第16話 お願いをする


「クラムくん! おきゃくさんだよー」

 玄関げんかんのドアを開くと、ノイさんがおくへ向かって言いました。

「お客さん……?」

 そう言いながら、奥からぬっとあらわれたのは、ヒツジ人の男のひとでした。

 この人がクラムさんのようです。

「いらっしゃい、こんにちは」

 クラムさんは、マニャたちの前に来ると、かがんでにっこり微笑ほほえみました。

 ふわふわの真っ白の毛がやわらかそうです。

 顔の毛は真っ黒で、二人はちょっと親しみをちました。

 おそろいです。

「こ、こんにちは!」

「……こんにちは」

「マグノーさんにたのんでたもの、この子たちがって来てくれたの」

 ニソロさんが言いました。

「そうなんだ?」

「は、はい……」

 こくこくとマニャがうなずきます。

「マグノーさんにたのまれて……あ、あと、ええと」

『君たちからもおねがいしてくれるかい』

 マグノーさんの言葉ことばが、よみがえります。

「私たち、みなさんにおねがいがあって……」

「おねがい?」

 ひょこ、とクラムさんが首をかしげました。

 うしろで、他のふたりも首をかしげます。

「ええっと……」

 どう言おう。何から言おう。

 まよっているマニャを見て、クラムさんが「うん」とひとつうなずきました。

「何か、事情じじょうがありそうだね。おかしでも食べながら聞こうかな」

 マドレーヌは好きかな? とたずねられ、

「はい」

「好き」

 マニャとノイのこたえがかさなりました。

 かわいい、と三人がほほをゆるませます。

「よかった。じゃあ、マドレーヌを食べながら話そうね。きたてだから、ほかほかだよ」

「やったー!」

 ニソロさんが、ぴょんぴょんねてよろこびました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る