第2章 友達増えました編
第9話 未来のために
レミーナ・ルナーク・セントレア様。セントレア王国の第2王女であり、第2王子のアーベルト様とは異母兄妹になる。アーベルト様は第1王子のルーク様、第1王女のサリーナ様と同じく正妃様のお子様だ。第2王女のレミーナ様は第2妃様のご息女であり、第3妃様のお子様に第3王子のジャック様、第3王女のラティス様がいらっしゃる。
正妃様は数年前に流行病で他界されており、国王陛下のご寵愛は第3妃様に注がれているとの噂がある。第2妃様には男子はおらず、肩身が狭い宮殿において長老達からは蔑まれ、その矛先がレミーナ様にも向けられているとか。
兄弟カーストで弱い立場にあるレミーナ様は、そこをアーベルト様に付け狙われてしまう。7月に発生する国王陛下の崩御で、落ち込むレミーナ様の心につけ込み、結果として奴隷落ちする流れになっている。
「……僕はレミーナ様に嘘を付かないと誓いました。だから魔法のことを話すことも致します。ですが、約束をして頂けませんか? 暫くの間で構いません。僕の魔法のことは誰にも話さないと」
「……それ程の魔法なのですね」
「……それも有りますが、僕には短い期間ですが未来における神の啓示があったのです」
前世の記憶を神の啓示と置き換える。
「……神の……啓示?」
「はい。それで僕は死の運命から逃れられました。そして、この先にある未来も変えたい。それを成すためには僕の魔法のことがアーベルト様達に漏れるのは不味いのです」
「アーベルト兄様が何かをする……ということですか」
「はい」
「……分かりました。私はルイン様を信じます」
「ありがとうございますレミーナ様」
「フフフ、私達2人だけの秘密ですね」
「ま、まあ、そうなりますね……。では誰かに聞かれると不味いので場所を変えましょう。レミーナ様、お手を」
「はい?」
レミーナ様は首を傾げながらも右手を出してくれた。僕はその右手を取る。
「テレポート」
♢♢♢
「えっ!?」
僕達は茜色の空がよく見える学院の屋上へと空間転位した。この時間の屋上は鍵を掛けられているため誰も訪れない。
「僕の魔法の1つ、テレポートです」
「……ロストマジック……ですね」
「多分」
ロストマジックとは古代魔法時代から今に至る数千年の間に継承されなかった魔法のことだ。特にヤバい諜報系魔法は国の暗部が管理し、人知れず無くなっていく事が多い。
「では私の傷を治したのも、スカートの泥を無くしたのもロストマジックですか?」
「はい。あれは時間回帰の魔法です」
「時間回帰ッ!?」
「僕の場合は、限定した狭い場所の、ホンの数分だけしか時を戻せまんが」
「……つ、つまり傷を直したのではなく、傷を無かったことにした……と?」
「はい、そんな感じです。後は空間把握や亜空間操作といった魔法ですかね」
「……ルイン様、貴方は……」
「神の啓示。僕は神の啓示により時空魔法を覚えました。初めは自分の命を守るために始めたことです。でも今はソレだけじゃ駄目だと思っています」
「……時空魔法?」
「レミーナ様!」
「はいッ!」
「僕は貴女の未来を守りたい!」
「えっ? 私の? 私の未来? えっ!? それって! えっ、えっ! そ、それは少し早いのでは!? まだ少ししかお話しもしていませんし! ル、ルイン様は私の命の恩人で……す、素敵な殿方ですが……、わ、私にも心の準備が……ごにょごにょ」
レミーナ様は赤い顔で俯き、両手を重ねてモジモジしているが、どうしたのだろうか?
「僕と一緒に」
「い、一緒に……」
「この国を守りましょう!」
「……ほへ? ……国を……守る?」
「はい! 国を守る事がレミーナ様の未来を守ることに繋がりますから!」
「………………」
あれ? レミーナ様が上目遣いで口を尖らせて僕を睨んでいる? あれ? あれあれ?
「ルイン様のおバカあああああ!」
えっ!? 何で怒られちゃうの?
♢♢♢
沈む太陽が東の山々を赤く染め上げ、紫色の西の山々に沈もうとしていた。僕とレミーナ様はそんな夕陽を見つめていた。
「レミーナ様が学院にお入りになった理由を聞いても宜しいですか?」
「私のことですか?」
「はい」
「……お父様……国王様が病に伏せっておられるのはご存じでしょうか」
「……はい」
「ここ数年はご体調も優れず、正妃様がお亡くなりになられてからは、日に日に国王様のご体調も悪くなっていきました」
「…………」
「私は兄姉達の中で唯一光属性の魔法を使うことが出来ます。勿論、宮殿の優れた治癒魔法師達が国王様のご看病をされていますが、私にもその力があるのなら、私もお父様を助けるお手伝いがしたいのです」
「…………」
「学院で知識を学び、魔力を高め、卒業後は聖国にて修行を積もうと思っています」
「…………」
夕陽に赤く染まるレミーナ様の顔は美しくさの中に陰りを潜ませながら、僕に学院に来た理由を語ってくれた。
「間に合いません」
「……えっ?」
「国王様のお命はそれまで持ちません」
「…………」
国王様が死ぬと告げる僕。宮殿の人達が聞けば罰当たりとして僕の首が飛ぶ。レミーナ様は僕の話しを信じてくれるだろうか。ゴクリと唾を飲み、レミーナ様の顔を覗う。
「……それも神の啓示……ですか?」
「はい。正確な時は今は言えませんが……年内には……」
レミーナ様の瞳に涙が溜まり、頬を伝って流れ落ちる。そして両手で顔を隠し泣いてしまった。
「私は……私は何も出来ぬまま……お父様を……」
「レミーナ様、僕は言いましたよね」
「……ルイン……様が……国を……ま……もる……」
「はい。僕は国を、レミーナ様の未来を守ると言いました。でも国王様を守るのはレミーナ様です。レミーナ様が僕の言葉を信じてくれるのなら、僕は全力でレミーナ様のお手伝いをします!」
「………私が……お父様を……守る……?」
涙の混ざる小さな声でレミーナ様が僕に確認する。
「はい! レミーナ様以外では不可能です!」
「……私が……でも時間が……」
「大丈夫です! 我に秘策有りです!」
「……ルイン様……力を……貸して…頂けるのですか……」
「はい! 喜んで!」
レミーナ様が僕の胸に飛び込み、僕の胸で涙を流している。僕はどきどきしながらも、レミーナ様の頭を優しく撫でた。
「レミーナ様なら出来ますよ」
「……ルイン……様……宜しく御願い……します……」
□□□
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