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「失礼ですが、もう一度お願いします。妻(さい)という名前なのですか? ずいぶん変わった名前ですね」
「ええ、妻(さい)です」
わたしは混乱した。
「すると、書生さんの告白録で先生が妻(さい)と呼んでいたのは、静さんのことなのか、下女の妻(さい)さんのことなのかよくわかりませんね。まさかとは思いますが、先生は、下女の妻(さい)さんに手を出しておられた。つまり、静さんとあなたは三角関係にあったのではないですか? それで、嫉妬に狂って殺した」
下女ははっきりと答えた。
「そういうことはまったくありません」
「そうですか」
わたしは大人しく引っ込むことにした。とにかく、証拠はないのだ。
「ですが、もう一つ、要件があって、この家を訪ねたのです。わたしが今日、話したことはすべて仮説です。証拠は一切ありません。しかし、確かな証拠のある情報を今日、わたしはひとつ握ってこの家を訪れています」
「なんでしょう」
わたしは勢いをつけて、詰問した。
「静さんの母上は、まだ御存命でいらっしゃいますね。その住んでいる住所を教えてもらいたくて来ました」
静さんは、ちょっと驚いたようだった。
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