第3話 金魚と私



 私は六年前から金魚を飼っています。


 お腹がぷくっと膨らんだリュウキンです。尾びれが特に長い品種で、ベールのようにふわふわと揺らぐ姿は、上から見ても横から見ても大変美しい金魚です。


 この美しいリュウキン、実は稚魚の時トイレに流される寸前で私が引き取った金魚なのです。


 私の仲良くしていたお友達の旦那さんは趣味でたくさんの金魚を育てていました。初めてそこのお宅に遊びに行かせていただいた時には壁一面、床一面、水槽と巨大なたらい(ドリフのコントで上から落ちてくるような大きさ)だらけで驚きました。


 なんでも彼は、金魚を交配させて自分好みの型の良い金魚を生み出すのが趣味のようなのです。


 たらいの中には一センチにも満たない黒色の稚魚でいっぱいでした。


 黒? 赤じゃない?


 そうなんです。私も知らなかったのですが金魚はふ化してから2~3ヶ月くらいは黒っぽい色をしています。その後メダカのような色になり、私たちが知っている赤やオレンジの金魚になっていくのです。


 稚魚が黒い理由は、もともと中国のブナや日本のフナが突然変異や交配を経て今に至るからと言われています。


 話は戻りますが、友達の旦那さんはね、このたくさんの産まれた金魚の中から気に入った稚魚だけを育てて、残りは人にあげたり…トイレに流してしまうそうなんです。


 ショックじゃありませんか?


 私は凄くショックを受けたんです。だって、浄化槽にはそれぞれの家庭から強い洗剤だって流れてくるわけだし、その後稚魚がどうなるか想像できますよね。


 という経緯で、私は六年前から金魚を育て始めたのです。


 それでですが、本当はこのエッセイ今回違うことを書く予定にしてたんです。しかし、しかし、しかし! 仕事から帰って来るとびっくりすることが起きていたんです!!


 六年間飼っていた水槽の水草に卵がびっしりと産みつけられていたのです!


 メダカならともかく金魚ですよ!


 私は自分が出産したみたいな気持ちで急いで母に電話しました。まぁ、母もそれなりに喜んでくれました…。


 でも、ふと疑問…。


 誰が卵を産んだの?


 冒頭でも書いたように、うちの金魚はお腹がぷくっとしているリュウキンなのです。


 お腹に卵を宿しているなんて毎日見ていても分かりません。ちなみに、もらって来た頃は三十匹ほどいましたが人にあげたり、死んだり…死んだりで、今は一匹と買い足したのが二匹います。


 誰だ!誰と誰の子だ?


 今もキーボードを打ちながら動揺が隠せません。YouTubeで卵を産んだ時の飼育方法を見ました。必要なものがたくさんあります。早くホームセンターに行かないと!


 もしかすると無精卵かもしれないと本には書いていました。でも、春が近づき何だか縁起が良い感じもして、わくわくしています。


 もし卵から無事にふ化することができたなら全力で育てたいと思っています!


 流しませんよ、トイレには!!


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る