第34話 クッキーを食べに行きました
「エレナは無事みたいだな」
応援室に通された僕。応援室には僕と公爵様、公爵夫人の3人だけだ。アビスメティス様とマヤちゃんは別室でクッキーを頂いている。
「はい。エレナ様は見事にデュラハンを討伐しました。街のアンデットの掃討も終わりましたので、予定より早く帰ってこれそうです」
「ふう」と安堵の息を吐く公爵様。デュラハンに呪われる話しをしていただけに、心配していたのだろう。
「ルインがついていたんだから、あたしは心配していなかったよ」
「あ、いえ、僕は街にいたドラゴンゾンビの相手をしていたので、粗方退治したのはエレナ様達です」
デュラハン退治で僕がしたことはチャリオットを引っくり返したぐらいだからね。
「「ドラゴンゾンビィィィ!!!」」
「たまたま偶然にドラゴンゾンビがいたんです」
「いやいや!SS級の魔物がたまたまいないだろ!」
アビスメティス様が暇して連れてきたとは言えない。言えやしないよね!
「まあ、ドラゴンゾンビは僕が退治したので、大事にはなりませんでした」
「いやいや、ドラゴンゾンビだぞ!?絶対魔法耐性が有るだろ!」
フォンチェスター先生も間違った知識を持っていた。まあ、遭遇率がめっちゃ稀な魔物だ。僕みたいに前世の記憶で攻略本の知識があることがおかしいのである。
「ドラゴンゾンビは4大魔法に強い耐性を持っていますが、光属性魔法、闇属性魔法、それに僕の時空魔法は効きますよ」
「まあ、ルインの魔法は別格として、光属性に闇属性か。確かに何方もオールマイティっちゃあ、オールマイティだからな。なるほどな」
ふむふむと公爵夫人は頷いている。
「アンデットの討伐も完了したというのも本当かい?予定よりもだいぶ早いようだが」
「はい。デュラハンを討伐した翌日の朝には全てのアンデットが消えていました」
不敬ながらも僕は公爵様に嘘をついた。アビスメティス様のことはまだ話せない。アビスメティス様は魔族の神様だ。魔神が王都にいることが世間に広まればパニック映画さながらに大事件が起きかねない。エレナ様と報告書をどう作るかは要相談だな。
「ふむ、デュラハンの死と何か関係があるのだろうか?」
今はそう思って貰って構わない。アビスメティス様は暫くは僕の妹設定にして行う。って言うかアビスメティス様は魔王領に帰ってくれないだろか?
「僕からもいいですか?カトレア様を襲ったヤツらはどうなりましたか?」
あの事件からまだ3日しか経っていないけれど、何か進展があったか気になる。
「アイツらか」
あの日僕は、捕まえた暴漢達を公爵夫人に引き渡してある。
「アイツらか。暗示魔法で自白させてみたが、ルインが言うほどの情報は得られなかった。今は衛兵隊に引き渡してあるよ」
「裏が取れなかったってことですか?」
裏とは伯爵令嬢のメリッサ様のことだ。この事件の首謀者はビスコール男爵家である。ニーチェ様のご実家だが、ニーチェ様は関与していない。裏で手を引いたのがメリッサ様ってことに、僕の前世の記憶ではなっている。
「ああ、メリッサのことは一切口から出てこなかった」
「カトレア様は学院には通われているのですか?」
あの事件の後から、カトレア様から通信機を使った連絡は来ていない。僕も慌ただしい数日だったため、連絡を取っていない。
「カトレアは来てるよ。来ていないのはニーチェだ。昨日から実家に帰っている」
王都から男爵領までは馬車でも数日かかる。暫くはニーチェ様は学院をお休みになる。メリッサ様の作戦は成功なのだろうけれど、カトレア様を危険にさらせた事は赦せない!
「メリッサ様は?」
「アイツはいつも通りにバカ王子といちゃいちゃしているよ。あの事件の素振りさえも見せやしない」
「………そうですか」
「それはそうと、例のモノの場所が分かったよ」
公爵様が話しの流れを変えた。そうだった。僕たちには余り時間が無い。
「いけそうですか?」
「ああ、ルインなら大丈夫だ。場所は司法……「大変じゃあ!」」
その時、扉がバーンと開きアビスメティス様が入ってきた。
「大変じゃあ!クッキーが無くなってしもうたぞ!もっと、もっとじゃあああ!」
♢♢♢
「カトレア様に連絡しました。僕たちは街の公園で待ち合わせになりました」
アビスメティス様のクッキーを貰いがてら、僕は通信機でカトレア様に連絡を取った。運良くカトレア様と繋がり、学院近くの公園で待ち合わせになった。僕は学院を仮病で休んでいる身なので、学院に顔を出すわけにはいかない。
因みにエレナ様、レミーナ様、リビアンさんは遠征のため公休扱いだ。えっ、僕?僕は有る意味でお忍びなので、公休は貰えないよ。つまり学院はズル休みってことになるのかな?
公爵家の前でマヤちゃんとは分かれた。
「メティスちゃん、今度はあたしのお
「マヤも妾の館に遊びに来るとよい」
えっ!?マヤちゃん
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