周囲から陰キャとバカにされる俺、実は全国制覇を成し遂げた不良グループの元総長~引退しても何かと不良たちに絡まれるが推しのVtuberの配信があるから邪魔をするなら容赦しねぇ。そこんとこ夜露死苦ゥ!!~
第61話 学園のアイドルを救うのは(SIDE詩織&優斗)
第61話 学園のアイドルを救うのは(SIDE詩織&優斗)
「よし、そんじゃあとりあえずコイツを運ぶぞ。何で俺らを襲ったのかも聞かねぇと」
「そ、そうでござるな」
意見の一致した誠二と隼太。
二人は気絶している痣呑へと近づく。
その時だった。
「うえー、負けちゃったんだぁ」
『っ!?』
上空から聞こえた、鈴の音色のような声に、誠二と隼太は肩を震わせる。
「誰だ……!!」
上に向けて声を荒げる誠二だが、
「あーあー、折角
「は……?」
次の瞬間、彼はポカンと口を開けた。
無理もない。上空にいたはずの声の主が、コンマ数秒の内に痣呑の側……誠二たちの足元にいたのだから。
ど、どうなってやがる……!?
混乱する誠二。
しかし、それよりも今の彼には別で考えなければならないことがあった。
コイツの雰囲気、
一環の終わり。
誠二の脳内に、最悪の未来が再来する。
やるしかねぇ……!! 俺が仕掛けて、隼太が逃げられる時間を稼ぐ……それが、今の俺にできる
即座にその判断を下した誠二は、疲労困憊の肉体を以て、
「ムダだよー。今のお前なら一秒も掛からず潰せるからー」
「っ!?」
よ、読まれてる……!!
思考の先読みをされたことに、誠二はゴクリと唾を飲む。
「
そんな彼女に、誠二は拳を震わせながら構える。
「……はんっ。ンなこと言われた所で、止められるかよ。もうやるしか、これしかねぇんだ……!!」
「……」
道化仮面の少女は、仮面越しに誠二を見た。
そして、合点がいったように、首を揺らす。
「あー、そういう。なら安心しなー。今お前らとやり合うつもりはなーい」
よっこいせ、そう言いながら少女は軽々と痣呑を肩で担ぎ上げた。
「こっちの用はこれの回収。まぁ、それを邪魔するってんなら受けて立つけど、どうするー?」
「……っ」
少女の問い、誠二は刹那の思考を余儀なくされるが、その答えは考えるまでもなかった。
「……そういうことなら、こっちも問題ねぇよ」
誠二が道化仮面の少女に仕掛けようとしたのは、向こうが交戦の意思を持っていると思ったからだ。
戦闘にならないのであればそれは願ったり叶ったり。
痣呑を回収されてしまうが、この場を穏便に済ませられるのならば些細なこと。
それが誠二の出した結論だった。
「あ、そう。そんじゃバイバイ。はぁー運ぶの
ブツブツと、仮面の少女は痣呑を担いたまま、一瞬にして消え去った。
「な、何だったんでござるか……今の?」
「……さぁな。たがまぁとりあえず、俺らが襲われたのは、あの仮面女が原因ってことだ」
誠二はそう言って、道化仮面の少女が消えた暗い森を見つめた。
◇
なんだ…なんだなんだなんだ……?
何なんだ……!!
隼太と誠二が痣呑と邂逅したほぼ同時刻。
羽柴優斗の脳内は困惑と混乱で埋め尽くされていた。
どうなってる、俺は絶好の
優斗がそう嘆くのも無理はない。
先ほどまで山道を歩いていた彼は今、渓流にいる。
それも、地上ではなく空中を通って。
支離滅裂で奇想天外な展開。それは優斗を容易に動揺させた。
「あははぁ、なぁどうだぁ?
そして、彼を動揺させた張本人は、笑っていた。
目の焦点が定まらず、口元に
「な、何を言ってるんだお前は!! こ、こんなことをしてタダで済むと……!!」
辛うじて出た勇気を振り絞り、優斗は言葉を吐く。だが、
「あぁ……?」
「ひっ……!!」
いきなり目が合い、純然な黒い
優斗は自覚した。
目の前にいる男は、関わってはいけない男だと。
自分が悪態を吐いてはいけない男だと。
優斗の困惑と混乱は、瞬く間に不安と恐怖に変貌を遂げた。
「
「ひっ、ひぃっ……!!」
一歩、一歩と近づく男に、優斗はその場に座り込んだまま、動かずにいた。
はっ!? そうだ詩織は……!!
恐怖の最中、優斗は一緒にいた詩織の安否を気に掛ける。
そして、彼は直ぐに彼女を見つけた。
なっ……!!
詩織は、倒れていた。
恐らくここに着地した際、男が雑に放り出したことで、意識を失ったのだろう。
そう考える優斗だが、彼が本当に気にしたのはそこではない。
彼は……。
あの女、俺が
詩織に対し、あまりにも理不尽な怒りを抱く。
切迫した絶体絶命の状況下で、彼は本性が剥き出しになっていた。
クソ、クソクソクソ……!! どうして、どうして俺がこんな目に遭わなくちゃならない!! 理不尽、あまりにも理不尽だ!!
「あー? お前、なに別のこと考えてんだよぉ?」
「へ……?」
その時だった。
男の発言に、優斗は呆気に取られたような声を出す。
「ふざ、ふざけんなよぉ!! お、俺がぁ折角気持ちよくなれることを、教えてやってんのにぃ!! 別のこと考えるとか
顔を掻き
そんな中、優斗の取った行動は……。
「や、す……すみません!! だ、だから許してください!! この通りです!! ちゃんと話聞きます!! 聞きますカラァ!!」
ただ無様に、許しを乞うことだった。
気付けば、優斗は目から涙を、鼻から鼻水を垂れ流していた。
「うぁぁ? おぉ、そうかそうか。ごめんごめん。ごめんなぁ? 怖かったかぁ? 悪かったなぁ? よく考えてみたら、こういうのはイケねぇなぁ。勧誘っていうのは、まず相手を怖がらせちゃいけねぇんだもんなぁ。俺はダメなことしたなぁ……だ、大丈夫かぁ? 頼むから、俺をぉ許してくれぇなぁ?」
優斗の無様な姿を目にした男は、スンと冷静になったように頭を掻く。
あまりにも情緒が安定していなかった。
な、なんだ……? よく分からないが、俺に許しを乞おうとしている。
こ、これなら……!!
「だ、大丈夫です!! 気にしないでください!! で、ですからひとまずゆっくり話せる所へ……」
「ごめんなぁ、ごめんなぁ? 許してくれぇよぉ、頼むからぁ許してぇ……」
「へ、いや、あの……」
交渉を図ろうとした優斗。
しかし、その言葉は既に男の耳には届いていなかった。
「なぁ、頼むよぉお願いだからぁ……!! 許してくれぇ、許してぇ……くれよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「ダメェェェェェェェェェェ!!!!」
ドゴォォォォォォォン!!
一瞬にして優斗に近付き、激しい轟音を伴う程のパンチを放った男。
だがそのパンチは優斗に当たらず、座り込んでいた彼の股間近くの地面に突き刺さった。
「ひっ、ひっ……ひぃ……!!」
圧倒的臨死体験。
ジョジョォォォォ……。
優斗は
「ぅぁぁ……」
そして白目を向き、泡を吹いて気絶した。
「おいおい、何だぁ起きてたのかよぉ。てめぇが叫んだせいで外しちまったじゃねぇかぁ」
地面から腕を引き抜いた男は、黒い瞳で真っすぐに彼女を……坂町詩織を見る。
先程、男が優斗に向かい突進した直後、声を上げたのは詩織だった。
どうしよう……あのまま黙ってたら優斗が死ぬと思ったから思わず声を出しちゃったけど……!!
そう、詩織が危惧する通り現状は何一つ変わっていない。
この現状を打開するには、あの頭のおかしい男をどうにかするしかない。
「女ぁ、俺の邪魔するとか、ざけんなよぉ。なぁ……?」
「……っ!?」
男が放った殺気は、明確に詩織に向けられた。
詩織は、手に持っていた
「ムカつくなぁ、ムカつくよなぁ? だから、殺す。だから死ね。いいな? いいよな?」
男は詩織の方向へと足の向きを変える。
そして一歩踏み出したその時、
――ブロロロロロロロ。
「あぁ?」
「こ、この音は……!!」
男はその音に訝し気な表情を作り、詩織は待望の表情を見せる。
音は瞬く間に大きくなっていく。
そしてソレは、木々と茂みを掻き分けるようにして、勢いよく現れた。
ブゥゥゥゥゥゥゥン!!!!
「
【羅天煌】……元『捌番隊隊長』の登場。
ーー事態が、動く。
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