第27話 しあげ


「ありがとう」

 あのあと銀細工ぎんざいくけとって、それからまっすぐマグノーリエさんのところにもどってきました。

 ケリさんもいっしょです。

 銀細工をわたすと、マグノーさんは少し目を細めて……ほんのりうれしそうな顔をしました。

「これで、完成かんせいだね」

 マグノーさんはそう言うと、もらった銀細工をひとつ、ふくろから出しました。

「ほら、見て」

 そして、トルソーにかざってある、ほぼ完成したワンピースの肩口にそれを当ててみせてくれました。

「ジャーダさんは、ひまわりの花が一等いっとう好きなんだよ」

 ノイさんの銀細工には、花がられていました。

 さくらに、きく金木犀きんもくせい……そして、ひまわり。

 まるで本物のように細かい花びらの細工。けれどどこか丸みをびて、少しユーモラスな感じもただようノイさんの銀細工。

 それは、きらきらとまぶしくうつくしいワンピースに、一滴いってきあいらしい少女っぽさをえました。

「良かった。一番ジャーダさんって感じのワンピースを作ることが出来た」

 マグノーさんが、しみじみと言いました。

「もちろん、前に作ったものだってジャーダさんに似合にあうものをと思って、そのとき出来る最善さいぜんくしたけど。けど、もっともっといいものになった」

 ありがとう、と二人をふり返って、マグノーさんが言いました。

「君たちがこのワンピースを今、って来てくれたから、こんなにいいものになったよ」

「そ、そんな……」

 マニャたちは、ただワンピースがやぶれたから持って来ただけです。

 それをマグノーさんがキレイに直して、さらにうつくしく作り直してくれたのです。

 ぐうぜん、手に入った新しいぬのや、銀細工を使って。

 もしお礼を言うなら、それはマニャたちではなく、ディリノーさんやノイさんたちだと思いました。

「……お前らがこれを持ってこなかったら、ここまでいいタイミングで色々なものがマグノーリエのもとにあつまらなかっただろうな」

 やりとりを聞いていたケリさんが、ぼそりとつぶやきました。

 マニャとノイが、顔を見合わせます。

 ふと、ディリノーさんが言っていたことを思い出したのです。


『きっとね、今日のお二人の行動こうどうが、もっと良いことをはこぶのだと思いますよ』


「明日の朝、彼らは出発しゅっぱつするそうだよ」

 マグノーさんが言いました。

「このかざりを付けたら、このワンピースはもう完成かんせいする。……おまつりに、間に合うね」

 マグノーリエさんの言葉に、マニャとノイは、はじめて安心したように笑いました。

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