第2話 ツバメ人のマレーアさん
トントントンッ
「ごめんくださーい」
ノックのあとに、すんだ声がしました。
マレーアさんは、ツバメ人の女のひとで、いつもこの森にお手紙や
黒いつばさが美しい、しなやかな美人さんです。
マレーアさん自体は森のはずれ、まちとの
マハルさんとマレーアさんは、仲のよいお友だちなのです。
だから、人見知りのマニャとノイでも、ふつうにお話できる
「マレーアさんだ!」
「きっとおかあさんとおとうさんのお手紙をとどけに来てくれたんだ!」
二人は、
「こんにちは、マレーアさん!」
「こんにちは!」
「マニャちゃん、ノイちゃん、こんにちは。おかあさんたちのお手紙を
にこにこと笑って、マレーアさんが言います。
「入って入って、マレーアさん」
ノイが、ぐいぐいとマレーアさんの手……つばさの先を引っぱります。
みなさんの世界だと、子猫の方がツバメよりも大きいものですが、この世界では、みんなたいていは
だからマレーアさんは、ちっちゃなノイに合わせるように多少かがんであげています。
「今、お茶を入れますね」
「わあ、ありがとう」
マニャも
今日のお茶は、マレーアさんの好きなソラツユ草のお茶です。
青色の花びらと葉っぱをかわかして作るお茶で、お湯を注ぐときれいな空色になります。
マレーアさんには、そこの深いカップにストローを入れて出すのが決まりです。
「どうぞ」
「ありがとう。ふふっ、相変わらず、きれいな色だねぇ」
マレーアさんは、のんびりそう言うと、ひと口お茶を飲みました。
「うん、おいしい。マニャちゃん、また
「えへへ……」
マニャは、照れくさそうにおひげをぴくぴくさせました。
「すごい、お母さんたち、もうみなとに
マレーアさんの
「本当? 早いね」
「今回は、南のアミャミン
「うん。そこで、大きなお洋服のおまつりがあるんだって」
マレーアさんの問いに、マニャが答えました。
「おようふくのおまつりなんだけど、ごはんのお店もたくさんあって、あとステージもあるんだって!」
ノイも元気よく答えます。
「いろんな
「そうなんだ。じゃあ、ちょっと寄ってみようかな」
「あ、そうか」
マニャの目が、くるんと大きくなります。
「マレーアさん、そろそろ南の方に行くんだね」
「うん。そうだよ」
ツバメ人のマレーアさんは、秋になると南へ向けて旅に出ます。
南の島にもお家があって、秋冬のあいだは、そこで郵便屋さんをやるのです。帰って来るのは、来年の春です。
「明日の朝早くにね」
「そっかあ……さみしいなあ」
二人の耳としっぽが、へたんと垂れてしまいます。
「また、春におみやげたくさん持ってくるからね」
マレーアさんは、しょんぼりしてしまった二人の頭をなでて言いました。
それから二人は、お父さんとお母さんに手紙を書いて、マレーアさんにわたしました。
マレーアさんが、南の島のお家に行くついでに、お母さんたちがお店を出すお祭りに寄ってくれるからです。
「必ず、届けるからね」
そう言って、マレーアさんは手を振って帰っていきました。
次に会えるのは、春です。
「おとうさんとおかあさんは、それまでに帰ってくるんだよね?」
ノイが、たずねました。耳がぺたんと下がったままです。
「たぶん、そのはず」
マニャの耳も、ぺたんと下がっています。
「……ごはん、早めに食べよっか」
「うん」
こんな日は、おいしいものを食べて、早く
二人は、手をつないで部屋の中へ戻っていきました。
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