第27話 予想外の強敵 前編
「あれがミストーレの街だね」
道中何だかんだあり、カトレア様が誘拐されそうになった事件もあったけど、予定通り5日の道程でアンデッドの群れに襲われた街に到着した。
更に道中では輜重隊の半数程が軍団から離れている。一部は僕が倒した地竜の後片付けと価値有る部位の回収、それと道中で合ったミストーレの街からの避難民のお世話の為だ。
「街に入り込んだアンデッド達の総数はざっと300ぐらいだね。親分のデュラハンは街の北西にある破壊した教会にいるね」
僕と軍団長のエレナ様、護衛役でノーラさんとメーテルさんの4人、アンデッドの襲撃で崩れた街の防壁が見える丘の上にいた。
「この距離で分かるのですか?」
驚いた顔のノーラさん。
「お話ししたように僕の魔法は時空魔法です。特に練習したのが空間把握魔法と索敵魔法ですからね。……しかし厄介なのが一匹いるな~」
「デュラハンですか?」
「いや、ドラゴンゾンビ」
「「「はい?」」」
「街の北側にドラゴンゾンビがいるんだよね」
「そ、そんな化け物が…」
ドラゴン系モンスターは地竜が討伐レベル60、火竜と水竜が70、雷竜と暗黒竜が80、黄金竜が90となるが、ゾンビ化すると討伐レベルが5から10程度上がる。
「まあ、アイツは僕が相手するから、エレナ様達はデュラハンをお願いします」
「で、ですがドラゴンゾンビには絶対魔法耐性が……」
エレナ様が心配そうな顔で僕を見る。
「それは4属性魔法が効かないことが誤って伝わった誤報ですよ。光属性魔法は当然天敵ですし、ドラゴンゾンビと同系の闇魔法も効きます。そして僕の時空魔法はそもそも埒外ですから」
「し、しかし……」
「大丈夫ですよ。索敵魔法で確認しましたが、あのドラゴンゾンビは火竜系です。火竜の討伐レベルは70程度。ゾンビ化していても厄介なのは超再生能力ぐらいですからね」
「「「………………」」」
何?何なんですか!その化け物を見る様な目は!?
♢♢♢
ミストーレの街には東西南北に門があり、デュラハン討伐が目的である事から、北か西の門から入るのがデュラハンが居座る破壊された教会には近い。北側には例のドラゴンゾンビが居座っているから、北側から全軍で入るのは不味い。
「西の門から入り、お前達はデュラハンがいる教会までの露払いをして貰う!各隊毎に道中のアンデッド共を掃討してくれ。スケルトンやゾンビなら衛士達でも対応出来るだろうが、グールには気を付けろ。噛まれたら厄介だからな」
ノーラさんが中隊長の騎士さん達に指示を出している。骸骨戦士のスケルトンは硬いだけで衛士達でも問題ない。ゾンビはゾンビ病を持っているが、動きが遅いので注意して戦えば何とかなる。
レベル20程度で厄介なのは災害クラスC級のグールだ。死人とは思えない素早さを持ち、少しの傷でもゾンビ病の病原菌を貰ってしまう。
そしてエレナ様達の精鋭部隊は首領であるデュラハン討伐迄は後方で待機となる。デュラハンは災害レベル特A級モンスターで討伐レベルは50だ。
チャリオットに乗ったデュラハンは機動性と攻撃力が上がるため災害クラスが一つ上がりS級、つまりは地竜なみの危険度に上がる。
しかし精鋭部隊のメンバーは
レベル54、上級騎士のエレナ様(レベル的には将軍クラス)
レベル42、光属性魔術師のレミーナ様
レベル40、騎士見習いのリビアンさん(レベル的には上級騎士クラス)
レベル41、上級騎士のノーラさん
レベル40、上級騎士のメーテルさん
更に中位魔術師の人が1人、中位神官の人が1人付いている。
この編成であればデュラハンも討伐出来る筈だ。当初は僕も加わる予定だったけど、街の北にいるドラゴンゾンビがどうしても気になるので、別行動で僕は単身でドラゴンゾンビ討伐に向かうことにした。
因みに本部の他の上級衛士3人と6人の衛士は、基本的にキャンプ地での警護がお仕事のため、討伐作戦には参加せず輜重隊や衛生看護隊と一緒に街の外で待機している。
♢♢♢
街中には300匹近いアンデッドがいるとはいえ、西門から破壊された教会までの間に、全てがいる訳ではない。その道中におけるアンデッド達を駆逐しながらエレナ様の軍団は侵攻した。
ゾンビやグールによって傷ついた者は直ぐさま街の外まで後退し、衛生看護隊の治療を受ける。直ぐに処置すればゾンビ病にかかるリスクは極端に下がる。
僅かな負傷者を出しながらもエレナ様達は破壊された教会の入り口まで辿り着いた。
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