとって何ですか!」

「ルイン様の責任では有りません!もしそれを責任とするならば……」


「「「それはRED同盟全員の責任です!!!」」」


「……全員の責任?でも僕があの時に死んでいれば……」


「私はデュラハンによって呪われていましたね」

「アーベルトに傅く未来なら死んだ方がましですわ!」

「カトレア様も絶対ルインに感謝しているよ!」


 レミーナ様…、エレナ様…、リビアンさん………。あれ?涙が………。


「僕は……生きててよかったのかな……」

「「「当たり前です!!!」」」


 目頭が熱くて涙が止まらない……。僕はボッチで、いつも1人で、そんな自分が生き延びたことで、沢山の人が命を失う。ならば過去に遡って僕が死ねば、沢山の人達の命が救われる………、でもその時は…………。


 レミーナ様が僕の傍らに寄り、優しい手で僕の頬に流れる涙を拭ってくれる。


「ルイン様。ルイン様は仰いましたよ。私達の未来を、この国の未来を守ると。私達が楽しく笑って暮らせる国にしたいと。

 私は……私達はルイン様と共に歩みます。それが茨の道でも、火焔の山でも、獄氷の海でも、私達はルイン様と共に有りましょう」


 そしてレミーナ様の柔らかい唇が僕の唇に重なった………。


「私は例え王家の娘であっても、ルイン様と共に歩むことを此処に誓いますわ!」


「ルイン君……。私の運命を変えてくれたのはルイン君ですよ。その責任だけはルイン君が取って下さい……」


 エレナ様も僕に唇を重ねた……。


「ルインと出会えてよかった……。私はレミーナ様の剣だけど……、共に歩むならルインがいいな……」


 リビアンさんも優しく僕にキスをしてくれる。


「「私達もルイン殿とこの国を守ります」」

 

 ノーラさんに、メーテルさんまでが僕の頬にキスをしてくれた……。


 あまりの出来事に僕は放心状態だ……。


「ルインよ、女子おなごから接吻をする決意は、如何な朴念仁のお主でも分かるじゃろう」


「……は、はい」


「ならばもう迷うな!、おとこが進むと決めた道、女子おなごが付き従うと決めた道じゃ!」


「はい!!!」


 そしてアビスメティス様が右手が掲げた。


「我ら、生まれし日、生まれた時、生まれた場所は違えども、RED同盟の契りを結びしからは!」

「「「ルインと永遠に、何処までも、今、ここに誓う!!!オオオオオオオオオ!!!」」」


 あれ?

 何でアビスメティス様が音頭取れちゃうの?


 我らが?

 アビスメティス様もRED同盟に入ってたの?




 ……………僕はもう1人じゃない。

 僕を信じてくれる人達がいる。

 僕を愛してくれる人達おんなのこがいる。


 僕はもう迷わないよ。みんなの未来を僕は絶対に守ってみせる。


「決意が固まった顔じゃな」

「はい!みんなの未来を守ってみせます!」

「良い顔じゃ。ならばその決意を早速、妾に見せて貰おう」


 アビスメティス様は手を突っ込んでいた紙袋を逆さまにしてぷらぷらと振った。


「クッキーも、ラスクもうなってしもうた。今すぐにうて参れ。ルインよ!妾の未来を守るのじゃあ!」

「そんな未来は守りませんッ!!!」


♢♢♢


 僕達の結束も固まり、アビスメティス様のお菓子はリビアンさんが用意していたお茶漬けで難を逃れ、僕とレミーナ様、リビアンさんが明日の早朝に王都に戻ることも決まり、色々とあった1日が終わろうとしていた。


「それでは皆さん、おやすみなさい」

「「「おやすみなさ~い」」」


 テント中央の広間から、割り当てらた僕の個室に、僕とアビスメティス様が向かおうとしたら、


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください」


 レミーナ様に呼び止められた?まだ話すことあったっけ?


「アビ……メティスちゃん!メティスちゃんは何方に行かれるのですか?」

「はて?異なことをいう。もちろんお兄ちゃん♡と寝るのだが?」

「「「!?」」」


「そ、それはちょっと……」

「そ、そうですよ」

「さ、流石に熾天使様でも間違いがあったら……」


 えっ!?間違い?僕が?黒髪美幼女のアビスメティス様と?


「アハハハ!それは流石に無いですよ。僕は人で、メティスちゃんは天使なんですから」

「そうじゃぞ。仮に間違いがあっても大丈夫じゃ。翼位の低い天使には人族から生まれた者もおる。妾が天使を産んだときは、天にしっかりと送り届けることを約束するのじゃ!」


 のじゃ!じゃないですよね!ほら、レミーナ様達も、


「そ、それはダメです~」

「メティスちゃんはノーラ達と一緒の部屋でどうですか?」

「な、なんならあたしと一緒でも!」


「お兄ちゃ~ん!みんなが妾をいぢめるのじゃあぁ~」

「いや、至って真面な意見だと思いますよ」

「ならなにかい!お主は妾と寝たくないと申すか!」


 えっ!?本当のところ、どうなの?いやいやイエスでしょ!?イエスだよね!前世の記憶に抗え僕ッ!


「えっと、やはり世間的に不味いかと……」

「つまり俗世など捨てれば、妾と寝たいということじゃな」


 クッ!流石は魔族の魔神だ!痒いところに手が届く!いや、そうじゃない。痛いところをついてくる!


「ルイン様!な、な、なら、私と寝ましょうぅ!」


 はい?レミーナ様、何言っちゃってるの?


「わわわ、私だって間違いの4つや5つ大丈夫ですう!バッチ来いですうぅ~~~」


 レミーナ様の目がぐるぐると回っている。これ、アカンやつだわ。


「れ、レミーナ、落ち着きなさい!メティスちゃん、女の子みんなで寝ましょう!仕切り布を取れば部屋は繋がりますから!そうしましょう!」

「うむ、それも良いな。皆からルインの話も聞けそうじゃ」


 エレナ様の機転で、女の子全員でのパジャマパーティーで落ち着いた。


 よかった、よかった。


 ………………。


♢♢♢


 僕は仕切り布の向こうで話す女の子達の会話が気になり、なかなか寝付けなかった。


 女の子達の話は一向に終わる気配もなく、テレポートやら何やらで疲れていた僕は、知らぬ間に眠りについた。


 そして朝……頭が痛い……。


 ガリガリ


「アビスメティス様!僕の頭を食べないで下さい!」

「なんじゃルインか?妾はお腹がぺこぺこなのじゃ」


 深淵の胃を持つ堕天使。この堕天使って実は暴食の悪魔グラトニーなんじゃなかろうか?


「だからって僕の頭を囓らないでください」


 僕はベッドから起き上がり、頭に齧りついているアビスメティス様を引っ剥がし、小脇に抱えてテント中央の広間に行った。


 いつもならノーラさん達が朝食の準備をしている時間だけど姿が見えない。昨夜は遅くまで話し込んでいたみたいだから、今日は寝坊かな?


「ルインよ!妾は腹が空いているのだぞ」

「はいはい。ちょっと待っていて下さいね」


 僕は異空間収納から以前に買っておいた昼食用のコッペパンを出して、アビスメティス様に渡した。


「なんじゃ?揚げパンでは無いのか?」

「それはコッペパンです」


 ブツブツと文句を言いながらアビスメティス様はコッペパンを囓っている。その間に僕は自分が使っていた個室の整理をする。今日は朝食を食べたら王都に帰る。ベッド等はさっさと異空間収納にしまってしまおう。


 しばらくしてノーラさんとメーテルさん、リビアンさんが起きてきた。


「おはようございますルイン殿」

「直ぐに朝食の支度をします!」

「メティスちゃん、早起きだね」

「妾は1年や2年は別に寝ずとも平気じゃからな」


 さ、流石は数千年を生きる天使だ。人間の1日の感覚が360日ズレているよ。食欲は鼠の如しだけど……。


「へえ~、天使様達は寝なくても大丈夫なんですね。あたしなんか7日間徹夜したらクラクラですよ」


 いや、リビアンさん、7徹も凄いですよね!?


「天界の天使共は年中無給の24時間労働じゃからな」


 年中無給って何?給与無しの24時間労働なの!?めっちゃブラックやん!天国は地獄か!


「その点では堕天は良いぞ!毎日が日曜日じゃからな!」


 それも駄目なヤツですね!


 やや暫くして、レミーナ様達も起きてきた。朝食を済ませた後に、エレナ様と今後の話と、僕が持っていた通信機を渡して、僕とレミーナ様、リビアンさん、忘れちゃいけないアビスメティス様を連れて、僕達は王都への帰路についた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る