第3話 ドラゴンの殺し方
むかしむかし、とあるところにちょっと変わった王国があった。
王国の王様は、ドラゴンを退治したものに姫を嫁がせ、この国の継承者としようと布令を出した。この布令で国中は大騒ぎになり、ドラゴン退治に出かける若者が続出した。
そんななか、当のお姫様はというと、
「わたしは自分の好きなヨハルネと結婚するから、あなた、代わりにお姫さまの役をやっておいて」
といって、懸賞である結婚を他人に押しつけてしまった。押しつけられた者も困ってしまい、誰か良い代わりのものはいないかと、次々と国中の者に秘かに声をかけていった。
ある小さな山のふもとに、リザ、リジ、リズ、リゼ、リゾ、という五人姉妹が住んでいた。リザは本物の魔法使いだったが、他の四人も手習い程度の魔法が使えた。
そして、三女のリズが、お姫さまの代理を引き受けたのだった。
リズはお城に行き、塔の中に幽閉されてしまった。塔の一室から一歩も外へ出ることができない。あるのは、召使いと、窓からやってくる鳥たちとの交流だけだった。
ある日、一匹のドラゴンに乗った男が塔の窓にやってきた。召使いは危険ですというが、代理人であるリズには誰が敵で誰が味方だかわからない。
「ドラゴンを退治した者がわたしと結婚するというのですが、そのドラゴンを従えるあなたは誰なのですか」
リズが聞くと、男は答える。
「ドラゴンがおれの主人なんだよ。おれは主人に運ばれて用をなす小間使いだ。ドラゴン退治に来たやつらはみんなやられちまったぞ。おまえはあきらめて、このドラゴンに忠誠を誓え。そうすれば、おれと一緒になって、この国を支配できる」
リズは困った。ドラゴンを退治するような頑張り屋と結婚したかったからだ。リズが断ると、ドラゴンはお城へ飛んでいって、この国の王様をばくりと食べてしまった。
騒ぎが起きた。王様が死んだので、当然、次の王様は一人娘の姫さまが継ぐことになるのだ。つまりは、リズが新しい王様として、女王になって即位してしまったのだ。リズは偽者の女王となった。
ドラゴンが来て、人のことばを使っていう。
「もがき苦しむが良い。善人に殺されぬように気をつけることだな」
リズは必死こいて善政をしいた。リズが偽者だと知っているものが、いつ告発するのかびくびくしていた。ただ、本物の姫さまと話し合った結果は一致していた。ドラゴンを退治したものが、次の王になるのだと。
数年がたった。その間、リズはずっと待っていた。
ある日、ボロボロの服を来た若者がドラゴンの生首を持ってお城に帰ってきたのだった。
「やっつけてやったぞ、悪竜を」
男はいった。
ドラゴンは、若者の努力と根性の積み重ねでやっつけるのだと相場は決まっているのだった。
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