第4話 ガルムの殺し方

 ガルムとは、この世とあの世の境を守る番犬である。この世を見る目が二つと、あの世を見る目が二つで、全部で四つ目である。ガルムは生者の世界に迷いこんだ悪霊を食らう。死者の世界に迷いこんだ生者を食らう。

 ある小さな山のふもとに、リザ、リジ、リズ、リゼ、リゾ、という五人姉妹が住んでいた。リザは魔法使いであり、他の四人も手習い程度の魔法が使えた。

 リゼは、悪霊に襲われた時、ガルムを飼いならした男に助けられた。ガルムが、あの世を食べる口で悪霊を食らう。

「あなた、何者なの?」

「おれは死者の王からガルムを盗み出して悪霊を狩る狩人だ」

「あなた、死者の王に逆らっているの?」

「むかし、おれの家族が悪霊に食い殺されてから、それからな」

「死者の王があなたに気づけば、きっとあなたはそのガルムに殺される」

「大丈夫さ。おれのガルムは、おれを食ったりしない。きっと」

 死者の王がその男に気づいた。死者の王は試しに、ガルムを無断で飼いならした男を食い殺すようにそのガルムに命じた。

「ねえ、あなたのガルムが自殺したわ」

「ああ」

 忠実なるガルムは、二人の主人に逆らえずに死ぬのだった。これがガルムの殺し方。

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