第11話 不穏な未来
格式高そうなホテルの最上階は12階にあり、この王都でも一際高層の建物だ。最上階へはエレベーターで上がり、エレベーターを出た所に紳士なお爺さんが出迎えてくれた。
紳士なお爺さんが通してくれた部屋は、優美でいて繊細なデザインで統一されていて、10人ぐらい座れそうな大きなテーブルがあり、真っ白なテーブルクロスの上には豪華な花瓶に、溢れ出さんばかりの色取り取りの花が飾られていた。
「す、凄い夜景ですね!」
窓の外を見ると篝火などでライトアップされた宮殿や城壁、更には街の街灯やお店の灯りなどで、まるで宝石を散りばめた様な幻想的な風景を作っていた。
「ここの夜景は王都で一番綺麗なんですよ」
「へえ~、彼女が出来たら是非見せてあげたい風景ですね」
ん? あれ? レミーナ様とリビアンさんが僕をジト目で見ているよ? 何か変なこと言ったかな?
「ルイン様! 素敵な女性でしたらここにいますよ!」
「は、はい! レミーナ様もリビアンさんも素敵な女性です! ……よ?」
「「………………」」
「????」
レミーナ様にリビアンさんが素敵な女性なことは口に出すまでもなく、分かりきっている事だよね? 何故にジト目なんだ?
♢♢♢
テーブルには今までに見たこともない美味しそうな料理が並んでいる。肉汁滴るステーキに、大きなロブスター、サラダやパンにしてもオーラが違う。
「あ、あの……本当にご馳走になってしまって宜しいのですか?」
駄目と言われても、僕の財布ではこのパンのお金も払えるか怪しい。
「勿論です! 先日のお礼ですので、ご遠慮なさらずにお食べ下さい」
「あ、ありがとうございます」
「レ、レミーナ様? 野球のボールの件のお礼にしては豪勢過ぎませんか?」
リビアンさんはデスベアーの件を知らないみたいだ。レミーナ様には僕の魔法のことを秘密にして貰っているからリビアンさんにも話していないのだろう。レミーナ様は本当に信用おけるお方だ。
「リビアンさん……」
「ル、ルイン様!」
「レミーナ様、リビアンさんには話しをします。これからの事もありますから」
「で、ですが……2人の秘密が……」
「大丈夫ですよ」
何故かレミーナ様はガルルルとリビアンさんを睨んでいるよ?
「……では私からリビアンにお話しします。リビアン、先日の野営会で謎の学生に私が助けられたお話しはしましたよね」
「は、はい」
「それがルイン様です」
「……やっぱり」
「「やっぱり!?」」
「はい! ルインが凄いのは公園で見て知っていましたし、レミーナ様が男子学生の様なお話しをされていましたのでエレナ様ではないとなると、アホ王子のアーベルト様ですが、アーベルト様にデスベアーを倒すだけの力はないです。そしたらやっぱりルインなのかなって思っていました」
因みにエレナ様は公爵令嬢で、吟遊詩人達に美しき戦姫として詩われる程の美貌と実力を持っておられる方だ。
「リビアン、貴女はルイン様の実力を知っていたのですか?」
「いえ、片鱗を見ただけです。しかし私も武家の娘です。妹を助けた時のルインの動きを見れば、ルインの実力が私の想像の斜め上をいっている事は分かります」
「リビアン、その公園でのお話し、お食事をしながら聞かせて頂けますか? 私の知らないルイン様の武勇伝を」
「はい!」
♢♢♢
食事中の会話は公園での出来事から始まり、何故か僕のプライベートな事への質問が多かった。僕の故郷での話しとか、好きな食べ物とか。人に話す程面白い話しではないのに2人ともとても楽しそうに聞いてくれた。これが社交力というものだろう。
楽しい食事も終わり、空いたお皿などをウェイトレスさん達が下げてくれる。テーブルにはティーセットがおかれ、レミーナ様が部屋の鍵をかけた。
「リビアン、ここでの会話は他言無用ですよ」
「はい、心得ています」
僕は2人の顔を見渡して2人が真剣に僕の話しを聞いてくれる事を再確認した。
「国王様は7月に崩御致します」
「…………」
「えっ! ルイン! どういう事!」
「リビアン、落ち着きなさい。ルイン様、続きをお願いします」
前振りをしていた為だろうか、レミーナ様は冷静に僕の話しを聞いてくれる。僕はティーカップを手に取りお茶を一口飲んだ。
「国王様はお世継ぎを決めぬまま他界されます。そこで第1王子のルーク様が玉座にお座りになります」
「「…………」」
「お察しの通りアーベルト様が黙ってはいません」
「国が乱れると」
神妙な顔のレミーナ様。
「はい。このまま何もしなければ9月にアーベルト様がクーデターを起こします」
「ルイン様にはそれを逃れる良案をお持ちなのですよね」
「はい。不敬ながら国王様には生き返って頂きます」
「「えっ!」」
この世界に死者蘇生の魔法は無いとされている。しかしゲームとしての『プリパラ』にはパーティーメンバーが死んだ時の復活魔法があった。
「伝説の魔法『リザレクション』。この魔法をレミーナ様が覚え、国王様を復活させるのです」
「「リザレクション……」」
レミーナ様の顔に覇気が漲る。レミーナ様の望みは父である国王様を救うことだ。ただ彼女の望む時よりも早くを国王様はお亡くなりなに
なってしまう。それを知った彼女は絶望した。しかし僕がいる。彼女の不幸な未来も国の動乱も僕が絶対に阻止してみせる!
その後は今後のことを話して僕達の密会は終わりとなった。
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