我が校の伝統
我が校の伝統で3年生は年が明けると部活から外れる。それなので年を越すと2年生が部長に就くのだ。その部長は3年生の部員で決めることになっている。そして時期部長に僕が選ばれたのだ。
『俺は今日が最後の稽古だからな・・何が何でも俺から一本取れ』
その先輩は小1から剣道をやっている人で僕より腕はかなり上だったが練習試合では何度か勝ったこともあり、一本決めるつもりで掛かっていった。
ところがその日はどう攻めても一本取れなかった。そのうち僕の息はあがり最後には足がつってしまった。それを見た先輩が構えを崩して僕のそばに来て言った。
『どうした!?』
「あっ、、足が、、つってしまって。」
『そんなことは見れば解る、だからどうしたんだ!』
「えっ??」
当惑する僕に先輩はニヤリと笑って、こう言った。
『負けることは恥ずかしい事だと思っているだろう?それは違うぞ。本当に恥ずかしいのはな、負けているのに参ったが言えないことだ。解るか!』
先輩の言うとうり僕は負けることは恥ずかしい事だと思っていた。そして負けを認めれない自分がいたのだ。先輩はそこを見抜いていたのだ。先輩の言葉はヤワな僕の理論武装を突き破り心にぐさりと突き刺さったのだった。
ネットやテレビでかき集めた理論武装など、実体験で得た強さにはひとたまりもない
ということ思い知らされた。屁理屈などでいい気にならず、何事にも挑戦し体験を重ねる事・・・そこで体得した技や、理論こそが使い物になるのだ。負けたら潔く「参った!」と言えばよい・・
僕の眼から鱗がとれた瞬間だった。
年が明け初稽古の時、僕は新部長として部員に挨拶をした。
「僕らは毎日戦い、勝ったり負けたりする。それは日常茶飯事です。勝ち負けにこだわらず、負けたら潔く”参りました。有難う御座いました”と言いましょう!それを今年の目標にします!」
剣道では稽古を修行と言う。剣の技とともに心も磨くのだ。だから剣術と呼ばず剣道と呼ぶ。それらを体得し後輩に継承していくのだ。勝つことだけが目的では無いのだ。きっと先輩たちも前の先輩たちから同じことを言われたのだろう。そして僕も・・・
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