3

 彼とのことは、とても簡単に進んだ。

 彼は、わたしに従順。わたしも、彼に、みっちり張り付いてる。


「どこか行くところは?」


「ないよ。どこも。わたし、行くところも帰るところもないの」


「記憶喪失?」


「ううん。記憶はあるよ。でも、帰る場所がない」


「なんか、切ないな」


「なにが?」


 物心ついたときから、ずっとこうだし。切ないというのが分からない。


「俺の部屋に来るか?」


「行く」


 彼のこと。ひとめぼれした、けど。

 気になることがある。

 わたしになくて、彼にはある。

 なんていえばいいんだろう。

 心の、闇、みたいな。なんか、そういうのを感じる気がする。分かんないけど。

 その、暗い部分に。ふれたい。さわって、癒してあげたい。でも、まだ出逢って繋がってから、ほとんど時間が経ってないし。わたしも、初めてのことだし。わからない。わからないだらけ。

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