第22話 ひとりの道行《みちゆき》


(ちょっと言いすぎたかなぁ……)

 トットコ森の中を、マニャはとぼとぼとあるいていました。

(ノイちゃん、きずついたよね……)

 バカ! とさけんだときのノイの顔。

 びっくりしたときのまん丸おめめが、見る見るうちに悲しみといかりにくもっていく様子。

 マニャの心から、怒りがいったん退場たいじょうして、わりに後悔こうかいがじわじわとやってきました。

あやまろうかなぁ」

 立ち止まって、ふり返ります。

 けれどきびすを返すと、さっき退場したはずの怒りが、あわててマニャの心にもどって来ました。

(でもでも、あのパンの耳はとっても楽しみに取ってたものだもん!)

 後悔はすみの方にひっこんで、ムカムカが心を大きく陣取じんどります。

(何だか、今日は朝からつかれてたから……おいしいもの食べて、元気を出したかったのに)

 ノイも疲れていましたが、マニャも同じくらい疲れていました。

 今からまた大人たちをたずねるのかと思うと、気が遠くなりそうです。

 しかも、今日はマニャ一人で行かなくてはいけません。

(……うう)

 後悔がまた大きく場所を取ろうとしましたが、怒りはまだまだ心の真ん中でがんばっています。マニャの足を、決して家の方へ向かせません。

「……いいんだもん。今日は私一人で行くんだもん」

 マニャは、自分に言い聞かせるようにそう言って、前を向きました。

「ノイちゃんをまも必要ひつようがないから、楽だもんね!」

 強がりを言って、ぶんぶんっと大きく手をふって歩きます。

 そうすれば、ノイがいなくてスースーするとなりわすれられるというように。

 ぶんぶんと、手をふって歩き続けました。


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