第5話

 とりあえず、内戦していない島ができたし、拠点は作れたなあ。

 と、風音とくつろいでいると、来客があった。女の子だ。

「リザといいます。わたしの発明品、時の置石をお持ちください。きっと役に立ちます」

 ものすごく謙虚に贈り物をくれた。

「どんな効果があるんですか?」

 それがわからなければ、受けとれない。

 怖い。危険な罠かもしれない。

「はい。時の置石は、それを持っていると歴史改竄によって過去を書きかえられなくなるように現在を守ります」

 難しい道具だなあ。

「ありがと。お守りに持っておくよ」

 とぼくはいった。


 と、その日のうちにさっそく敵がやってきた。銃をもっている。

「友紀村慎二だな。きみには悪いが死んでもらうよ。残念ながら、きみに勝ち目はない。おれは世界最速の早撃ちなんだ」

 戦いか。ぼくの弱さの能力で勝てるだろうか。

 ビーキンは銃を抜いた。遅い。やはり、ぼくの弱さの能力で世界一の早撃ちの速さが抑えられているのだ。ぼこっと、ビーキンの顔面を殴る。

 しかし、ここで考えられないことが起こった。ビーキンが撃ち遅れたこの時空間に、ビーキンが五秒前を撃っていたという平行世界から着弾し、ぼくが殴る五秒前を撃ちぬいたのだ。

 五秒前を起点に歴史は改竄され、ビーキンが五秒前を撃っていたという歴史が上書きされていく。ビーキンは五秒前を撃ち抜くくらいの世界最速の早撃ちだったのだ。

 だが、ここで、異変が起きた。リザのくれた時の置石が歴史改竄から、ぼくを守ったのだ。ビーキンが五秒前を撃ち抜いても、歴史は改竄されず、ぼくがビーキンの顔面を殴った現在が維持され、ビーキンの顔面が吹っ飛んでいく。

 勝った。

「どうなってんだ、ちくしょう」

 ビーキンは悔しさをにじませて帰って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る