まず、モルがいる。働くお父さんだ。モルは人類だが、過去に遺伝子工学により体を改造されたので、葉緑体をもった植物の体をしている。モルは植物の人間だ。モルは自分で光合成をして太陽のエネルギーを栄養に変えながら、毎日、働いて生きている。真面目で優しい冗談もいえる欠点の探しようのないような人物だ。

 モルは女のモラと結婚していて、子供を生んでいる。子供を生むのは大切なことだ。人生を生きていて、どんなに愚かで嫌なやつであっても、子供を生んだだけで褒められる。立派な一人前の大人として認められる。なぜなら、その人は、人類が存続することに力を貸したからだ。

 きみはどんなに馬鹿でもいい。きみはどんな弱虫でもいい。ただ子供を生めばいいんだ。子供を生んで育てれば、それだけで世間は立派な大人として扱ってくれる。子供を生むだけで、おじさん、おばさんにべた褒めされるんだ。それは覚えておいてもいい。世の中には、子供を生むこととは無関係のような、勉強とか、協調とか、そういう課題があふれているけど、子供を生むことに比べたら、それらはたいした問題じゃない。ただ子供を生んで育てればいいんだ。それが人生の目的だといえる。あとは、子供が勝手に未来をつくってくれるさ。

 そして、人類の大半は子供を生むことに成功した人で、人類の存続に力を貸した偉大な人物たちなんだ。きみと互角に偉大な人物は世界にあふれている。お父さん、お母さんだ。ぼくらはすべてお父さん、お母さんの子孫で、お父さん、お母さんという英雄たちの子供なんだ。

 子供を作るためには愛を語らなければならない。愛を語るのは、とても難しいことなんだ。だから、それを成し遂げたお父さん、お母さんはとても偉大な人物だといえる。ぼくらはみんな、偉大な先祖様をもった誰にも負けることのない生まれながらの英雄の子なんだ。ぼくらは英雄の子供として、生まれを恥じることはいっさいない。

 ぼくのお父さん、お母さんはそれほど立派な人物じゃないけど、子供を生んだということに関して、ぼくより偉大な人物だと思って尊敬している。これを書いている作者のぼくはまだ子供がいないんだ。寂しい独り者だ。

 ちなみに、ぼくのご先祖様のことを話しておこうと思う。ぼくのご先祖様は勘左衛門という江戸時代の農民だ。安兵衛の子、勘左衛門が新しく家を建てて初代となった。それが我が家だ。誰にも恥じることない農家の出だ。ぼくのお父さんが七代目に当たる。おそらく、江戸時代にキリスト教弾圧のために農民をみんな仏教徒にして名を記した。そのために名が残ったのだと思う。仏壇の位牌の中に書いてあった。ぼくは自分の祖先を誇りに思う。

 そういうことで、モルとモラは、二人とも植物の体をした偉大なお父さん、お母さんなんだ。


 ここでちょっと話をずらしておこう。世の中には、お父さん、お母さんをもたずに生まれる人工受精児たちがいる。科学で培養された子供も生まれるかもしれない。でも、その子たちも偉大な科学者の子供なんだ。血はつながっていなくても、科学という偉大なものによって誕生した立派な一人前の子供さ。誇ってもいい。彼らは、決して貶められることのない偉大な科学という両親をもった子供なんだ。

 それでは、話を戻すね。

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