第5章 国王誘拐編
第31話 謎の幼女
「さあレミーナ、落ち込んでないで他のアンデットの討伐に向かいますよ」
「う~~~~~~、千載一遇のチャンスを……」
「姫様、何を言われますか!ルインと……キ…キス…したのに……」
「「!!!」」
「そうですよレミーナ!」
「そうでしたわ!私はルイン様と……」
頬を紅潮されているレミーナ様。スミマセン!事故なんです!
♢♢♢
スケルトン、ゾンビ、グールの掃討戦は夕方まで行われ、街の5分の1程度の範囲で駆除できた。やはりレミーナ様のハイエストターンアンデットの効果はザコアンデットには強力だった。
日が沈む前に討伐軍は街の外の野営地へと戻る。夜はアンデット達の時間だ。無駄に相手の時間で戦闘をする意味はない。
国王陛下が崩御する日まで後4日。明日中にはアンデッド討伐の目途をつけたいところだ。気になるのはドラゴンゾンビをこの街に連れて来た者の存在だけど、僕の空間把握魔法の範囲にはそれらしい者の存在は確認できない。
もうこの辺りにはいないのかな?などと思っていたら、夜中に向こうからやって来ちゃいました!
♢♢♢
「何処の子供だ!」
「お嬢ちゃん、ここは来ちゃ駄目だよ」
夜中に僕の空間把握魔法のアラートが頭の中に響いて飛び起きた!テントの外側、更に天幕の外側で夜間警備をしている衛兵さんの声が聞こえる。
お嬢ちゃん?いやいや!其奴はヤバい奴だよ!僕の空間把握魔法には超化け物がいる様にしか感じない。
「テレポート!」
僕は空間転位で其奴の背後に跳躍した。そこにいたのは黒髪の幼女だった。
ええええええっ!!
「テ、テ、テレポート!!!」
僕は黒髪幼女に後ろから抱き付き、慌てて空間転位で跳躍する。咄嗟の事だったので、転位した先は街の破壊された教会になってしまった。
「…………後ろから妾に抱き付くとは、今代の勇者は強姦趣味かえ?」
「うわっ!!!」
僕は慌てて彼女から離れる。
「僕は勇者でも、強姦趣味でもありません!」
「ふむ?勇者ではないと?しかし幼女に後ろから抱き付いておいて、変態強姦魔ではないと申すか?」
「絶対違います!」
僕が抱き付いて空間転位をした相手は長い黒髪の幼女であることは間違いない。見た目は、だけどね!ここ重要だよ!!!
「ふむ?して、今の魔法は空間転位じゃな。そちが失われた時空魔法の使い手でよいのか?」
「はい!そうです!そうですから僕たちを見逃して下さい、アビスメティス様!」
「ほう?そちは妾を知っているのかえ?」
「はい!魔神にして冥府の王!魔王さえも跪く魔界の神!」
「……神などではない。ただの堕天じゃ」
堕天使アビスメティス。ゲーム『ドキドキプリンス』には名前も出てこない設定だけの魔界の神。何故かオフィシャル攻略本にイラストだけが載っていた。前世の僕がロリコ……ゲホンゴホン!前世の記憶がそのイラストを印象深く覚えていた。
「何故、魔界の神であるアビスメティス様がこんなところにいるのですか?」
「散歩じゃ」
……………。オイ魔王!あんたの所はどんな管理しているんですか!
「ではもうお帰りに?」
「いや、戻っても暇なのじゃ。魔王は最近お気に入りの雌が出来たとかで構ってくれんのじゃ」
『王子様暴走編』では魔王の出番は無い。魔王領でいちゃいちゃタイムか?
「久々に人間界に来てみても暇じゃったから、たまたま捕まえたドラゴンゾンビを暴れさせてみれば、其方が時空魔法で退治してしまったのじゃ」
「ドラゴンゾンビをたまたま捕まえないで下さい!しかも暴れさせないで下さいッ!」
「まあ、世界をも破壊する時空魔法の使い手に会えたのは僥倖じゃったな」
「世界を破壊ですか?僕の時空魔法は初級魔法なので、悪くても僕という存在が無くなる程度だと思いますよ」
「ほう、其方は時空魔法の真の恐ろしさを知っているかえ?」
「真かどうかは分かりませんが、『事後選択』による過去改竄は体験しましたし、多大なパラドックスを僕が起こせば、僕という存在が初めから無かったことになると思います。
仮に僕が過去に跳んで歴史を大きく変えた時に、世界の理が許容出来ないパラドックスを生むので有れば、文明が消えて無くなる可能性も………あっ!?古代魔法文明はもしかして……」
「ふむ、世界の理の一端は理解しておるようじゃな。さよう、古代魔法文明は間抜けな王家が時空魔法を使って過去を変えたのが切っ掛けとなり、古代魔法人が世界の理によって全て抹消され、新たな文明が生まれるという過去改竄が行われたのじゃ」
……時空魔法……超ヤバいじゃん!
「……アビスメティス様はその頃も魔界にいたのですか?」
「妾か?妾はその時は天の者じゃったが、古代魔法文明の序でに魔界も改竄させようとした天使共と少しやり合ってな、其れから魔界に住んでおる」
黒く長い髪が風に揺れる。堕天使も天使!美少女っぷりが半端ない。幼女だけど!
「さて、お主の名は?」
「えっ!?ぼ、僕ですか?」
「ここにはお主しかおらんじゃろ」
「そ、そうですね(汗)。僕はルインと言います」
「ならばルインよ。妾は腹が空いておる。何か喰わせよ」
「え、え、えっと……魔物の肉とかですか?」
僕の亜空間収納には大量にオークやオーガなどの死骸が収納されている。使い道も無いから全部アビスメティス様にあげてしまおう。
「アホか!妾は魔物ではないわ!魔物肉など臭おうて食せる訳なかろう!」
在庫一掃セールは駄目でした。
「で、ではこんなんで」
亜空間収納から公爵家で貰ったイチゴジャムクッキーを3枚取り出した。
「ふむ!クッキーか!久しぶりじゃあ!」
僕の手からさっとクッキーを取り、アビスメティス様はハムハムと食べ始めた。
速攻無くなりました……。
「他には無いのか?妾はまだクッキーを食べたいぞ」
「あれで全部です。貧乏学生の僕にはクッキーなんて高くて買えませんよ」
クッキー1枚でお昼に食べるパンが1つ買えてしまう。甘いものは贅沢品だ。ならばパンを買うでしょ!
「ならば買ってこい。妾とて人間界のことは知っておる。お店とかいう所で売っておるのだろ」
「い、いえ、今は夜中ですからお店はやっていませんよ。それに僕にはこの街のアンデッドを退治する仕事も有りますし……」
「アンデッド共か。フン」
アビスメティス様がパンっと手を打ち合わせる。
「うわっ!」
アビスメティス様を中心に巨大な魔力の波が広がって行った。
「えっ!?あれ!?マジ!?」
僕の空間把握魔法の範囲にいたスケルトンやゾンビなどが消えていた。柏手は魔を払うとかいうけど、そんなレベルじゃない。アビスメティス様の一打ちで街にいた全てのアンデッドが消えてしまったよ!?
「これでよかろう。では行くぞルインよ」
えっ、えっ、えええええええ!!!
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