第2話 フェンリルの殺し方
太陽は燃えつきるたびに蘇る不死鳥だといわれているが、滅びることもある。いつか、世界の終わりに、フェンリルという巨大な狼が太陽を呑みこんでしまうのだ。太陽が呑みこまれれば、あとは永遠の凍える夜がつづくばかりである。
フェンリルを倒さねばならない。神々が話し合って、そう決めた。フェンリルと戦うだけの勇気を持った人を、世界中から集めることにしたのだ。
ある、小さな山のふもとに、リザ、リジ、リズ、リゼ、リゾ、という五人姉妹が住んでいた。リザは魔法使いであり、他の四人も手習い程度の魔法が使えた。
ある日、次女のリジは瘴気の森まで旅に出た。
瘴気の森で四人の男の子たちに出会った。
「この森には、フェンリルっていう巨大な狼が眠っているの。フェンリルが目を覚ましたら、一発で食われちゃう。危険だから一緒についていっていい?」
男の子たちは承諾し、リジは怖いので一緒についていくことにした。
すると、目の前に向こうから一匹の人食いの怪物がてくてくと歩いてくる。
「やばい。逃げるぞ。うわあ」
五人で走って逃げた。しかし、間抜けなリジはつまずいて転んでしまったのだ。足がすくんで、動けない。
「放っておけ、あんな女。助けに行くと、おれらまで食われちまうぞ」
男の子たちは全力で走って逃げていった。
ただひとりの男の子だけ、リジの方へ走ってくる。
「何やってるんだ、このバカ。早く立て」
リジの手を引っ張り、走らせると、自分は時間を稼ぐために怪物に立ち向かった。
だが、残念、ばりばりばりと助けに来た男の子は怪物につかまって食べられてしまったのでした。
ぐわおう、ぐわおう、と叫ぶ怪物。死んだ男の子。リジも死ぬんだと、その時、思いました。
しかし、リジの体が光り輝き、背中に羽が生え、少しだけ宙に浮かびました。
「勇敢な男の子を探していたの。あなたは生き返って戦うの。絶対に殺されるぐらい強い敵と、あなたは戦うの」
実はリジは神々と契約を結んで勇敢なものを探しているワルキューレなのでした。惨めな男の子の死体は蘇り、怪物はリジの弓矢で退治されました。
あと、どれだけの勇敢な戦士を集めたら、フェンリルに勝てるだろうか。太陽を呑みこむほど巨大な狼に、どれだけの勇敢な戦士を集めたら勝てるだろうか。
リジは再び、男の子を探して旅に出た。
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