第5話 バハムートの殺し方
神は世界を創造した七日間の時、陸の動物はベヘモトが支配する、海の動物はレヴィアタンが支配すると決めた。ベヘモトは英語読みでベヒーモス、イスラム圏ではバハムートと呼ばれる。子音がBMH?であるこれら三つは同一のものだと思われる。実在する動物のモデルとしては、カバだと思う。
ベヘモトは竜王より強く、大地より大きい。四本足で歩く筋肉の塊である。輪切りにしても死なない。星をぶつけても死なない。
世界の果てにはヨルムンガンドルがいて、近づいてくるものをみな叩き殺してしまうが、その向こうの星の裏側にはベヘモトが住んでいた。
ずしん、ずしんと歩くたびに地震が起こる。踏み潰されて死ぬ動物も多い。
ある小さな山のふもとに、リザ、リジ、リズ、リゼ、リゾ、という五人姉妹が住んでいた。リザは魔法使いであり、他の四人も手習い程度の魔法が使えた。
どうすれば、ベヘモトを殺せるか、この難題にリザは挑んだ。そんなのは、ベヘモトみずからが死を選ぶ状況を作り出すしかないだろう。
リザは氷漬けにされた堕天使ルシフェルを蘇らせ、堕天使たちと契りを結んだ。リザは魔方陣を描いた。フェンリルが太陽を呑み込み、ルシフェルが再び天の三分の一を率いて反乱した日だった。天の三分の二は、ルシフェルの軍によって討ちとられた。ベヘモトの命と対等なもの。それは天の三分の二。
「ベヘモトよ、リザの名のもとに汝の命を生贄に捧げる。その命と引きかえに、死せる天の三分の二を蘇らせよ」
まさか、ベヘモトが敵であるリザの命ずるままに命を捨て、無条件で使役されるとは思えなかった。しかし、ベヘモトは迷うことがなかった。
「リザよ、汝の申し出は誠に正しい」
こうして、ベヘモトは自らの命を生贄に捧げ、天の三分の二を生き返らせた。
これがベヘモトの殺し方。
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