第4話 アフラマズダ来襲

 また、しばらくのんびりすごしていると、今度は仏教というものがこの国に攻めてきたそうです。いや、攻める攻められるじゃなくて、相手の良いところを盗んで、どんどん自分たちをよくしていくべきだと思うのだけれど、わたしを祭りあげる人間たちは外国の文化侵略が我慢ならないようです。

 外国の文化侵略っていったって、この国の中枢として守られているわたしはただの水蛇ですのに。そんなわたしなんかを守ってどうしようというのでしょうか。

 いえいえ、わたしも気付いています。わたしを祭り上げている男たちは、わたしが太陽であることを信じているのです。わたしがただの水蛇だったことなんて忘れてしまったのです。

 それで、仏教との戦いになりました。

 それはもう次から次へと攻めて来ました。

 最初にやってきたのは阿修羅さんでした。いつも負けるのに戦いつづける闘争の神だそうです。でも、会ったらわかったんですけど、阿修羅さんの正体は知恵の主アフラマズダさんですね。

「あなた、アフラマズダさんでしょ」

 というと帰っていきました。

 次にやってきたのは、大日如来さんでした。宇宙すべてなのだそうです。

「わたしはこの宇宙すべての汎神である」

 といってましたけど、わたしが、

「でも、あなたアフラマズダさんでしょ」

 というと帰っていきました。

 次にやってきたのは、不動明王さんでした。すごく強いのだそうです。

「でも、あなたアフラマズダさんでしょ」

 というと帰っていきました。

 いつまで、アフラマズダさんは来るのでしょうか。

 次にやってきたのは、阿弥陀如来さんで、アーミターバという名前なんだそうです。みんなを極楽浄土へ連れていくのが目的なんだそうですけど、わたしが、

「でも、あなたアフラマズダさんでしょ」

 というと帰っていきました。

 アフラマズダさんは本当にあきらめることを知りません。おかげで、この国にも少しづつ良いものが集まって来たようでした。

 で、次にやってきたのが、弥勒菩薩さんでした。マイトレーヤという名前なんだそうです。五十六億七千年後にこの世界を救うのだそうです。

「でも、あなたアフラマズダさんでしょ」

 というと帰っていきました。まあ、すごくしつこかったですけど、アフラマズダさんはそんなに悪い神さまではない気がしました。わたしはただの水蛇ですから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る