宣長本の睡眠

 いつの間にか蝉の声が消滅している。そういえば八月も半ばだ。あまりにも忙しすぎて、全然気が付かなかった。あと、なぜか今日はストゼロを飲みたい。


 一緒に飲める友達がだんだんと少なくなってきた分、飲める日は大事にしていきたい。その飲むことに関しての話だ。


 一年前まで、飲むことに飢えていたように思う。酒を飲むことを求めていたというか、酒が欲しくて欲しくてたまらない神経になっていたし、毎晩、寝酒を買いにコンビニまで走っていた。酒を流し込むことで、イヤなことを考えなくて済むからだ。「考えなくて済む」というより「何か悩んだり考えたりする状態じゃなくする」ためにアルコールはあった。夜中の午前一時に買いに行って、一気に飲んで、その勢いでふらふらになって寝ることを繰り返していた。

 これは、とんでもないストレス環境だからこそ、起こった現象だった。

 いまも、その後遺症はあるかもしれないが、随分とマシになった。心の傷というものは、約1年くらいは身体に染み込むものだと分かった。あの、やけ酒していたころが終わって、丁度一年になる。去年の九月末で体力したからだ。ぴったり、心の回復に一年だった。


 飲みの切れ目が縁の切れ目というか、もう二度と飲まないやろなと思える人間とは連絡が疎遠になる。中途半端だった人間関係が整理されていく年齢になりつつある。自分がもっと年老いた時、いったい友達は何人残っているだろう。働き過ぎで死にそうな友人ばかりなので、長生きしてほしい。

 酒で一番効くのはやはりストロングゼロだ。あれを飲んで昼寝をすると、身体中が痺れて、数時間動けなくなる。甘いしびれがとれなくなる。体力回復と睡眠には、おすすめできない。夢うつつのなか、一日さまよいたいならば、ストロングゼロをオススメする。薬物に近い。

 一番いい体力回復の方法は、酒を飲んだ勢いで寝るのではなく、本を読んでいて眠くなったら寝ることだ。

 本を読んで眠くなったときに眠ると、すごい回復する。普通に寝るよりも、回復の深みが違うように思う。

 寝酒に使う酒は、一時期はビールだったり、ハイボールの濃いめだったりするが、いまは定まっていない。ワイン一杯でもいいし、どうしたらいいか。ただ、500ml缶を飲むと、翌日にニキビができるので、それは避けたい。胃があれるのだ。

 酒と睡眠の関係は難しい。読書と睡眠の関係のほうが相性が良い。オススメとして、読まなくても、抱えているだけで睡眠できる本がある。小林秀雄の「本居宣長」だ。これは手で持っているだけで眠れてしまう、不思議な本だ。もし、眠れない夜に、眠るために読みたい本があるというのならば、小林秀雄の「本居宣長」をオススメする。絶対に眠くなる。

 寝酒をすると、膝が痛くなる気もする。でも、これは単に運動不足かもしれない。寝酒より寝本だ。

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