その時季節の変わり目を感じた・・


お母さんがお父さんと離婚をしたので・・

僕は母さんの妹夫婦のうちに引き取られた。

おばさん夫婦には子供が居なくて、僕は本当の子供のように大事にされた。


叔父さんはよく冗談を言う人で僕とは相性が良かった。

キノコ採りや山菜採りに連れていってくれて・・

僕は叔父さんをお父さんの様に思っていた。


それなのに・・

小学校へは親元から行ったほうが良いということで、

僕は6歳から両親と一緒に暮らすことになった。


お母さんも新しいお父さんも大喜びで僕を迎えてくれた。

だけど何か違うんだよな・・

お母さんもお父さんも、僕にどう接して良いのか困っているみたいだ。


何かよそよそしい感じがする・・

妹も僕の側には来ないし・・


お父さんと話しているお母さんは、よそのおばさん見たいだ。

よそ行きの顔で話している。


僕もよそ行きの顔で話しをするしかない・・

家に居ると緊張する・・



一年生。


ひらかなのお勉強をする。

クラスのみんなは頭がいい。


一回教えられたらすぐに本が読める。

みんなは習ってない所でも読める。


僕はまだ字を覚えていないのに。

授業はどんどん進む。

まだ覚えていないのに。


クラスに頭の悪い子が5人いる。

僕もその1人だ。



つまらないから教室の外を見ると

校庭を野良犬が歩いている。


1人ぼっちで退屈そうだ。

僕と一緒だなあー。

退屈でしょうがない・・


・・・


学校へ行くと何時も誰かに何かをされる。

今日は誰かに教科書を破られていた。

先生に、

「教科書を大事にしないから勉強ができないんだ」

と叱られた。


僕は破いてないと言ったら、

「人のせいにするなんて卑怯者のすることだ。」

と大きな声で怒られた。


頭が悪いと信用してもらえない。

ぼくは悪くないのに、バカは相手にされない。

頭が悪いと何を言ってもしょうがない。




 二年生。


通信簿をもらった。

保健体育と図工が2。

それ以外はすべて1。


38人中35番かあ、やっぱりバカなんだあ。

先生は通信簿を配るとき吉田さん!とか森君!と

名前で呼びながら一人一人に配った。


だけど僕達バカ組は呼び捨て。

石原、 山崎、 森本、

何時ものことだけどね。



 三年生。


今日退屈なので図書室に行った。

難しい本ばかりだけど僕にも読める本が

あった。

なんだよ、探せば読める本が有るんだ。


読んでみるとけっこう面白かった。

図書館はいいなあ・・

クラスの連中も来ないし・・

静かだし・・

先生もいないし・・

学校で一番いい場所だ。


・・・


今日初めて褒められた。

図書室で本を借りたのが学校で一番だった。

国語と理科も3になったのでついでに褒められた。


図書室のおかげですよ。

僕はただ、先生とクラスの皆が嫌いなだけなんだけどね。

おまえらの顔を見たくないだけなんよ。

本でも見ていた方がましなんだよ。



 四年生。


今日気がついた事が有る。

僕の成績が上がるといじめっ子が凹む。


確かにそうだ、間違いない。

僕に抜かれて森が凹んでいる。

確かに僕を避けている。


そうか、そういう事か。

先生は、将来の為に勉強をしろと言うけど。

違うな!


今だよ。今の為になる。

そうか、次は三上だな、あいつを抜こう。


・・・


通知表をもらった。

オール3だった。


やる気が無かったから出来なかった。

走る気が無かったから遅かった。


何だ、そんな事かよ。

いじめっ子が半分以下になった。


38人中18番か、後8人抜けばいじめっ子がいなくなる。

楽しみだ・・



 五年生。


テストの結果が出た。

38人12番だった。


「石原でも頑張ればこのくらいの結果が出せるんだから

みんなも頑張れ。」

と先生が言った。

なんだよ、俺をバカにしてんじゃん。


バカの石原に抜かれたらどーしょうもないだろ。

バカよりバカなんだからな(笑)



 六年生


今日、買ってもらったばっかりの靴が無くなった。

どこを探しても無かった。


探しつづけていると四年生の女子が教えてくれた。

吉本が僕の靴を学校の裏の川に流したそうだ。


あいつ、絶対許さない。

絶対、このケリはつけてやる。


・・・


果し状。

《今度の日曜日の昼に学校の横の倉庫の裏庭で待っている。

靴のケリをつける。

吉本へ   石原より。》


僕は喧嘩をしたことがない。

人を殴った事が無い。


だから僕の心の怒りが収まらないうちに決着をつけないと、

自分の中でうやむやになってしまう。


僕が怒っているうちに決闘しないと僕の正義が通らない。

だから果し状を書いた。

僕自身がこの問題から逃げてしまわない為に。


・・・


果し合いの結果は散々だった。

相手が大き過ぎた、強すぎた。


殴っても噛みついてもあまり効果がなかった。

15分戦って僕の方が先に力が尽きた。


「何だ、それだけかよ。」

そう言って吉本は去っていった。


悔しくはなかった。

やることはやったんだ。

勝てなかったけど気持ちは晴れ々していた。


ところが次の日から吉本が僕と目を合わさなくなった。

そうか・・・・・

彼は僕に一目を置いたんだ。


きっとそうだ。

僕の男らしい挑戦に一目を置いたんだ。


・・・


卒業の日


母親が先生と話している。

「息子は妹よりおとなしい子で・・父親が違うもんで少し

萎縮したところが有って・・」


又だよ。

何時もこの話だ。


母親が来ると僕のイメージを壊されてしまう。

せっかく築き上げてきた僕の立場を壊される。

僕の事を一番分かって無いのはあんたなんだよ。



母が鬱陶しくって・・

もお母にかかわって欲しくない。


母が僕に気を使うので・・

それで父との間が気まずくなるような気する。


早く大人になりたい・・

そして、早く家を出たい・・


そうだ東京に行こう!








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