第5話 マグノーさんの家へ


 十五分ほど歩いて森の小道を抜けると、マニャたちの家が建つ広場よりもう少しだけ大きな広場に出ます。

 広場の周りはトゲトゲした茂みに囲まれていて、二人はドキドキしながら、その茂みの切れ目を……入り口を、通り抜けました。

 そこから平たく丸い石たちが、ちょん、ちょんと少し距離きょりを置いてかれています。

 それらは、大きな木の下、段梯子だんばしごの一番下まで続いていました。

「ここ?」

「うん。ここ」

 マグノーさんのお家は、大きな木の、上の方のうろの中にあります。

 玄関げんかんへは、三つの梯子はしごを伝い、上っていくようでした。

 一つ目の梯子は、十段ほどのぼったところにある、ベランダのような、踊り場になっている木の板まで。

 次の梯子は、その木の板からまた次の木の板まで伸びており、そこから、玄関の前にある板へと伸びている梯子が最後の梯子です。これは少し短い梯子でした。

 マニャとノイは、身軽にひょいひょいと梯子を上っていきます。

 最後の踊り場は、今までの踊り場よりも少し広くなっていました。

 洞の周りには、枝から垂れ下がった可愛らしいボタンのつり飾りが、何本もあります。

 ボタンは、赤にオレンジ、黄色、緑、青色に、紺色、紫色のものもありました。

 風にしゃらしゃらと揺れるそれらは、とてもきれいでした。

 二人は、しばらく緊張きんちょうを忘れ、それらに魅入みいってしまいました。

 すると。

「……何やってるんだ、お前ら」

 ガチャリ。

 玄関が開いて、ぬうっと大きな影がそこから出てきました。

「きゃー!?」

「きゃー!?」

 二人は、飛び上がりました。

 その影はマグノーさんではなく、マグノーさんより大きなガチョウ人の男のひとでした。

 二人がおどろいた拍子に、マニャの肩にかけていたふくろが、どさりと床に落ちました。

「あ!」

 ノイが気づいて、あわてて袋をひろいます。

 が、

「お前ら、どこの子だ?」

「ぴゃっ!」

 またしても男のひとが口を開いて、低い声で二人に話しかけました。

 ノイはびっくりして、手をはなしました。

「あ!」

「ああ!」

 またも床に落ちた袋は、今度は運悪く、口が開いてしまいました。


 するり、ひらり、ひらり


 ワンピースが、落ちていきます。

 そこへ、いたずらな風が吹きました。


 ふわっ……


「あああ!」

「だめ……っ!」


 二人のさけびもむなしく、ワンピースは、ふわりひらりと、茂みの方へ落ちていきました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る