第6話 マグノーさんとケリさん
「なるほど。それで、ワンピースがこうなっちゃったわけだね……」
マグノーリエさんは、腕を組みながらしかめ面をして言いました。
ふだんからあまり笑わず、
マグノーさんの、ポケットだらけの
マグノーさんが少し動くだけで、ポケットの中の道具が音を立てているのでした。
その音ですら、何か
「はい……」
マニャはその音に身をすくめ、ノイはうつむきながらも、音が
「……」
「……」
マグノーさんのお家は、
それは、上にある大きな
そして、
通されたときに二人がおどろいた顔をしていたのでしょう。
マニャが問いかける前に、マグノーさん
さて、今四人は、部屋の真ん中にある大きな
作業台の上には、マニャたちの持ってきたワンピースが
ワンピースは、あちこちが
「
「俺は
マグノーさんににらまれたガチョウ人のケリさんは、ふんと鼻を鳴らすとそう言いました。
「こいつらが、
「君、自分の顔がこわいことをもっと
無愛想なんだから、とあきれた声でマグノーさんが言いました。
(マグノーさんもなんだけどな……)
と二人が同時に思ったことはひみつです。
「……まあ、いきなり声をかけておどろかしたのは、
そっぽを向きながら、ケリさんは、ぼそりと言いました。
「いえ、あの……」
マニャが、ごにょごにょとそう言って首を
おどろかされたのはたしかに
「ワンピース、ありがとうございました……」
マニャは、小さな声でもう一度お
ノイも、横でぺこんと頭を下げました。
ノイは、イスもマニャのイスにくっつけて、マニャに身を
「さて。それで、君たちの
「はい……」
「それで、これをお母さんたちに送りたいんだね?」
「はい……できれば、そのぅ」
「お
「はい」
ふむ、とマグノーさんは引きつづき
「ねえ、ケリ。その、南の島のお祭りは、いつからだったかな」
「そうだな。一週間と……三日後か。満月から始めて、新月の日までだから」
ケリさんが、答えました。
「そう。それならまあ……なんとかなるかな」
「! 本当ですか!」
「!」
パッと、二人の顔が明るくなります。
「間に合うのか?」
「うん。さすがにつくろうのに少し時間はかかるけど、僕には
マグノーさんが、うなずきました。
「足? そんなギリギリで送ると、金がかかるんじゃないか?」
「……!」
確かに、お母さんたちに聞いたことがあります。
「大丈夫。ふつうの
「……そういうことか」
ケリさんは、何かわかったのか、ひとりうなずきました。
「ところで、このつくろい分と送る分の
「あ……」
そうです。
お仕事をお
すっかりぬけ落ちていました。
(ええっと、もしものときのお金は、どれくらいあったっけ……?)
マニャが首をひねっていると、
「君たちに、おつかいをしてもらおうと思うんだ」
マグノーさんが言いました。
「おつかい?」
「そう。この
そう言うと、マグノーさんは立ち上がり、
棚にはたくさんひきだしがあって、それぞれに
その中のひとつ、『
そこから丸まった紙を取り出すと、また作業台の方へ戻ってきました。
「君たちには、まずディリノーさんのところに行ってもらいたい」
「ディリノーさん……?」
マニャが小首をかしげました。ノイも、となりで同じように首をかたむけています。
はじめて聞くお名前でした。
「この先に池があるんだけど、そのほとりに住むオオカラス人。絵かきさんだよ」
マグノーさんは、持ってきた紙を
「ちず……?」
ノイが小さな声で言いました。
「そう。この森の地図」
マグノーさんがうなずきました。
「君たちの家がここ、僕の家がここ、で、ディリノーさんの家が、ここ」
マグノーさんは、ポケットから取り出したものさしで、ひとつひとつ、お家を指していきます。
ディリノーさんのお家は、ここから南の方へ行ったところにある池のほとりにありました。
池は雪だるまのように大きな池と小さな池が並んでいて、ディリノーさんのお家は、こちらから見て手前の大きな池のそばでした。
「ディリノーさんは絵かきさんだけど、
次の
「今日から三日は、これにかかりきりになると思うんだ。だから、代わりに」
「……。わかりました」
マニャは、ごく、とつばを飲み込み、
また大人の、しかも
けれど、お支払いはしなくてはいけないのです。
ノイもとなりで、ぎこちなくうなずきました。
「それだけの手伝いで、お前の仕事とわりは合っているのか?」
ケリさんが、マグノーさんを見て言いました。
「もう一つ、おつかいをたのむから」
マグノーさんは言いました。
まだ、おつかいがあるんだ、とマニャとノイもいっそうドキドキしました。
「それに」
ちら、とマグノーさんは、そんな二人を見ます。
「大人にとっては『それだけ』でも、この子たちにとっちゃ、きっともっとすごいことだろうから」
そして
ケリさんは、「そうか」とだけ言って、あとは何も言いませんでした。
「それじゃあ、おねがいするよ」
マグノーさんは「そうだ」と言って、ケリさんを見ました。
「
「え」
マニャとノイの目が、くるんと丸くなりました。
「おい、勝手に」
「いいじゃないか。帰り道のとちゅうなんだし」
マグノーさんが、ものさしでまた別のお家を指します。
そこは、大きな池の向こう
「彼の家は、ここなんだ」
「……」
「……」
たしかにディリノーさんのお家は、ケリさんのお家へ行く道のとちゅうにありました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます